人生の土台となる読書――ダメな人間でも、なんとか生き延びるための「本の効用」ベスト30(pha)の書評

assorted books on black couch

人生の土台となる読書――ダメな人間でも、なんとか生き延びるための「本の効用」ベスト30
pha
ダイヤモンド社

人生の土台となる読書(pha)の要約

ビジネス書や実用書は確かに即効性がありますが、人生を根本から変える力に欠けます。一方、小説や社会学などの学術書などの「ゆっくり効く読書」は、時間をかけて深い効果を及ぼします。著者は、このような読書を重ねることで自分との対話が深まり、やがて人生に大きな変化をもたらすと言います。

ゆっくり効く読書とは何か?

読書には、2つの種類がある。 「すぐに効く読書」と、 「ゆっくり効く読書」だ。 (pha)

Pha氏の読書論は、ニートとしての自身の経験と多様な書籍との出会いによって、人生を変えられることを示しています。著者は、文学、哲学、心理学、進化論など広範なジャンルの書籍をリコメンドし、読者一人ひとりがここから自分に適した一冊を見出せるようにつくられています。

現代社会では、すぐに結果を求める風潮が強くなっています。読書の世界でも、即効性のあるビジネス書や実用書が人気を集めています。しかし、著者が提唱する「ゆっくり効く読書」という概念は、この風潮に一石を投じる新しい視点を提供しています。

 仕事術やライフハックなどの実用書は、確かに即効性があります。これらの本は具体的なアドバイスや技術を提供し、読者の行動を変えるきっかけになることがあります。しかし、著者はこのような読書には限界があると指摘します。即効性のある本は、表面的な行動は変えられても、人生そのものを根本から変える力は持たないと言うのがその理由です。

一方、「ゆっくり効く読書」は、一見実用性がなさそうに見える小説や学術書などを通じて、時間をかけてじわじわと効果を発揮します。この種の読書の特徴として、著者は3つの重要な点を挙げています。

1、ゆっくり効く読書は、読者に今までに見たこともないような新しい世界を教えてくれます。異なる文化や時代、思想に触れることで、視野が広がり、世界の見方が変わっていきます。これは、日常生活では得られない貴重な経験となります。

2、この種の読書は、読む前と読んだ後で、読者の価値観をガラッと変えてしまう力を持っています。深い洞察や新しい概念に触れることで、自分自身や社会に対する見方が根本から変わることがあります。これは、人生の転機となる可能性を秘めています。

3、ゆっくり効く読書は、読者に新しい可能性を示すことで、人生の選択肢を増やします。今の状況からの脱出口を見つけられないと感じている人にとって、この種の読書は新たな道筋を示してくれる光明となります。これは、人生の行き詰まりを打開する力となります。

著者は、ゆっくり効く読書を重ねると自分との対話が深まり、やがて人生に大きな変化をもたらすと言います。この新しい読書アプローチは、私たちに読書の異なる側面を考えさせ、長期的な視点での自己成長を促してくれます。

著者の提案は、即効性だけでなく、じわじわと効いてくる本の力にも目を向けることの重要性を示唆しています。いつ役立つ変わらぬ本を読むことが、実は自分の人生を豊かにしてくれます。

また、Pha氏は、社会から「ダメな人間」というレッテルを貼られがちな人々にとって、書物が生きる希望や力の源泉となり得ると力説します。本書のメッセージは、読書が単なる知識の蓄積にとどまらず、心の支柱や人生の指針を提供するパワフルなツールであることを示しています。

自らの体験を包み隠さず語りながら、Pha氏は読書を通じて得た学びや気づきが、いかに彼の人生観を変容させ、前向きな姿勢をもたらしたかを影響を受けた本を紹介しながら、描いています。このナラティブは、同様の境遇にある読者たちに強い励ましを与えてくれるはずです。私も今回、初めて知る本もいくつかあり、早速購入してみました。

読書が人生を変える理由

僕のほとんどは、今まで読んだ本でできていると言っても過言ではない。

私たちの人生は、様々な経験や出会いによって形作られていきます。その中でも、本が持つ影響力は計り知れません。私自身、これまでに読んできた本が自分の一部となっていると言っても過言ではありません。

特に興味深いのは、成功者の物語よりも、むしろ挫折や失敗を経験した「ダメ人間」について書かれた本が、より大きな人生の指針となるという著者の指摘です。なぜなら、そこには現実味のある苦悩や、それを乗り越えるための具体的な道筋が描かれているからです。

私自身、17年前にアルコール依存症という深刻な問題を抱えていました。その克服の過程で、大きな助けとなったのが作家ローレンス・ブロックによるアル中探偵マット・スガターシリーズでした。主人公のスガターは、私と同じくアルコール依存症に苦しむ探偵です。彼の断酒への決意と、その後の生活の変化は、私にとって大きな励みとなりました。

特に印象的だったのは、スガターが酒の代わりにペリエを飲むようになったことです。この小さな習慣の変更が、新しい生活スタイルを確立する上で重要な役割を果たしていました。私もこれを参考に、日常生活の中でビールの代わりにペリエを飲むようにしました。この小さな選択が、私の断酒への道のりを支える一助となったのです。

文学作品、特にフィクションは、単なる娯楽以上の価値があります。それは私たちに新しい視点を与え、人生の困難に立ち向かう勇気や知恵を与えてくれるのです。「ダメ人間」の物語が持つ力は、まさにここにあります。完璧な人間像ではなく、欠点や弱さを抱えながらも前に進もうとする姿に、私たちは自分自身を重ね合わせ、共感し、そして自分を変えるパワーを得られるのです。

人間の意思決定と行動パターンは、個人の自由意志によるものだと思われがちですが、実際にはその人を取り巻く環境や社会構造に大きく影響されています。

フランスの有名な社会学者ピエール・ブルデューは、ディスタンクシオンの中で、社会階級と趣味嗜好、育ちの関係について深く研究しました。この本は社会学の分野で非常に重要な著作とされています。

本書では、入門書である「100分de名著」の『ディスタンクシオン』が紹介されています。ブルデューの理論によれば、私たちの好みや価値観、行動様式は、生まれ育った環境や社会階級によって形成される「ハビトゥス」と呼ばれる無意識の傾向性に基づいています。この考え方を理解することで、自分とは異なる価値観や行動様式を持つ人々に対する見方が変わる可能性があります。

例えば、自分と全く異なる趣味や考え方を持つ人に出会ったとき、その違いを単に個人の選択の結果だと考えるのではなく、その人の生育環境や社会的背景を考慮に入れることができます。「もし自分があの人と同じ環境で育っていたら、同じような考え方をしていたかもしれない」という想像力を働かせることで、他者への理解と寛容さが生まれます。 この視点は、一見非合理的に見える行動にも適用できます。

社会学の役割の一つは、そうした行動の背後にある社会構造や文脈を丁寧に分析し、その合理性を明らかにすることです。表面的には理解しがたい行動も、その人が置かれた状況や社会的制約を考慮すれば、一定の合理性を持っていることが多いのです。 人間には、自分と異なるタイプの人々に対して拒否反応を示す傾向があります。これは、人類が部族社会で生活していた時代に獲得した生存本能の名残とも言えます。

私たちはこのように読書を通じて知識を得ることで、人間の本能的な反応を克服し、他者への理解と寛容さを育むことができます。 自己と他者の関係性を考える上で重要なのは、自分の中にある根源的な問題意識に気づくことです。人生の方向性を決定づけるこの問題意識は、往々にして無意識のうちに形成されています。

自分の問題意識(ペイン)を明確にすると、共感できる著者の本に出会える確率が上がります。そのような本との出会いは、自己洞察を促し、人生の方向性を見出す契機となることがあります。私自身も、自らの課題解決のため、日々新たな本との出会いを楽しんでいます。

アガサ・クリスティ春にして君を離れは、自己反省と後悔のテーマを扱った作品です。この小説は、日常の中での自己発見や人間関係の見直しに焦点を当てています。人生の中で後悔を少なくするために、自分自身を振り返り、考え直すことの重要性を教えてくれます。

主人公は、一見、満足した人生を送っているように見えますが、過去の出来事を振り返ることで、自分が無意識に犯してきた過ちや他人への影響を認識します。これは私たちにも共通するテーマであり、日常生活においても同様です。私たちも、ときどき立ち止まり、自分の行動や選択を見直すことが必要です。

自分自身の考えを持つことと、自分は間違っているのかもしれないと疑い続けること。それはどちらも大切なことだ。そして、読書というのはその2つのあいだを揺れ動き続ける行為なのだ。

読書は、私たちの人生に大きな影響を与える重要な行為です。自分との対話=思考の時間を持つことで、私たちは著者の言葉からパワーをもらっています。。

多くの人が「自分らしく自由に生きたい」と考えていますが、そのためには自分自身と世界をよく理解する必要があります。読書は、まさにこの理解を深める手助けをしてくれるのです。 私たちの周りの世界は、言葉によって形作られています。自分の考えや気持ちも、言葉を通じて表現します。

ですから、自由に生きるためには、自分の言葉を持つことが大切です。しかし、自分の言葉を持つのは簡単ではありません。私たちは知らず知らずのうちに、他の人が作った言葉や考え方に縛られていることがあるからです。 ここで読書の役割が重要になってきます。本を読むことで、さまざまな考え方や世界の見方に触れることができます。それによって、自分の考えを客観的に見つめ直すチャンスが生まれます。

また、新しい言葉や概念を学ぶことで、自分の思いをより正確に表現できるようになります。 読書は、自分の考えを持ちながら、同時にそれを疑う力も与えてくれます。本の内容に共感したり、疑問を感じたりしながら、自分の考えを形作っていきます。そして、その考えが本当に正しいのかを考え直す機会も得られるのです。

このプロセスを通じて、私たちは自分自身をより深く理解し、同時に世界との関わりも深めていくことができます。「自分らしく自由に生きたい」という願いを実現するには、読書を通じて自分の言葉を磨き、世界についての理解を広げていくことが大切なのです。

読書は単なる知識の吸収ではなく、自分と世界をつなぐ橋渡しの役割を果たします。それは、私たちが本当の意味で自由に生きるための大切な一歩となるのです。私はさまざまな本を読み、日々このブログからアウトプットしていますが、この時間が自分との対話の時間になっています。ここから他者とのつながりが生まれ、私の幸福度を高めてくれています。

読書を通じて得られる理解は、私たちが自己を探求し、成長するための貴重な手段です。言葉の力を借りて、自分の内面を探り、新たな視点を得ることで、私たちはより自由に、そしてより豊かに生きることができるのです。

最強Appleフレームワーク


 

この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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