根性論や意志力に頼らない 行動科学が教える 目標達成のルール(オウェイン・サービス, ローリー・ギャラガー)の書評

rose gold iPhone 6s

根性論や意志力に頼らない 行動科学が教える 目標達成のルール
オウェイン・サービス, ローリー・ギャラガー
ディスカヴァー・トゥエンティワン

根性論や意志力に頼らない 行動科学が教える 目標達成のルールの要約

「大きなことを達成するには、小さく考えることこそが大切である」が本書のコンセプトになります。行動科学に基づく7つのステップを通じ、大きな目標を達成する方法を学べます。日々の小さな積み重ねが、夢の実現への確実な道筋となります。不可能と思えた目標も、このアプローチで無理なく達成できるようになります。

スローシステムとファストシステムを上手に活用する!

本書は、最新の行動科学の研究結果をもとに、あなたを目標の達成へと導く。シンプルなフレームワークを用い、スローシステムをうまく使いこなして、ファストシステムが最適な局面で作動するよう促す。(オウィン・サービス、ローリー・ギャラガー)

本書Think Small根性論や意志力に頼らない 行動科学が教える 目標達成のルール)は、目標達成のための実践的かつ科学的に裏付けられたアプローチを提供する一冊です。

著者であるオウィン・サービスローリー・ギャラガーは、行動科学の第一線で活躍し、特に彼らが携わった「ナッジユニット」での経験が本書の根底にあります。2人は、英国政府の「行動洞察チーム(Behavioural Insights Team, BIT)」で長年活動し、個人や組織が小さな行動変化を通じて大きな成果を生み出す方法を研究してきました。

その経験をもとに、個々人が根性論や意志力に頼らず、現実的かつ持続可能な形で目標を達成するための具体的な手法を紹介しています。

私たちの日常生活は、無意識の行動で溢れています。朝起きてから夜寝るまで、ほとんどの行動を特に考えることなく行っています。これは、人間の脳が持つ2つのシステム、「ファストシステム」と「スローシステム」の働きによるものです。

ファストシステムは、私たちの直感的で自動的な思考プロセスを担い、スローシステムは、意識的で分析的な思考を行う役割を果たしています。この2つのシステムのバランスが、日々の行動や決断に大きな影響を与えています。

例えば、初めて車を運転したときのことを思い出してみてください。ハンドル操作やブレーキ、アクセルの調整、さらには周囲の状況確認など、全てに細心の注意を払い、慎重に行動していたはずです。これは、スローシステムがフル稼働している状態です。

この段階では、あらゆる操作を意識的に処理しなければならないため、非常に疲れる経験でもあります。 しかし、運転の経験が積み重なり、徐々にスキルが向上すると、操作は無意識のうちにできるようになります。これが、ファストシステムの働きによるものです。

ファストシステムは自動化された思考と行動を司り、私たちが日常生活をスムーズに進めるために不可欠なものです。日々の中で、ほとんどの決断はファストシステムによって処理されており、私たちが意識的に考えることなく多くのタスクをこなすことができます。

しかし、ファストシステムは便利である反面、時に私たちを望ましくない行動へと導くこともあります。例えば、食事をコントロールしようと思っていてもつい食べ過ぎてしまったり、将来のための貯蓄を怠ったり、仕事を後回しにしてしまったりすることがあります。

これらはすべて、ファストシステムが快適さを優先する短期的な思考によるものです。長期的には、こうした行動が目標達成を妨げることもありますが、私たちは無意識のうちに短期的な満足を選んでしまうのです。 一方で、このファストシステムは、私たちを目標達成に導く鍵にもなり得ます。

本書で強調されるのは、スローシステムとファストシステムのバランスをうまく活用することの重要性です。まずはスローシステムを使って、目標に向けた計画や戦略を立てる必要があります。この段階では、目標を小さなステップに分解し、意識的に取り組むことが求められます。しかし、一度これらの行動が習慣化されると、ファストシステムが自然にそれを引き継ぎ、意識せずとも目標に向かって進んでいくことが可能になります。

つまり、ファストシステムとスローシステムの適切なバランスを理解し、どのタイミングでスローシステムを使い、どこでファストシステムに引き継がせるかが、目標達成において非常に重要なのです。スローシステムによる慎重な計画と分析が、ファストシステムの自動化された行動へと変わるとき、私たちは無理なく目標に向かって進んでいけるのです。これが、シンク・スモールの成功のポイントです。

大きなことを達成するには、小さく考えることこそが大切なのだ。

最新の行動科学研究によれば、大きな目標を達成するためには、小さな習慣的行動を積み重ねることが効果的だと言われています。 つまり、スローシステムを活用して適切な計画を立て、その計画をファストシステムの領域に落とし込むことで、持続可能な行動変容を実現できるのです。

例えば、健康的な生活を送るという大きな目標があるとします。これを達成するために、次のような小さな習慣を作ることができます。
・毎朝、果物を1つ食べる
・階段を使う機会を増やす
・就寝前にスマートフォンの使用を控える

これらの小さな習慣は、最初は意識的な努力(スローシステム)が必要かもしれませんが、継続することで徐々に自動化(ファストシステム)されていきます。

私たちが大きな目標を掲げるとき、往々にして壮大な計画を立てがちです。しかし、最新の行動科学研究が示唆するのは、むしろ逆のアプローチが効果的だということです。つまり、「小さく考える」ことが、実は大きな成果につながるのです。 この考え方の核心にあるのが、人間の思考システムに関する深い理解です。

ここで重要なのは、この「足場作り」の過程において、一見些細に思えるような小さなディテールが、想像以上に重要な役割を果たすということです。

例えば、「健康的な生活を送る」という漠然とした目標ではなく、「毎日リンゴを1個食べる」という具体的な行動を設定します。
・環境のデザイン
果物を目につきやすい場所に置くなど、望ましい行動を取りやすい環境を整えます。

・トリガーの設定
朝食後に必ず水を一杯飲むなど、特定の行動と新しい習慣を結びつけます。

・進捗の可視化
カレンダーに印をつけるなど、小さな成功を視覚的に確認できるようにします。

・小さな報酬
目標達成時に自分へのご褒美を設定し、モチベーションを維持します。 これらの小さなディテールは、一見取るに足らないものに思えるかもしれません。

しかし、これらが集まって強固な「行動の足場」を形成し、最終的には大きな目標の達成につながっていくのです。 さらに、これらの小さな行動や習慣は、時間とともにファストシステムに組み込まれていきます。

つまり、最初は意識的な努力が必要だった行動が、やがては自動的に、ほとんど考えることなく行えるようになるのです。これこそが、持続可能な行動変容の鍵となります。

「大きなことを達成するには、小さく考えることこそが大切だ」というのは、単なる格言ではありません。それは、人間の脳の仕組みと行動パターンを深く理解した上で導き出された、科学的な洞察なのです。

行動科学に基づいたこのアプローチは、単に目標を設定するだけでなく、その目標を達成するための具体的な道筋を提供します。小さな成功体験を積み重ねることで、モチベーションを維持し、大きな目標への歩みを着実に進めることができるのです。

目標達成のための7つのステップ①

大きな目標につながる道を切り拓くには、小さくてシンプルなディテールをきちんと積み重ねようと心がけることこそが大切なのである。

本書が提唱する7つのステップは、根性や意志の力に頼るのではなく、科学的に実証された「小さな変化」の積み重ねによって、目標達成に向けて着実に前進できる方法です。

このアプローチを通じて、個々の小さな行動が積み重なることで、最終的には大きな成果を生み出し、人生を大きく変えることが可能になります。それでは、具体的な7つのステップについて解説していきます。

1. 適切な目標設定の重要性

目標を達成したいなら、まずはそれがどのような目標なのかを明確にすること。そのうえで、それを達成するための小さなステップについて考えるべきだ、と。これこそが「シンク・スモールの原理」である。

私たちは誰もが、人生や仕事において様々な目標を持っています。しかし、その目標を実際に達成できる人は意外と少ないのが現実です。なぜでしょうか?その答えは、目標の設定の仕方にあるかもしれません。行動科学の最新の研究結果に基づいた「目標達成の3つのルール」を詳しく見ていきましょう。

ルール①適切な目標を選択する
目標達成の第一歩は、適切な目標を選ぶことです。これは単に「やりたいこと」を列挙するだけではありません。自分が本当に達成したい目標とは何かをじっくりと考える必要があります。 ここで重要なのは、自分のウェルビーイング(幸福度)が高まる目標を選択することです。

例えば、「お金持ちになる」という目標は、一見魅力的に思えるかもしれません。しかし、それが本当にあなたの幸福につながるでしょうか?むしろ、その収入によって、何が可能になるかといった目標の方が、長期的な幸福につながる可能性が高くなります。

自分自身と向き合い、何が本当に自分を幸せにするのかを深く考えることで、より意味のある、達成する価値のある目標を見出すことができます。

著者2人は、以下の5つのファクターを含む目標で幸福度がアップすると指摘します。
●人との関わりを強化する
●健康で活動的になる
●何か新しいことを学ぶ
●好奇心を持つ
●他者に与える行為をする(ギビング)
自分自身と他者を幸福にする目標設定が、人生を豊かにする鍵になりそうです。

ルール②目標はひとつに絞り、明確な到達点と達成期限を設定する
多くの人が陥りがちな罠は、一度にたくさんの目標を立ててしまうことです。新年の抱負として長いリストを作ったことはありませんか?しかし、これは逆効果になりかねません。 代わりに、目標をひとつに絞ることが効果的です。これにより、あなたのエネルギーと集中力を最大限に活用することができます。

さらに、その目標に対して明確な到達点と達成期限を設定することが重要です。 「健康的な生活を送る」という漠然とした目標ではなく、「6ヶ月後までに5キロ減量する」といった具体的な目標を立てるようにします。

このように、いつまでに何をどこまで達成したいかを明確にし、達成できたことを確認することで、モチベーションも維持しやすくなります。デッドラインを作ることで、驚くほど目標達成がスムーズになります。

ルール③目標を自分で管理できるステップに分解する
大きな目標は時として圧倒的に感じられ、やる気を失わせてしまうことがあります。そこで有効なのが、目標を小さな、管理可能なステップに分解(チャンキング)することです。

例えば、「新しい言語を習得する」という目標があるとします。これを「毎日15分間語学アプリで学習する」「週に1回、その言語のポッドキャストを聴く」「月に1回、その言語のネイティブスピーカーと会話練習をする」といった小さなステップに分解できます。

このように小さなステップを着実に積み上げていけば、最終的な目標に到達しやすくなります。各ステップの達成は小さな勝利となり、それがモチベーションを維持し、次のステップへの原動力となります。小さな達成感の積み重ねが、目標達成を近づけてくれるのです。

これらの3つのルールは、単純に見えるかもしれません。しかし、その背後には深い心理学的洞察があります。適切な目標を選び、それを明確に定義し、管理可能なステップに分解することで、あなたの脳は目標達成に向けて最適化されていきます。 目標設定は、単なる願望のリストを作ることではありません。

それは、自己理解と明確なビジョン、そして実践的な計画が組み合わさった、複雑で深い過程なのです。これらのルールを念頭に置きながら目標を設定することで、あなたは確実に成功への道を歩み始めることができるでしょう。

2. シンプルで実行可能な計画を立てる
次のステップでは、目標達成に向けた計画をシンプルにすることが重要です。複雑で高度な計画を立てると、実行の壁が高くなり、挫折のリスクが高まります。そのため、日常生活に自然に組み込めるようなシンプルなルールと計画を作成することが推奨されています。

著者たちは、毎日のルーティンに無理なく取り入れられる計画を立てることで、習慣化しやすくなり、長続きすると述べています。たとえば、朝のコーヒーに日記を組み合わせる、移動前に短時間の瞑想を取り入れるといった行動は、少しの工夫で日常に組み込むことができます。私自身もこの方法で日記と瞑想を習慣化できました。

3. コミットメントを強化する
目標を達成するためには、自分自身がその目標に対してしっかりとコミットする必要があります。著者たちは、目標を公に宣言したり、文書化することが効果的だと指摘しています。これにより、自分だけでなく周囲の人々にも目標達成への責任感を持つことができます。

ルール①コミットメントを決める
まず、自分が何にコミットするかを明確に決めます。このコミットメントは、最終的な大きな目標と、それを達成するための小さな段階的なステップの両方につながっているか確認します。例えば、「毎日30分ジョギングする」というコミットメントは、「3ヶ月で5キロ減量する」という最終目標に直結しています。

ルール②コミットメントを書き出し、公にする
決めたコミットメントを紙に書き出し、周りの人に宣言します。これにより、自分自身の中で「約束を守らなければ」という意識が強まります。SNSで投稿したり、家族や友人に話したりするのも良いでしょう。公に宣言することで、自分を縛る力が生まれます。

ルール③コミットメントレフリーを任命する
あなたの目標達成を見守り、サポートしてくれる人をレフリーとして任命します。この人は、あなたを信頼でき、かつ必要な時には厳しく指摘できる人が理想的です。

例えば、目標を達成できなかった時にペナルティ(お小遣いを減らすなど)を課す約束をしておくと、より強い動機付けになります。 これらのルールを実践することで、単なる願望だった目標が、具体的で達成可能な計画に変わります。自分自身と周りの人を巻き込むことで、目標達成への道のりがより確実なものになるのです。

目標達成のための7つのステップ②

4. 報酬を活用する
目標に向かって進む過程で、適度な報酬を活用することがモチベーションを維持する鍵となります。以下の3つの報酬のルールにより、目標達成がスムーズになります。

ルール①重要な報酬を最終目標とリンクさせる
大切にしているものを最終目標の達成と結びつけます。これにより、目標に向かう強い動機が生まれます。例えば、1週間の目標を達成したら好きな食べ物を楽しむ、特別な休暇を取るといったように、報酬は達成感を高める有効な手段です。

ルール②小さな報酬で良い習慣を作る

自分の目標を設定したり、人のやる気を引き出す報酬プログラムを設計したりするときには、個々の「チャンク」の達成を報酬とリンクさせ、個人やチーム間で互いに競わせることによって目標自体をゲーム化するとよいだろう。こういう小さな報酬が良い習慣づけにつながっていくのである。

目標達成への各ステップに小さな報酬を設定します。これにより、自分や周りの人のやる気が高まり、継続的な行動につながります。

ルール③報酬の逆効果に注意する
金銭的な報酬は、時に本来の意欲を減少させる可能性があります。非金銭的な報酬(称賛や経験など)を活用し、純粋な動機を維持することが大切です。

これらのルールを適切に使うことで、報酬が目標達成の強力な助けとなり、持続可能な良い習慣づくりにつながります。

5. 共有(他者のサポート・社会的ネットワークを活用する)
本書では、他者からのサポートが目標達成において非常に効果的であることが示されています。友人や家族とのつながり、あるいは同じ目標を共有する仲間と進捗を共有することが推奨されており、これにより孤独感が軽減され、モチベーションが維持しやすくなります。

その際、協力してくれる人を見つけることが重要になります。レゴの復活劇も事業を絞り込んだ上で、応援してくれるファンの力を活用したことにより成し遂げられたのです。

目標はもっぱら個人的なものと捉えがちだが、人と一緒に取り組んだほうがずっと達成しやすい。

周囲からの励ましやフィードバックを受けながら目標に取り組むことで、困難な時期にも前向きな姿勢を保つことができます。共通の目標を持つグループを作り、このグループパワーの力を活用することで、目標達成のスピードがアップします。

6. 定期的なフィードバックの導入
フィードバックは、目標達成に向けたプロセスを見直し、改善するために不可欠な要素です。著者たちは、定期的に進捗を確認し、次に向けた改善策を考えるためのフィードバックを取り入れることを推奨しています。最終ゴールまでの自分の立ち位置を知ることで、どれほど効果が上がっていて、次に何をすべきかが明らかになります。

自己反省だけでなく、他者からの具体的なフィードバックを求めたり、他者のパフォーマンスと比較することで、自分では気づかなかった改善点を発見することができ、より効果的に目標に取り組むことができます。

たとえば、週に一度の振り返りの時間を設け、進捗状況を確認し、次のステップに進むための新たな戦略を考えることが推奨されています。タイムリーで具体的かつ対応可能なフィードバックがあなたの行動を加速します。

7. あきらめない
目標達成には、質と量の両方で練習を重ね、長期的な努力を続けることが重要です。つまり、あきらめないマインドセットが欠かせません。

最初から正しい方法が見つかるとは限らず、試行錯誤を通じて学び、最適な方法を見つけていくことが大切です。この実験的なアプローチを取り入れれば、失敗も貴重な学びの機会となり、目標達成に役立つ情報へと変わります。

さらに、成功したときはしっかりと自分を称え、その成果を実感することが大切です。小さな成功を祝うことで、自己肯定感が高まり、次の挑戦に向けた意欲が湧きます。努力の過程を楽しみ、達成した成果を認識することで、次なる挑戦へのモチベーションが維持されます。

また、著者たちは、失敗を恐れずに学ぶ姿勢を持つことの重要性を強調しています。失敗から得た教訓を活かすことで、柔軟なアプローチを取り続け、持続的な成功へとつながっていくのです。

長期にわたる壮大な目標は、小さなディテールをきちんとこなしてはじめて達成できる。ビッグなことを達成するには、シンク・スモールでいかなければならないのだ。

本書は、目標達成に向けた実践的でありながら科学的に裏付けられたフレームワークを提供しています。著者たちの行動科学の知識と経験に基づいた7つのステップを実践することで、読者は大きな目標を無理なく達成するための道筋を見つけることができます。

具体的な行動に落とし込んだ目標設定、シンプルな計画、報酬や他者のサポートをうまく活用することで、意志力に頼ることなく、継続的な自己改善が可能になります。本書は、目標達成に悩む多くの人々にとって、強力なガイドとなります。

最強Appleフレームワーク


Loading Facebook Comments ...

コメント

タイトルとURLをコピーしました