小さく分けて考える 「悩む時間」と「無駄な頑張り」を80%減らす分解思考
菅原健一
SBクリエイティブ
小さく分けて考える(菅原健一)の要約
人が悩む原因の多くは、問題が大きすぎたり複雑すぎたりすることにあります。具体性に欠ける「大きな問題」や、整理が難しい「複雑な問題」を「分解」することで、解決の道筋が見えやすくなります。分解思考を実践し、小さな課題を一つずつ解決するうちに、全体の問題も自然と解消されていきます。
目標を達成するための分解思考とはなにか?
目指すべきなのは、・本当に大切なこと一つが、・適切に分解され、・誰が何をやればいいか・今日、明日、1か月後、1年後、何をしてどうなっていったらいいかが明確になっている状態です。(菅原健一)
株式会社Moonshot代表取締役CEOである菅原健一氏は、悩みや迷いを感じる人々に共通の課題として、目標や未来に対する「漠然さ」を挙げます。何かを始めようとしても、全体像がぼんやりしていると、その「曖昧さ」が悩みを深め、時間を浪費してしまう原因となります。
そこで菅原氏が提唱するのが「分解思考」です。分解思考を使うことで、悩みや課題を細分化し、明確な解決策を見つけ出すことができます。この考え方により、頭の中で行き詰まっていた問題も整理され、現実的な行動へとつなげることが可能になります。
人が悩む原因は、多くの場合、問題が大きすぎることや複雑すぎることにあります。「大きすぎる」というのは具体性が欠けている状態であり、「複雑すぎる」とは、複数の要素が絡み合って整理が難しい状態を指します。こうした問題を「分解」することにより、扱いやすくなり、解決に向けた道筋が見えてくるのです。
分解された要素を順番に解決していくことで、全体の問題も解消されていきます。 分解思考は、Googleの「OKR(Objective and Key Results)」でも応用されています。Googleでは目標を分解し、段階ごとに管理する仕組みを取り入れることで、個別の達成に集中しつつも、全体の目的に向かって着実に前進することが可能です。
分解思考を取り入れると、自分が追求していた問題の一部分が全体の中の一つに過ぎなかったことに気づく場合もあります。俯瞰することによって、一つの選択肢に固執せず、別の道を模索する柔軟性が生まれるのです。
分解思考の実践には、まず頭の中にあるものを紙に書き出し、視覚化することが効果的です。頭の中だけで考え続けると情報がまとまらず、思考が混乱しやすくなりますが、紙に書き出すことで具体的に整理され、考えるべき内容が明確化されます。さらに、分解していく中で分からないことがあれば、その都度情報を収集し、改めて分解し直すことで、最初の課題が次第に解決に近づいていきます。
売上を2倍に上げるための分解思考とは?
売上は、「客数×客単価」に分解できます。 セールス担当者は1つの売上を作るために、見込み客のリストを作って、その中からお客さんにアポをとり、提案をして、決まった金額で受注してもらうための働きかけを行なっていることになります。 したがって、 「見込み客数×アポの率(%)×提案率(%)×受注率(%)」×「客単価」 となります。
「売上を2倍にする」という目標は、企業成長のために非常に魅力的で具体的なゴールです。しかし、ただ闇雲に努力するだけでは、目標にたどり着くのは難しいでしょう。売上を着実に伸ばすためには、まず売上に影響を与える要素を細かく分解し、それぞれがどう関連しているかを理解することが不可欠です。
目標達成のためには、売上を「見込み客数」「アポイントメント率」「提案率」「受注率」「客単価」の各要素に分けて考えます。この要素ごとの分解により、売上の基礎となる流れが明らかになります。具体的には、「見込み客数 × アポイントメント率(%) × 提案率(%) × 受注率(%) × 客単価」という式を使い、売上を構成する各段階の流れを確認し、改善ポイントを見つけやすくします。
客単価や受注率を上げるだけでも、同じ顧客数で売上を伸ばすことが可能です。この方法により、売上成長の道筋が明確になります。 売上構成を分解することで、まず注目すべき要素は「客単価」です。客単価は、1人の顧客が1回の取引で支払う平均金額を示し、この数値を引き上げることは売上増加に直結します。
例えば、商品やサービスのバリエーションを増やし、付加価値を高めることで、顧客が高額なオプションを選びやすい状況をつくることが可能です。また、目標の達成期間や売り方などでさらに細かく分解する視点を取り入れると、より効果的な施策が見つかります。
また、アップセルやクロスセルを導入し、顧客が複数の商品を購入するように動機づけることも効果的です。さらに、客単価を上げるために新しいサービスや商品の質を高め、顧客がその価値に見合う価格を支払いたくなるようにします。こうした改善により、売上倍増という目標に一歩ずつ近づくことが可能になるでしょう。
物事を分解して考える際には、感情や思い込みに左右されず、事実に基づいてフラットに物事を捉えることが重要です。感情がバイアスとなると、正確な分解ができず、誤った方向に進むことがあります。
たとえば、「私は単価のことばかり考えていたので、客数のことはまったく念頭にありませんでした」といった発言や、「売上を上げるには値段を上げるしかない」という考え方は、視野が狭く、特定の思い込みに囚われている例です。こうした状況では冷静な分析が欠け、本来とるべき効果的な行動が見逃される可能性があります。
分解思考を行う際には、事実に基づく冷静な視点を持つことが大切です。自分の「やりたいか、やりたくないか」や「約束したかどうか」といった感情や主観ではなく、事実を整理して客観的に分析します。そして、まずは効果が高いと考えられる行動に集中し、最大限の成果を引き出すことを目指します。
一方、分析の結果、効果が見込めないと判断できたものについては、早い段階で見切りをつけ、無駄なリソースの消費を避けるようにします。 特定の要素に固執せず、さまざまな角度から物事を分解して考える習慣が、効果的な問題解決を実現します。分解思考を日々の仕事に取り入れることで、より効果的で持続可能な成果を上げることができるでしょう。フラットで冷静な視点を持ち、事実ベースで思考することで、最適な行動を見極められる力が養われます。
このように、分解思考を取り入れることで、漠然とした問題が具体的な解決策を伴ったものに変わり、実行に移す準備が整います。 視野を広げ、分解思考で全体像を把握できると、与えられた枠組みにとらわれず、自由な発想で物事を考えられるようになります。条件や方法に縛られずに視野を持つことで、より効率的な解決策を発見できるのです。
反対に、分解思考を用いずに仕事を進めると、どうしても目の前の制約や既存の方法に固執してしまいがちです。これが、問題がいつまでも解決せず、同じ悩みを繰り返してしまう原因となります。 分解思考は、目標設定や課題解決において多様な場面で応用できる実用的なアプローチです。
タスクの緊急性や重要度に基づいて優先順位をつけ、実行すべき順番を明確にすることも可能です。分解思考を使うことで、自分にとって重要なことが何であるかを一つひとつ確認し、最終的に全体の流れが見える形で整理されるため、自然と行動に移す意欲が湧きます。
分解思考の理想的な状態は、目標や課題が適切に細分化され、それぞれに対して「誰が何をすべきか」「どのように進めるか」が明確になっている状態です。具体的には、今日やるべきことがはっきりしているだけでなく、明日や来週に向けた計画が整い、1年後の目標に向かって何を積み上げていくかが明確になっていることです。
分解思考を取り入れることで、ただ漠然とした目標に向かって闇雲に進むのではなく、明確な計画と実行可能なステップに基づいて、着実に成果を積み重ねていけるようになります。
社会視点から分解思考を行おう!
一つ上に戻って、分解すれば複数の選択肢が生まれ、そこではじめて僕たちはよりよいほうを選べるようになります。だから、どんな問題に対しても常に2個以上の選択肢を出して選べる状態にしておき、よいほうの選択肢を選んでいくのが理想です。
ビジネスや日々の意思決定において、目標を達成するための方法を「分解する」ことは、私たちが本当に必要な選択肢を見つけ出すための重要な手段です。課題をそのまま一つの大きな塊として捉えるのではなく、要素に分けて考えることで、実は思っていた以上に多くの選択肢が生まれる可能性があるのです。そして、選択肢が2つ以上あるときにこそ、最適な方法を見つけることができるのです。
先程の売上を高める場合には、顧客数を増やす方法と、客単価を引き上げる方法、それにリピート率を上げる方法をそれぞれ検討できるようになり、戦略の幅が広がります。その際にそれぞれの要素ごとに異なるアイデアが複数出てくるはずです。
こうしたプロセスを経ることで、初めて「最も効果的な選択肢」を選び取る準備が整うのです。 選択肢が2つ以上あることには大きな意味があります。選択肢が1つしかない場合、私たちはその道を行くしかなく、それが必ずしも最善であるとは限りません。
しかし、複数の選択肢があれば、各々のメリットやデメリットを比較することができます。さらに、自分の目的や状況に最も合致する方法を選べるようになるため、決断への確信も高まります。複数の道筋を持つことで、たとえどれかが難航しても他の選択肢を検討しやすくなり、リスクに備えることも可能です。
どのような問題に対しても、「常に2つ以上の選択肢を持つ」姿勢は、ビジネスや個人の生活においても大きな強みとなります。私たちが状況に応じた柔軟な対応力を培い、最適解を見つけられるようになるためには、まず選択肢を増やすために分解を心がけることが大切なのです。このようにして、「良い選択肢を選ぶ」プロセスが積み重なれば、結果として課題の解決速度が上がり、長期的な成果も期待できるでしょう。
ビジネスを進める上で、社会全体の視点を持ち、広い視野で「どのように社会に貢献できるか」を考えることは、現代においてますます重要になっています。目の前の利益だけでなく、社会や環境への影響までを考慮した事業運営が求められる背景には、地球規模の課題や多様なニーズの増大があります。
そのために個人視点→事業視点→会社視点→業界視点→社会視点と視点を上げていくことがよいと著者は言います。こうした広い視点(パーパス)を持つことは、単なる理想論ではなく、個々の企業にとっても大きな価値をもたらすものです。
社会全体のために事業を行うという視点の具体例として、イーロン・マスクがよく引き合いに出されます。彼が電気自動車メーカーのテスラを創業した背景には、「環境破壊を食い止めたい」という大きな問題意識がありました。化石燃料の使用が増加し、地球温暖化が進む中で、ガソリン車をそのまま増やし続ければ環境の悪化が避けられないという危機感を抱いたからです。
つまり、「人類と地球を救う」という壮大なミッションを掲げ、それに基づいて事業戦略を練り、革新的な技術と製品を通じて社会に貢献する道を歩んできました。この視点が、テスラをただの自動車メーカーから、エネルギー問題解決を目指す存在へと押し上げたといえるでしょう。
僕たち個人は社会の構成員でもあり、社会の視点は巡り巡って個人の視点につながっています。つまり、視点を上げて考えていけば、最終的には自分の利益にも跳ね返ってくることになります。視点を上げれば会社や業界全体に貢献できますし、社会に影響を与える仕事ができるかもしれません。
私たち個人もまた、社会の一員として、このような「社会視点」を持つことが求められています。日々の仕事やビジネスで「この活動がどう社会に役立つか」「この仕事を通じて世の中にどのような価値をもたらすか」を考えることが、最終的には自分や自社にとってのメリットにもつながるのです。
例えば、持続可能な取り組みを続ける企業は、社会の信頼を得やすくなり、結果として支持やリピーターが増え、業績にも好影響をもたらします。つまり、視点を上げて事業を運営することで、社会全体だけでなく、巡り巡って自分たちにも利益が返ってくるのです。
社会視点で考えることは、個々の企業だけでなく、業界全体をも成長させる可能性があります。ある企業が画期的な製品を通して環境に優しい選択肢を広げることで、他の企業も同じように社会や環境に配慮した製品やサービスを提供するようになるかもしれません。そうして業界全体がより持続可能な方向へと向かえば、より多くの人々に恩恵が行き渡り、社会全体にプラスの影響を及ぼすことができます。
このように、社会視点を持って事業に取り組むことは、巡り巡って私たち自身にもポジティブな影響をもたらします。視点を上げてビジネスを展開すれば、最終的には自社の利益にもつながり、社会の中でより多くの人の役に立つことができるのです。社会全体に貢献し、社会と共に成長していく企業こそ、これからの時代に求められる存在になれるのです。
菅原氏が提案する「小さく分けて考える」アプローチは、悩みを解消し、目標達成に向けた行動力を引き出すための強力なツールです。自分の目標や課題を小さなステップに分けることで、問題が解決可能な具体的な要素として見えてきます。こうして分解された要素を一つずつ積み重ねることで、最終的には大きな目標にたどり着くことができるのです。
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