両立思考のABCDのパラドックス・マネジメントとは?

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両立思考 「二者択一」の思考を手放し、多様な価値を実現するパラドキシカルリーダーシップ
ウェンディ・スミス, マリアンヌ・ルイス
日本能率協会マネジメントセンター

両立思考の要約

両立思考とは、相反する要素や考え方を同時に受け入れ、調和を図ることです。 アサンプション、B バウンダリー 、C コンフォート 、D ダイナミクスの4つのステップのABCDのパラドックス・マネジメントでは、異なる価値観や意見を尊重し、それらを統合することで、より多様な価値を実現することを目指します。

変化を起こすために必要な両立思考とは?

変化を起こすことができなければ、これまでの考え方を変えましょう。新たな解決策が見つかるかもしれません。(マヤ・アンジエロウ)

二者択一や二分法的な思考に陥ると、思考の幅が狭くなり、最適な選択肢を見落とすリスクが高まります。これは、複雑な問題に対して単純化された解決策を求める傾向があるためです。

一方、パラドックス・マインドセットの人は、対立する力の間に働く矛盾を受け入れ、両者がどのように互いに補強しあっているかを認識します。彼らは矛盾や相反する要素を排除せずに受け入れ、それらを統合する方法を模索します。彼らは緊張関係を自然であり、価値があり、活力をもたらすものと考えます。

ジレンマに直面したとき、二分法的思考では「選択肢AとBのどちらを選ぶか」を考えますが、パラドックス・マインドセットでは「選択肢AとBをどうやって両立させるか」を考えます。問いを変えるだけで、新たな選択肢が導入され、両立思考が促されるのです。

例えば、仕事とプライベートの時間の使い方にジレンマを感じた場合、二分法的思考ではどちらかを選ぶことになります。しかし、パラドックス・マインドセットでは、両方を両立させる方法を模索することができます。仕事とプライベートの時間を上手に調整し、両方の充実を図ることができるのです。

このように、パラドックス・マインドセットを持つことは、新たな選択肢を生み出し、問題解決の幅を広げることができます。思考の枠組みを広げ、矛盾や相反する要素を受け入れることで、創造的な解決策を見出すことができるのです。

競合する要求に直面すると、不足によって緊張関係が生じる。リソースが不足しているという前提に立つと、要求同士がリソースを奪い合つように思える。これに対し、リソースが潤沢にあるという考え方をすれば、可能性が広がり、リソースが必ずしも行く手を阻むものではなく、新たなシナジーを実現する場合があるとわかる。(ウェンディ・スミス, マリアンヌ・ルイス)

従来の択一型の思考では、一つの選択肢を選ぶことが求められましたが、両立思考では、相反する要素を同時に受け入れ、調和させることが重要です。

正しい答えを導くABCDパラドックス・マネジメント

問いを変えると、視点が変わる。重要なのはマインドセットだ。

両立思考とは、相反する要素や考え方を同時に受け入れ、調和を図る思考のことです。ABCDのパラドックス・マネジメントでは、異なる価値観や意見を尊重し、それらを統合することで、より多様な価値を実現することを目指します。 例えば、組織内での意思決定において、ABCDシステムは有効な手法となります。

・A アサンプション(前提)
・B バウンダリー(境界)
・C コンフォート(快適さ)
・D ダイナミクス(動態) 

従来の二者択一の思考では、対立する意見や選択肢を排除してしまうことがありますが、ABCDシステムでは、相反する意見を取り入れることで、より幅広い視野からの意思決定を可能にします。

両立思考のABCDシステムは、アサンプション(前提)から始まります。アサンプションとは、対立する2つの力を同時に意識し続けるためのマインドセットと背後にある信条になります。このアプローチは、問題の枠組み自体を変えることから始まります。

例えば、天才とされる人物たち、アインシュタインなどは、「物体は動いているのか静止しているのか」という質問を「物体は動きながら静止することができるか」と再構築しました。これは、選択肢を「AかBか」から「AとBの両方をどう受け入れるか」に変えることです。

両立思考により、問題に対する視点が変わります。重要なのは、直線的で静的な世界観ではなく、矛盾、循環、動的な状態を含む世界観を持つことです。これにより、私たちの思考方法や課題への対応が変化し、より柔軟で革新的な解決策を生み出すことができます。

バウンダリーは、相反する要求やパラドックスに直面したとき、私たちのマインドセット、感情、行動をサポートするために設ける精神的な境界線です。この境界は、一方の選択に固執し、悪循環に陥るのを防ぐ役割を果たします。

つまり、バウンダリーは私たちがパラドックスに対処する初期段階で、偏り過ぎないようにするためのガードレールのようなものです。 この境界は、高次のパーパス(動機付けや結束を促す包括的なビジョン)を表現し、パラドックスに対処する理由と方法を忘れないようにします。

また、バウンダリーは競合する要求を個別に評価し、同時にシナジーや統合を見出すための接続点も提供します。このようにして、バウンダリーは私たちがパラドックスの各側に過度に傾くことなく、よりバランスの取れた視点で問題に取り組むことを可能にします。

コンフォートは、パラドックスに直面した際の感情管理に焦点を当てたアプローチです。このアプローチを実践することで、パラドックスによって引き起こされる初期の不快な感情を認めつつ、それらをより積極的に受け入れる方法を見つけることができます。

パラドックスはしばしば深い感情を喚起し、これが緊張、不安、過剰な防衛反応を引き起こす可能性があります。このような状況では、択一思考の罠に陥りやすくなります。

しかし、コンフォートを通じて、難しい問題に対する創造的な解決策を模索することが可能になります。このプロセスは、刺激的でポジティブなエネルギーを生み出す可能性があり、新たな選択肢を開放することで、パラドックスの扱い方を根本的に変えることができます。このように、コンフォートは感情を管理し、困難な状況を乗り越えるための重要なツールとなります。

最後のダイナミクス(動態性)は、継続的な学習と変化を可能にする行動で、これにより競合する要求のあいだの行き来が促されます。

パラドックスとは、相反する力がぶつかり合うことで生じる二元性と動態性を指します。このダイナミックな状況は、継続的な学習と変化を可能にし、択一の溝にはまることなく、複数の選択肢や可能性を探求することを可能にします。

このプロセスは、私たちのアサンプション(前提)とマインドセット(考え方)の変更につながり、それによって新しいバウンダリー(境界)やガードレール(安全策)が築かれます。 両立思考は、パラドックスとジレンマを認識し、重要な前提の枠組みを変えることから始まります。これにより、知識、リソース、マネジメントに関する従来の見方が変わり、より複雑で創造的なアプローチへの道が開かれます。

具体的には、知識の真実を単一ではなく複数の真実が共存するものとして見る、リソース不足の考え方から豊かさの考え方へシフトする、そして問題解決をコントロールからコーピングへと変化させることになります。


 

 

 

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