やらないことを決める技術 仕事も人生も「戦略的先延ばし」でうまくいく(大平信孝)の書評

書籍:やらないことを決める技術 仕事も人生も「戦略的先延ばし」でうまくいく
著者:大平信孝
出版社:ソシム
ISBN-10 ‏ : ‎ 4802615388

30秒でわかる本書のポイント

【結論】: 現代のビジネスパーソンが抱える問題の本質は、「やることが多すぎる」ことではなく、「やらないことを決めていない」ことです。
【原因】: 私たちは情報過多の中で「すべてをこなそう」とするあまり、決断力を消耗し、結果として本当に重要なタスクが未完了のまま積み上がってしまいます。これでは豊かな人生を送れません。
【対策】:引き算の思考法を身につけ、「やらないことリスト」を活用し、戦略的にタスクを先延ばしすることで、脳に余白を作り、自分の価値観に基づいた選択ができるようになります。劣後順位をきめ、本当に重要なことに集中することで、幸福度を高められます。

本書の要約 

著者の大平信孝氏は、私たちのキャパシティには限界があるにもかかわらず、情報やタスクは増え続けていると指摘します。このギャップを埋めるためには、単なるタイムマネジメントや効率化を追い求めるのではなく、勇気を持って「何をやらないか」を明確にすることが不可欠です。 本書では、「やらないことリスト」の作成や、決断力を鍛える「決断筋トレーニング」、本音にアクセスする「ノートメソッド」など、実践的で具体的なノウハウが惜しみなく紹介されています。「やらないことを決める」ことは可能性を狭めることではなく、自分の人生において本当に大切なものを主体的に選び取るための、極めてポジティブな戦略であることが理解できるはずです。

こんな人におすすめ

・毎日タスクに追われ、自分のための時間が取れないと感じている人
・「あれもこれもやらなきゃ」と焦りばかりが募り、疲労感が抜けない人
・真面目で責任感が強く、頼まれた仕事を断るのが苦手な人
・効率化ツールをいくつも試したけれど、結局仕事の総量が減らない人
・自分のキャリアや人生において、本当に大切なことにエネルギーを注ぎたい人

本書から得られるメリット

・「やらないこと」を明確にする基準が手に入る
・脳の疲労(決断疲れ)を防ぐ仕組みが作れる
・罪悪感なくタスクを「先延ばし」するスキルが身につく
・本当に重要な仕事に集中するための「余白」を生み出せる

やらない技術を身につける!

仕事の未完了と未完了感に追われても、自分の体力や意志のカでしばらくは乗り切れるかもしれませんが、やがては限界がやってきます。そうなる前に、抜本的な対処(=「やらない」技術を身につけて脳に余白を作る)を行ってほしいのです。(大平信孝)

私たちは、「できるビジネスパーソンはマルチタスクをこなし、大量の仕事をさばく」という幻想を抱きがちです。しかし、人間の脳の処理能力には明確な限界があります。次から次へと降ってくるメールやチャット、細々とした雑務に対応していると、脳のワーキングメモリはすぐに満杯になってしまいます。

その結果、長期的な視点が必要な戦略や、自分自身のビジョン作成といった「重要だが緊急ではない」タスクに回すエネルギーが枯渇してしまいます。すべてをやろうとする姿勢そのものが、本当に価値のある仕事の妨げになっているのです。

やらないことを決める技術 仕事も人生も「戦略的先延ばし」でうまくいくの中で、目標実現専門家の大平信孝氏は「やらないことを決める」ことで、仕事の未完了感を手放すことができると述べています。

まず、私たちがやることは「すべてはできない」という事実を受け入れることです。キャパシティを広げる努力よりも、器から溢れる前に注ぐものを絞り込む決断が求められています。 

人は1日に約3万5000回もの決断を下していると言われています。「今日は何を食べようか」「どのタスクから始めるか」といった些細な選択の積み重ねが、脳のエネルギーをじわじわと奪い、「決断疲れ」を引き起こします。

夕方になると複雑な思考ができなくなるのは、このためです。 そこで著者が提唱するのが、「やらないことリスト」の活用と「決断筋トレーニング」です。「朝イチは仕事のメールやチャットを見ない」「パワーポイントは過度な装飾をしない」「二次会は行かない」など、あらかじめ自分の行動にやらないルールを設けておくことで、その都度迷うプロセスをスキップできます。

「人生は有限である」という事実は、真に優先すべき事項を浮き彫りにします。 「やらないことリスト」を作成することは、消極的な回避策ではありません。むしろ、未来の自分に対して「思考の余白」を贈るための、きわめて知的な戦略です。

事前に不要な選択肢を削ぎ落としておくことで、脳のリソースを浪費から守り、ここぞという勝負どころで最高のパフォーマンスを発揮するための「エネルギーの温存システム」として機能します。 賢明な人間にとって、何を選ばないかは、何を選ぶかと同じくらい重要な決断なのです。

やらないことリストを書こう!

「やらないこと」リストでは、洗い出した「やるべきこと」を以下の3つのカテゴリーに仕分けしていきます。 ①そもそもやらない②自分でやらない(人にお願いする)③今はやらない(戦略的先延ばし)

「先延ばし」という言葉には、怠慢や意志の弱さといったネガティブなイメージがつきまといます。しかし本書で語られているのは、無自覚に逃げる先延ばしではなく、主体的に優先順位を下げて後回しにする「戦略的先延ばし」です。これは、今やるべきことを曖昧にするための技術ではなく、本当に重要なことに集中するための選択です。

著者は「やらないこと」リストをつくる際、洗い出した「やるべきこと」を3つのカテゴリーに仕分ける視点を示しています。すなわち、①そもそもやらない、②自分でやらない(人にお願いする)、③今はやらない(戦略的先延ばし)です。

この整理によって、私たちは漠然と抱え込んでいたタスクを可視化し、「何を手放し、何を委ね、何を後ろへずらすのか」を明確にできます。 今すぐやらなくても致命傷にならない仕事を意図的に保留することは、決して無責任ではありません。

むしろ、目の前の最重要課題に集中するための立派なマネジメント手法です。さらにノートメソッドを用いて自分の本音や価値観と向き合い、「これは本当に自分が今やるべきことか?」と問い直すことで、無意識に抱え込んでいた他人の課題や、惰性で続けていた行動を手放しやすくなります。

やらないことが決まった瞬間、あなたのライフスタイルは研ぎ澄まされ、洗練され、心から望む「行きたい未来」が、静かに姿を現し始めます。あとは、残った「大切な行動」に情熱を注げばいい、「すぐやる」を実践すればいいだけです。

「やらないこと」を決めると、仕事の未完了と未完了感から少しずつ解放され、私たちは「快追求」の行動原理で働けるようになります。人が行動する理由は、大きく分けると「快追求」と「不快回避」の二つしかありません。

快追求とは、「こうしたい」「こうなりたい」「これを実現したい」という欲求を満たすための行動です。楽しい、嬉しい、気分がいいという感情に向かって動くとき、人は本来のエネルギーを発揮しやすくなります。

一方で、不快回避だけで仕事をしていると、「やらなければ怒られる」「放置すると面倒になる」といった防衛反応に追われ続け、脳は疲弊していきます。

だからこそ、小さな決断を積み重ねて「決断筋」を鍛えることが重要なのです。やめることへの恐怖が薄れ、不要なことを切り捨てられるようになると、はじめて余白時間が生まれます。その余白こそが、未来を変える行動に着手するための起点になります。

完璧主義を手放し、「今はやらない」と決める勇気を持つこと。それこそが、忙殺される日々から抜け出し、仕事と人生のコントロールを取り戻すための最大の鍵なのです。

コンサルタント 徳本昌大のView

フレデリック・ハーズバーグは、私たちの行動を「ゼロベース行動」と「プラス行動」に分けて捉える視点を示しています。多くのビジネスパーソンは、メール返信、会議対応、調整業務、突発案件の処理といった、現状を維持するためのゼロベース行動に膨大な時間を費やしています。

しかし、本当に人生や仕事の質を押し上げるのは、新しい価値を生み出すプラス行動です。学び、発信し、企画し、挑戦し、人間関係を育てる――そうした未来を前進させる行動に手がつけられないままでは、幸福度も満足度も後退していきます。

だからこそ、「やらないことを決める」と人生は加速します。重要な20%に集中すれば、仕事の成果は劇的に変わります。

2007年、44歳。私は人生を根本から変えるため、お酒を断つ決断をしました。その時、ただ決意するだけでなく、「やりたいこと」と「やらないこと」をリストにして、自分の進むべき道を明確に分けたのです。

以来、私のルールはシンプルです。毎朝、その日の最優先事項を「3つだけ」に絞り、そこにエネルギーを注ぎ込みます。 多くの人は「やるべきこと」を増やそうとしますが、人生を本当に前進させるのは、むしろ「削ること」なのです。余計なものを捨て、空白を作る。その勇気こそが、最も重要な一歩を踏み出すための最大の原動力になります。

著者になれたのも、大学で教えられるようになったのも、社外取締役として上場の経験ができたのも、リストを書いたことが、そのスタートラインになっています。

人生のクオリティは、快の追求と不快の回避によって確実に高められます。私自身、サラリーマンを辞めて独立したとき、「好きな人と、好きな仕事をする」と決めました。誰と会うのか、何に時間を使うのか、どの仕事を引き受け、どの仕事を手放すのか。その基準が明確になると、人生の輪郭は驚くほど鮮明になります。自分の限られたリソースを、心から価値を感じる場所に注ぐこと。それが、豊かさの正体なのだと思います。

本書が教えてくれるのは、単なるタスク削減術ではありません。やらないことリストを書き出し、理想の自分を描き、現実とのギャップを見つめ、その差を埋めるための余白時間を意図的につくること。ここまでできたとき、人生は静かに、しかし劇的に変わり始めます。

時間に追われる人は多いですが、本当に必要なのは時間管理そのものではなく、「何のために時間を使うのか」という問いへの答えなのです。

不確実性が増す時代において、未来は未知数です。うまくいく保証はありませんし、何が正解かを事前に知ることもできません。それでも、一つの可能性に賭け、他を切り捨てるのが決断です。自分の可能性を信頼して一つを選ぶ。その最後の一歩には、やはり勇気が要ります。保留しているだけでは、構想しているだけでは、考えているだけでは、現実は一ミリも前進しません。

自分にとって本当に重要なものは何か。守るべき大切なものは何か。社会や仕事において果たすべき役割は何か。自分の核心にあるものや、果たすべき役割を深く見つめる。この内省のプロセスを経てこそ、人は自らの人生を主体的に生きることができます。

「やらないこと」を決めることで、行動と習慣が変わり、人生の質を間違いなく高められます。人生の後半戦を前に、悪い習慣を断ち切り、自分にとっての最適解を選び取った過去の決断に、今、改めて感謝しています。

なお、本書はご恵贈いただきました。

🖋 書評:徳本昌大 書評ブロガー・ビジネスプロデューサー

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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