ミリオンダラー強運思考 ――仕事も、お金も、人間関係も。 ずるいほどうまくいく「最初の1%」(冨田顕子)の書評

書籍:ミリオンダラー強運思考 ――仕事も、お金も、人間関係も。 ずるいほどうまくいく「最初の1%」
著者:冨田顕子
出版社:三笠書房

ミリオンダラー強運思考 ――仕事も、お金も、人間関係も。 ずるいほどうまくいく「最初の1%」の書影

【書評】冨田顕子氏の『ミリオンダラー強運思考』。宿命を受け入れ、環境・あり方・考え方を変えることが運を良くする方法!

ビジネスにおける成果の差は、努力の量だけでは説明できません。努力を始める前に選んだ環境や人間関係、判断基準も、その後の結果に影響します。 AIをはじめとする技術が仕事の進め方を変えるなか、努力の量を増やすだけでは成果につながらない場合があります。

同じ能力を持ち、同じように働いていても、機会を得られる人と、成果が伸び悩む人がいます。その違いを考えるには、何に力を注ぎ、誰と関わり、予想外の出来事にどう対応しているかを見る必要があります。

冨田顯子氏の『ミリオンダラー強運思考』は、こうした選択を「運」の観点から考える一冊です。本書のいう強運思考は、偶然に結果を委ねることではありません。自分では変えられない条件を認めたうえで、環境、行動、判断基準など、変えられる部分に働きかける考え方です。失敗の原因をすべて本人に帰す見方とも異なります。

本書では、努力に先立つ選択を「最初の1%」と表現しています。たとえば、取り組む課題を誤ったまま作業量を増やしても、望む成果には近づきにくいでしょう。努力を重ねる前に、その方向が目的に合っているかを確かめることが求められます。この視点は、個人のキャリアだけでなく、新規事業や組織運営にも応用できます。

機会を広げるうえでは、人との関係も重要です。ただし、出会いを待つだけでは仕事や協力関係は生まれません。相手に提供できる価値を磨き、約束を守り、信頼を積み重ねる必要があります。同時に、すべての関係を維持しようとして自分を消耗させない判断も欠かせません。

失敗や環境の変化に直面したときも、結果だけで自分の価値を判断する必要はありません。何が自分の選択によるもので、何が外部の条件によるものかを分けて考え、次に変えられる行動を見つける。その姿勢が、再出発のための具体的な判断につながります。

本記事では、本書が示す運の4つの要素、5つの自己投資、信用を積み重ねる「徳」、利他を実践する順番、転機から立て直すための考え方を整理します。あわせて、それらを個人の心構えにとどめず、成果を生みやすい環境づくりにどう生かせるかを考察します。

この記事でわかること

・努力を成果につなげる「最初の1%」の意味
・良縁と機会を増やす5つの自己投資
・気力を奪う人間関係を見直す判断基準
・信用を長期的に蓄積する「徳」の仕組み
・自己犠牲に陥らない「利他の順番」
・失敗や挫折を再出発の契機に変える思考法 メ

30秒でわかる本書のポイント

【結論】
・運は、すべてを自分で支配できるものではありません。しかし、環境、あり方、考え方を選び直すことで、良い機会に出会う確率を高めることはできます。
・強運思考とは、変えられない事情を受け入れながら、変えられる領域に働きかける姿勢です。
・失敗や挫折も、これまでの前提を見直し、新しい道を選ぶ機会に変えられます。
【原因】
・努力しても成果が出ない背景には、能力や努力量ではなく、行動の前提となる環境や判断基準のずれがある場合があります。
・また、「いい人だと思われたい」という気持ちから、気力を奪う相手との関係を続けたり、自分を犠牲にして他人を優先したりすると、長期的な信頼や成果を維持できません。
・失敗を「私は価値のない人間だ」という自己評価に結びつけてしまうことも、立ち直りを遅らせる原因になります。
【対策】
・感謝や成果報告を習慣化し、信用を積み重ねます。
・自分、家族、従業員、取引先、顧客、地域・社会という順番を意識し、利他を実践します。
・失敗したときは、自己否定より先に「次に修正する一点」を決めます。

本書の要約

冨田顯子氏の『ミリオンダラー強運思考』は、仕事、お金、人間関係に影響する「運」の仕組みを、具体的な行動に落とし込んだビジネス書です。

著者は、努力が空回りする原因の一つとして、出来事の捉え方や、次の行動を決める基準に注目します。行動量を増やす前に、行動の出発点となる「最初の1%」を整える必要があると説いています。

本書では、運を次の4つに分解します。
・宿命:自分では変えられない条件
・環境:身を置く場所や付き合う人
・あり方:日常の姿勢や人との向き合い方
・考え方:出来事の解釈と判断基準 宿命を変えることはできません。

しかし、環境、あり方、考え方は選び直せます。本書の中心にあるのは、自分が影響を及ぼせる領域に集中するという考え方です。 また、運は人との関係を通じて運ばれるため、「人・見た目・ブランディング・環境・時間」という5つの領域への自己投資が重要だと指摘します。

一方で、人脈は広ければよいわけではありません。会うたびに気力や時間を奪われる相手との関係を見直し、自分のエネルギーを適切に管理する必要があります。

さらに本書は、「徳」と「利他の順番」を重視しています。人を喜ばせ、感謝を伝え、信頼を優先する行動は、長期的な信用につながります。ただし、自分や家族を犠牲にして外部の人に尽くすことは、持続可能な利他ではありません。 人生の挫折や大きな転機についても、単なる不運として捉えるのではなく、これまでの前提を見直す機会と位置づけます。

失敗によって立ち止まるからこそ、自分が本当に守りたいものや、これから進みたい方向が明確になる場合があります。 本書は、運を完全に操作できると主張する本ではありません。思考、環境、行動、人間関係を整えることで、努力が成果につながる可能性を高めるための実務書として読むべき一冊です。

こんな人におすすめ

・努力しているのに、成果や評価につながらない人
・独立や起業を控え、自己投資の優先順位を決めたい人
・人脈を広げたい一方で、人間関係に疲れている人
・挫折や大きな転機を迎え、次の道を模索している人
・メンバーの努力が成果につながらず、悩んでいる経営者やリーダー

本書から得られるメリット

・自分の環境、あり方、考え方を客観視できます。
・自分を制限している思い込みや人間関係を見直せます。
・自己犠牲に陥らない、持続可能な利他を実践できます。
・失敗と自己価値を切り離し、早く行動を再開できます。

 運を変える「最初の1%」──環境・あり方・考え方を整える

強運な人にも、悪いことは起きる。ただ、長居はさせない。(冨田顕子)

私たちが生きる現代は、変化のスピードが速く、AIをはじめとするテクノロジーがビジネスの前提を大きく変えています。このような環境では、「努力を重ねれば成果が出る」という従来の成功法則だけでは、十分に対応できないことがあります。

同じような能力を持ち、同程度の努力をしていても、思うような結果が出ない人がいる一方で、次々と機会をつかむ人もいます。この違いは、努力量だけでは説明できません。行動を始める前の前提、身を置く環境、付き合う人、出来事の捉え方などが、その後の成果を大きく左右します。

株式会社メイクザフューチャー代表取締役の冨田顯子氏の著書『ミリオンダラー強運思考 ――仕事も、お金も、人間関係も。 ずるいほどうまくいく「最初の1%」』は、この違いを「運」という観点から整理した一冊です。 タイトルにある「強運」という言葉から、偶然やスピリチュアルな力を連想する人もいるかもしれません。

しかし、本書が説く「強運思考」は、運任せの生き方ではありません。また、起きたことをすべて自己責任として引き受け、自分を責める考え方でもありません。 自分では変えられない条件を認めたうえで、環境、行動、人間関係、判断基準など、自分で変えられる領域に働きかけること。それが、本書のいう強運思考です。

著者の冨田氏は、成果を左右する重要な前提を「最初の1%」と表現しています。どれだけ努力を重ねても、その方向や前提がずれていれば、十分な成果にはつながりません。だからこそ、残りの99%を頑張る前に、まず最初の1%を整える必要があります。

本書では、運を「宿命」「環境」「あり方」「考え方」の4つに分けています。「宿命」は、生まれた場所や時代、過去の出来事など、自分では変えられない条件です。一方、「環境」「あり方」「考え方」には、自分の意思で変えられる余地があります。

最初の1%=環境✖️ありかた✖️考え方

つまり、「どこに身を置くか」「どのような姿勢で人や仕事に向き合うか」「物事をどう捉えるか」を整えることが、行動と結果を変える出発点になります。 運を否定する必要も、運任せになる必要もありません。

変えられない「宿命」は受け入れながら、自分で選べる「環境・あり方・考え方」に働きかける。そのうえで努力を積み重ねることが、本書のいう「最初の1%」の本質です。

努力の量を増やす前に、努力が成果につながりやすい条件を整える。この考え方は、運を自分で完全にコントロールしようとするものではなく、自分が選択できる範囲に集中する、主体的な行動戦略だといえます。

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運を良くする7つの自己投資

未来の自分に必要な出会いが生まれる場所へ、先行的に時間やお金を使う。私が考える「縁への投資」には、7つあります。

会いたい人との出会いは、偶然だけで生まれるものではありません。自分自身に投資し、行動範囲を広げ、相手にとって「会いたい人」になることで、新しいご縁が生まれる可能性は高まります。

そのための具体策として、本書は「コミュニティ」「学び」「人」「見た目」「ブランディング」「住まい、環境」「時間」という7つの自己投資を挙げています。

1.コミュニティへの投資
今の自分より少し先を進んでいる人が集まるコミュニティや勉強会に参加します。異なる経験や価値観を持つ人との対話は、自分の判断基準を更新する機会になります。 重要なのは、ただ所属することではありません。自分から話しかけ、相手の話を聞き、関係を築くことです。良質なコミュニティは、新しい情報や人との接点を増やしてくれます。

2.学びへの投資
本を読むだけでなく、セミナーや講座、勉強会など、人と一緒に学ぶ場所に参加します。 知識が増えるほど、異なる分野の人とも会話できるようになり、共通のテーマも見つけやすくなります。学びは知識を得るだけでなく、これまで接点のなかった人とつながるための入口にもなります。 

3.人への投資
会いたいと思う人がいるなら、自分から会いに行くことが重要です。食事や交流、イベントへの参加などに時間とお金を使います。 人との関係は、待っているだけではなかなか広がりません。自分から働きかけ、相手のために何ができるかを考える。その積み重ねが、信頼や紹介につながっていきます。

4.見た目への投資
第一印象は、その後のコミュニケーションにも影響します。高価な服を着る必要はありませんが、清潔感、サイズ感、服装、時計や小物など、自分がどう見えるかを意識することは重要です。 見た目への投資とは、自分を必要以上によく見せることではありません。相手に安心感を与え、「この人と話してみたい」と思ってもらうための準備だと考えられます。

5.パーソナルブランドへの投資
肩書き、実績、専門性、発信内容などを通じて、「自分は何をしている人なのか」を明確にします。 SNSやブログ、書籍、メディアなどで継続的に情報を発信していると、初対面でも相手が自分を理解しやすくなります。重要なのは有名になることではなく、「何について相談できる人なのか」が伝わる状態をつくることです。 ブランドとは自分を飾るものではなく、相手が安心して自分を選び、紹介できるようにするための信用の蓄積です。 

6.住まい・仕事環境への投資
どこに住み、どこで働くかによって、日常的に接する人や情報は変わります。 人との出会いが多い場所、集中して仕事ができる環境、新しい刺激を受けられる場所など、自分が成長しやすい環境を意識的に選ぶことが重要です。 環境を変えることで、行動が変わり、行動が変われば出会う人も変わっていきます。

7.時間への投資
この中で最も重要なのが、時間への投資です。 予定を詰め込みすぎず、意識的に余白を確保します。時間に余裕があれば、突然の誘いに応じたり、興味深いイベントに参加したり、新しく知り合った人と会ったりできます。 お金を使って時間を買うことも一つの方法です。

移動や定型業務を効率化し、「会いたい人に会う時間」「学ぶ時間」「考える時間」を確保します。 スケジュールの余白は、単なる空き時間ではありません。まだ見えていないチャンスを受け入れるための余力です。

この7つに共通しているのは、単に「会いたい人を探す」のではなく、自分自身の価値、信用、行動範囲、時間的余白を増やすことです。 「誰に会いたいか」だけでなく、「その人から見て、自分は会いたい人になっているか」を考えることです。この視点を持つと、人脈づくりは名刺の数を増やす活動ではなく、自分自身への長期的な投資へと変わります。 

これらの自己投資は、必ず成功を保証するものではありません。しかし、良い情報や人に出会い、機会が訪れたときに行動できる確率を高めます。運を完全に操作することはできなくても、運を受け取りやすい状態を整えることは可能です。

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人間関係を整え、信用を長期的に蓄積する

運は、「人の顔」をしてやってくる。

運は、多くの場合、人との関係を通じて運ばれてきます。仕事の依頼、紹介、協業、重要な情報などは、人間関係の中から生まれることが少なくありません。

ただし、人脈は広ければよいわけではありません。会うたびに時間や気力を奪われる関係を増やせば、新しい機会に対応する余力が失われます。 本書では、周囲の人からエネルギーを奪う人を「エナジーバンパイア」と表現しています。

否定的な話を一方的に続ける、相手の都合を無視して要求する、断ると過度に非難するなどの関係が続けば、判断力や行動力が低下します。 たとえ仕事を提供してくれる相手であっても、その関係によって著しく疲弊し、他の重要な活動が妨げられているなら、付き合い方を見直す必要があります。

一方で、疲れを感じたという理由だけで、相手を一方的に「エナジーバンパイア」と決めつけるのは適切ではありません。疲労の原因は、自分の体調、仕事量、コミュニケーションの方法にもあるからです。

関係を見直す際には、要求と見返りのバランスが著しく偏っていないか、相手が自分の時間や事情を尊重しているか、断ったときに過度な圧力を受けないか、境界線を伝えることで関係を改善できないかを冷静に確認する必要があります。

「いい人だと思われたい」という気持ちから、断るべき依頼まで引き受けてしまう人もいます。しかし、すべての期待に応えようとすれば、本当に大切な人や仕事に使う時間が不足します。

本書がいう「強運の器を広げる」とは、無制限に人を受け入れることではありません。引き受けることと断ることを明確にし、重要な機会に対応できる余力を保つことです。

人間関係では、不要な関係を見直すだけでなく、信頼を積み重ねる行動も必要です。本書は、人を喜ばせる、感謝を伝える、短期的な損得よりも信頼を優先するといった行動を「徳を積む」と表現しています。

たとえば、アドバイスを受けて成果が出たときに、具体的な結果とともに感謝を伝えれば、相手は自分の支援が役立ったことを理解できます。こうした行動は、次の協力や紹介につながる可能性があります。 これは神秘的な仕組みではありません。

誠実な行動が信頼を生み、信頼が紹介や情報、協力を生み出すという、人間関係の積み重ねです。その意味では、信用は長期的に蓄積され、複利的に価値を生むことがあります。

ただし、徳を積むことと、自分を犠牲にすることは異なります。「人の役に立たなければならない」と考え、時間や労力を無制限に差し出せば、いずれ継続できなくなります。

自分が幸せでなければ、利他は絵空事になります。自分をすり減らし、家族を後回しにして外の人にばかり尽くす。それは徳を積んでいるのではなく、近しい人に負担をかけているだけです。身内を泣かせる利他は、利他じゃない。 まずは自分の状態を整え、そして身近な人を大切にする。その土台があって初めて、仕事相手やお客様、地域へと、できることを広げていけます。 徳を積むとは、自分を犠牲にすることではありません。自分を粗末にせず、長くつづくいい流れをつくることです。

著者は利他には、「自分→家族→従業員→取引先→顧客→地域・社会」という順番があると指摘します。これは、外部の人より自分や身近な人を優遇するという意味ではありません。

長期的に他者へ価値を提供し続けるためには、まず自分自身の心身や生活を安定させる必要がある、という考え方です。 自分が疲弊し、家族や従業員に負担をかけながら、顧客や社会のために尽くしても、その利他は長続きしません。

自己犠牲を前提とした貢献には限界があります。 だからこそ、最初に自分を大切にし、自分自身が幸せでいられる状態をつくります。次に家族や従業員など身近な人との関係を整え、そこから取引先、顧客、地域、社会へと貢献の範囲を広げていきます。 つまり、徳を積むとは、自分を犠牲にして誰かに尽くすことではありません。自分を満たし、身近な人を大切にし、その余力をより多くの人へ還元していくことです。

まず自分が幸せになること。その土台があるからこそ、他者への貢献を無理なく継続でき、信頼も長期的に積み重なっていきます。

長く仕事や人生を続けていれば、失敗、病気、離別、事業の停滞など、予期しない出来事に直面します。本書は、こうした厳しい転機を人生の「転」と表現しています。 起きた出来事そのものを変えることはできません。

しかし、その出来事をどのように捉え、次に何を選ぶかは変えられます。 順調なときには、現在の仕事や人間関係を見直す理由がありません。ところが、失敗や喪失によって立ち止まると、自分が本当に守りたいものや、これからどのように生きたいのかが明確になる場合があります。

ただし、「どん底は必ずチャンスになる」と安易に美化すべきではありません。困難の深刻さによっては、十分な休息や医療、専門家による支援が必要です。苦しい状況の中で、すぐに前向きな意味を見つけられないこともあります。

重要なのは、失敗を自分の人格や存在価値と結びつけないことです。「今回の判断は間違っていた」という評価と、「自分は価値のない人間だ」という自己否定は、明確に分ける必要があります。判断や行動は修正できますが、自己否定は次の行動を妨げます。

失敗したときは、まず事実と感情を分け、自分では変えられない条件を確認します。そのうえで、自分が修正できる一点を決め、小さな行動から再開します。これまでの延長線上に解決策がなければ、別の道を選ぶことも必要です。 立ち直ってから行動するのではなく、小さな行動を始めることで立ち直れる場合もあります。

ミリオンダラー強運思考とは、いつも明るくいることではありません。気持ちが沈んだときに、考えと行動を立て直す技術です。

強運思考とは、困難を否定することではありません。困難の中でも、自分が選べる次の一手を見つける力です。 この「最初の1%」という考え方は、個人の生き方だけでなく、組織のマネジメントにも応用できます。

組織の成果を、メンバーの能力や努力だけで説明すると、重要な要因を見落とします。目標が曖昧であったり、評価基準が共有されていなかったり、必要な情報や権限が与えられていなかったりすれば、個人が努力しても十分な成果は得られません。

また、失敗や問題を早期に報告できない組織では、小さな問題が放置され、より大きな損失につながります。部門ごとの目標が衝突していれば、各部門が合理的に行動しても、組織全体では非効率が生まれます。 リーダーの役割は、「もっと頑張ってほしい」と努力を求めることではありません。目標と優先順位を明確にし、評価基準を共有し、必要な情報、予算、権限を配置することです。

さらに、悪い情報ほど早く報告できる環境をつくり、成果を妨げている業務や会議を減らす必要があります。 前提が間違っていれば、メンバーが努力するほど、組織全体が誤った方向へ進む可能性があります。成果が出ないときは、個人の能力や意欲を問題にする前に、成果が生まれる前提が整っているかを検証すべきです。

『ミリオンダラー強運思考』を、幸運を得るための魔法の書として読むべきではありません。本書の実務的な価値は、努力量を増やす前に、環境、思考、人間関係、判断基準を見直し、努力が成果につながりやすい条件を整える点にあります。

運には、自分では制御できない偶然が含まれます。しかし、どこに身を置き、誰と関係を築き、機会が訪れたときにどのように行動するかは選べます。 強運とは、幸運が訪れるのを待つことではありません。自分で変えられる条件を整え、良い機会を受け取り、それを生かせる状態をつくることです。

コンサルタント 徳本昌大のView

『ミリオンダラー強運思考』の価値は、運を偶然に任せるのではなく、自分で選べる行動や環境を見直す視点を得られる点にあります。

ベンチャー企業の成否は、技術力やビジネスモデルだけでは決まりません。創業者が予期しない困難にどう対応し、失敗から何を学び、次の判断をどう変えるかも事業の行方に影響します。同じ出来事に直面しても、そこで立ち止まるか、新たな選択につなげるかによって、その後の展開は変わり得ます。

私は以前、心理学者リチャード・ワイズマンの『運のいい人の法則』の書評で、運のよい人に共通する四つの原則を紹介しました。機会を広げること、直感に耳を傾けること、よい結果を期待して行動すること、そして不運を次に生かすことです。

小さな出会いや予想外の出来事に気づき、可能性を試す姿勢は、ビジネスの現場にも通じます。新たな顧客の声を聞く、普段は接点のない人と話すといった行動も、判断の材料を増やすきっかけになります。

『ミリオンダラー強運思考』も、変えられない「宿命」を嘆くより、身を置く環境、人間関係、日々の考え方に目を向けます。なかでも考えさせられるのは、誰に対しても「いい人」でいようとして無理を重ねれば、大切な判断に使う余力まで失いかねない、という視点です。

周囲への配慮は必要ですが、自分を消耗させる関係まで維持し続ける必要はありません。適切な距離を取り、自分の状態を整えたうえで他者に貢献する。この順番には、仕事を続けていくうえでも実務的な意味があります。

転機やトラブルの後も同じです。起きた出来事そのものは変えられません。しかし、原因を確かめ、仕事の進め方や相談する相手、判断基準を変えることはできます。失敗をただ悔やむのではなく、次の行動を決めるための情報として扱う。その積み重ねが、将来の機会を捉えやすくするのでしょう。

本書のいう「最初の1%」を実践するなら、大きな決断から始める必要はありません。まずは、時間を使う相手、身を置く環境、迷ったときの判断基準のうち、一つを見直してみることです。たとえば、消耗するだけの予定を減らす、異なる意見をくれる人と話す、判断の前に目的を確認する。小さくても具体的な変更なら、日々の行動に取り入れられます。

努力を増やす前に、その努力が成果につながる条件を整える。努力の方向に迷う人や、組織の立て直しに向き合う経営者に薦めたい一冊です。

FAQ

Q1: 運の良さは、生まれつきの才能や特別な環境によるものではありませんか?

A1: 運は「宿命・環境・あり方・考え方」の4要素で構成されており、変えられない「宿命」以外の3つを自ら選び直すことで、後天的に創り出すことができると説かれています。強運思考とは、変えられない事情を認めたうえで、それでも自分で変えられる部分にフォーカスする主体的な戦略です。

Q2: 人に尽くすこと(利他)が大切だとわかっていても、疲れてしまいます。

A2: 利他には絶対に守るべき「順番」があります。まず自分、次に家族、そして従業員、お客様という順番です。自分が幸せで満たされていなければ、他人への利他は自己犠牲となり長続きしません。自分を粗末にせず、身近な人から大切にしていく土台作りが重要です。

Q3: 人脈を広げたいのですが、どんな人と付き合えばいいのかわかりません。

A3: その人と会ったあと、「新しいことをやってみたくなるか」という自分のエネルギーの変化を基準にしてください。仕事をくれる相手でも、会うたびに気力を奪われ、やる気がしぼむ「エナジーバンパイア」からは距離を置く勇気が必要です。

Q4: 大きな失敗や挫折をしてしまい、立ち直れる気がしません。

A4: 長く生きていれば、予期せぬ「転(どん底)」は必ず訪れます。しかし、立ち止まったときにこそ「本当に守りたいもの」が見え、これまでの延長線上ではない「新しい道」を選べるチャンスでもあります。その逆境を新たなスタートラインとして捉え直すことが、強運思考の核心です。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

Ewilジャパン取締役COO
Quants株式会社社外取締役
Mamasan&Company 株式会社社外取締役
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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