ボー・ロットの脳は「ものの見方」で進化するの書評

進化の過程と同じように、脳も少しずつ前に進んでいく。過去の自分の行動から、次の小さな1歩を決めている。「すべてのことは可能だ」というような威勢のいい言葉をよく聞くが、実際のところそんなことはない。どんなときでも可能性はかぎられていて、小さな1歩の積み重ねで未来がつくられていく。(ボー・ロット)


photo credit: TheDyslexicBook.com Brain via photopin (license)

神経学者のボー・ロットは、脳は「ものの見方」で進化するで、脳は過去の思考と行動によって、自分を必要以上に制限していると述べています。思考する可能性のある事柄は、理論上は無数にありますが、自分の思考と経験が無限の可能性にブレーキを踏んでいるのです。過去の経験から生まれた思い込みやバイアスが、近づきやすい知覚と、遠ざけやすい知覚を決めているのです。過去の経験によって、私たちは自分がやるべきことを判断しています。
それを避け、可能性を広げるためには、自分の考え方を変えるべきです。『自分の思考や行動は、いついかなるときでも、つねに思い込み(またはバイアス)に支配されている』という考えを自分ごと化することで、自分の意識を変えられます。

自分は思い込みに支配されているという自覚があるのはいいことだ。そうでないと、自分の脳の働きを知らず、その結果として自分自身を知らない状態にとどまることになってしまう。

歴史上の事件や悲劇は「間違った思い込み」が招いた結果だとボー・ロットは言います。人は失敗を経験すると、古い思い込みを捨てて、新しい思い込みを取り入れざるをえなくなります。思い込みを新しく変えるためには、新しいことにチャレンジし、時には失敗する必要があるのです。思い込みに支配されているという自覚を持って、過去の失敗からも学びましょう。歴史を学び、そこから未来を変えるヒントを探すことは価値があるのです。

2008年9月15日、リーマン・ショックが起こり、大手投資銀行のリーマン・ブラザーズはあえなく破綻しました。損失の大部分は、返済能力の低い人に貸し出された住宅用のサブムプライムローンが原因でした。リスクをカバーするために金利が段階的に上がっていくルールのために、借り手は返済に行き詰まったのです。自分たちの商品設計を信じ過ぎて、誰もがローンを返せるという思い込みが破綻を招いたのです。リーマン破綻のニュースが流れると、数時間のうちに世界中の株式市場が暴落しました。各国のリーダーは金融関係者を集め、これ以上の損害を食い止める方法を討議しました。リーマン・ショックはアメリカ大統領選挙やその後の金融政策に大きな影響を与えました。金融セクターだけでなく、多くの業界で大量解雇が実施されるなど、この失敗の影響は広範囲に及びました。ウォール街はサブプライムローンという形で金融機関に搾取されていた人たちに、大金を賭け、ギャンブルを行ったのです。その一方で、経済を守るために存在しているはずの政府機関は、ウォール街の無謀なギャンブルを野放しにしてきました。間違った思い込みが、とてつもない悲劇をもたらしたのです。金融界と政府のトップは、ここまでの大惨事を予想することができずに、ギャンブルを行い、世界経済を破綻させました。

彼らの思い込みは間違っていたにも関わらず、自分のバイアスに合わせて頭の中の現実をつくり替え、見たいものだけを見ていたのです。国の指導者たちが違う思い込みを持っていたら、あそこまで大きな危機は起こらなかったはずです。アメリカだけでなく、世界中の多くの人が家や仕事を失い、厳しい生活を余儀なくされました。それを防ぐことができなかった理由は、脳の進化という観点から説明することができると著者のロー・ボットは指摘します。過度の思い込みを避ければ、多くのリスクを避けられるのです。

それはすべて、思い込みという脳の働きが原因だった。過去と現在は違う。過去の経験から生まれた脳内の電気パターンとネットワークは、今の時点では最適の反応ではないかもしれない。昔は役に立ったからといって、今も役に立つとはかぎらないということだ。

自分の狭い知識や知恵ばかりに頼っていてはいけません。過去の思い込みを捨てて、新たな視点を取り入れるべきです。私たちが生きている世界はつねに流動しています。もし世界が不変であるなら、そのまま変わらずにいるのがベストの戦略ですが、世界は絶えず変化しているのです。進化とは、実は世界が変化していることの証拠で、生き残るために欠かせない行為なのです。私たちも変化の流れに乗り、適応しなければなりません、成功しているシステムは、すべて変化に適応しているというルールを理解し、過去にとらわれずに、新たな視点を取り入れるべきです。自分の意識を変えて、変化のための小さな一歩を踏み出しましょう。

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なぜという質問が脳を活性化し、自分の可能性を広げてくれる!

私たちは暗闇を無視して、明るく照らされた場所だけでせっせと定量化できるデータを集めている。ビッグデータの構築が可能になったのは技術の進歩のおかげだが、データを集めることそれ自体は簡単だ。難しいのは、「なぜ?」の問いに答えること、そして理解することだ。大切なのは、「尋ねる価値のある質問」を見つけること。いい質問は、無意味な情報から現実をつくるときの脳と同じ働きをする。

過去の優秀な人たちは思い込みを避けてきました。哲学者たちは、ソクラテスからウィトゲンシュタインまで、つねに「なぜ?」という質問をくり返してきたのです。彼らは古い思い込み(またはバイアス)を疑い、そして思い込みの正体を明かしたり、思い込みに修正を加えたり、または思い込みを完全に破壊することを試みたりしてきた。

古い思い込みを新しい思い込みと交換し、そして新しい思い込みはいつしか古い思い込みになり、未来の哲学者によって疑問を持たれる。なんだかややこしい話だと思いつかもしれないが、ややこしいところなどまったくない。これは誰でも身につけることができるスキルであり、唯一絶対的な答えばかりが求められる今の時代には、このスキルが特に重要になる。

多くのひらめきは違う要素の組み合わせによって生まれます。しかし、それはいきなり生まれるわけではあります。「天才的なひらめき」を正しく理解するには、まず「大きな結果は大きな原因から生まれる」という思い込みを捨てる必要があるのです。むしろ、大きな結果は小さな原因から生まれていることが多いのです。組み合わせを面白くするためには、様々な知識や体験を重ねることが重要です。世の中に適応するためには絶えず自分になぜと問いかけたり、学びという投資をする必要があるのです。

ひらめきは「質問」から生まれてくるのですから、小さな質問にはとてつもなく大きな力があるのです。いい質問を習慣にすることが、新たなアイデアを生み出すカギになるのです。ひらめきにつながる質問は、「なぜ?」と尋ねることです。この質問を絶えず自分に課しましょう。特に、世の中の「当たり前」=思い込みに対して「なぜ?」と尋ねることが重要になるのです。

まとめ

私たちの脳は思い込みに支配されています。過去の常識を捨て去り、変化することを意識しないと世の中に適応できなくなります。世の中を変えたり、自分の価値を高める革新的なアイデアは、小さな質問の積み重ねなのです。なぜを習慣化するために、自分を変えるきっかけを探しましょう。そのためには新たな学びとチャレンジが欠かせないのです。

今日もお読みいただき、ありがとうございました。

     

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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