顧客本位の企業では、社員の役割分担が根本的にちがっている。機構は分権的で、これまで企業ピラミッドの底辺で命令に従っていた従業員に、責任が委ねられる。つまり、伝統的な階層的企業構造が、横割りの機構に変わりはじめているのだ。(ヤン・カールソン)
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真実の瞬間を大切にする顧客志向の経営とは何か?
ヤン・カールソンは破綻寸前のスカンディナビア航空の経営を顧客志向に変えることで一気に業績を回復させました。彼の著作真実の瞬間を読むと顧客本位の経営の本質を理解できます。航空会社は航空機やメンテナンス施設、営業所、業務システムを中心に経営を考えます。しかし、顧客視点に立つと経営者や社員がどこにフォーカスすればよいかがわかります。ヤンは「顧客が航空機とか営業所の建物、あるいは資本運営のことなどについて語るだろうか?」という疑問を持つことで、スカンジナビア航空の経営を変えていきます。顧客はスカンジナビア航空の従業員とのコンタクトポイントを気にするという仮説を作り、顧客に直接接する最前線の従業員が提供するサービスの質を高めることを決めたのです。1986年1000万人の旅客が、それぞれほぼ5人のスカンジナビア航空の従業員に接しました。その際の一回の応接時間が平均15秒であることがわかりました。たった15秒という真実の瞬間によってスカンジナビア航空の印象が変わってしまうのです。1年間に5000万回顧客の脳裏にブランドを刻みつけチャンスがあり、それをよくすることで売り上げはアップするのです。
その5000万回の”真実の瞬間”が、結局スカンジナビア航空の成功を左右する。その瞬間こそ私たちが、スカンジナビア航空が最良の選択だったと顧客に納得させなければならないときなのだ。真に自分たちの会社を、顧客の個々のこーズに応える企業にするつもりなら、現場からかけ離れた部署でつくられた規則書や指示書に頼ってはならない。
15秒の真実の瞬間にスカンジナビア航空を代表している航空券係、客室乗務員、荷物係といった最前線の従業員に、アイデア、決定、対策を実施する責任を委ねることが必要だと思ったヤンは現場に権限を移していったのです。問題が起こるたびに最前線の従業員が上層部の意向を確かめていたら、目の前の顧客は他社に流れていくはずです。貴重な15秒間に最高のサービスを影響することで目の前の顧客がファンになり、リピートしてくれたり、口コミを発信してくれるのです。15秒のひとつひとつがNPSをアップさせる大切な瞬間なのです。NPS(Net Promoter Score)は顧客ロイヤルティを数値化する指標です。NPSは大手コンサルティング会社であるベイン・アンド・カンパニー社のフレドリック・F・ライクヘルド氏が提唱し、アップルやアメリカンエクスプレスなど多くの企業が採用しています。このスコアが高い企業はファンが多くいるために、収益がよくなることがわかっています。
真実の瞬間 SASのサービス戦略はなぜ成功したか [ ヤン・カールソン ] |
顧客本位の企業になるためにはまずは経営者が変わること!
顧客本位の企業になるには、最前線の従業員がさまざまの面で変わらなければならない。しかし、そうした変革を率先して促すのは、経営者の役割だ。従業員が自信をもって職責を引き受け、手ぎわよく任務を遂行できるような環境をつくることに意を注ぐ、真のリーダーになることが経営者の責任となる。
経営者は従業員とのコミュニケーションを密にして、彼らに自社のビジョンを伝える必要があります。顧客本位というビジョン実現するために従業員との会話を重ねるべきです。従業員が何を必要としているかに耳を傾け、組織や仕組みを変える勇気を持たなければなりません。自社のためのマニュアルを顧客重視なものに見直すべきです。ヤンは成功するためには、経営者は孤立した官僚的な意思決定者をやめるべきだと指摘します。経営者は顧客を意識し、ビジョンをもった戦略家、情報提供者、教師、そして鼓吹者になるべきだと言うのです。
顧客本位のマネージャを増やし、経営者のビジョンを絶えず共有するのです。彼らに敬意と信頼を示して、顧客のために何をすべきかを考えてもらうのです。そして、最前線の従業員には、顧客ひとりひとりの二ーズと問題に対応する権限を与え、15秒で彼らを喜ばすことが求められるのです。一人一人の従業員が真摯に顧客に向かい合うことで顧客が自社のファンとなり、周りに推奨してくれるようになるのです。
まとめ
顧客志向の経営を行うことで業績を改善することがわかっています。顧客志向の経営を推進し、NPSを高めることで売り上げがアップするようになります。経営者自ら顧客とのエンゲージメントを高めることを宣言し、社員に顧客本位のマインドを共有することで会社は変わりはじめます。経営者が社員に権限を委譲し、顧客をワクワクさせることで、多くのファンが生まれ、収益が改善していくのです。
今日もお読みいただき、ありがとうございました。
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