アダム・モーガンとマーク・バーデンの逆転の生み出し方の書評

制約は成果をもたらす。物事を可能にし、望ましい方向に導ひらく。画期的なアプローチや可能性を切り拓く。能力を抑えつけるのではなく高めるのだ。制約の中には、恐ろしい野獣ではなく、チャンスという名の美女が潜んでいる。(アダム・モーガン、 マーク・バーデン)


photo credit: Thomas Hawk Google via photopin (license)

制約条件をチャンスに変えよう!

アダム・モーガンマーク・バーデン逆転の生み出し方は、とても刺激的な一冊で、ビジネスを成長させたい人にオススメの一冊です。多くのケーススタディから、制約がアイデアを生み出す原動力であることを学べます。

私たちは新規ビジネスをしていると様々な壁にぶつかります。時間がない、金がない、人が足りないなど多くの課題を前に人は行動を躊躇してしまいます。しかし、著者の二人はこういった「制約」によって、私たちはポジティブな力を持てるようになると指摘します。

たとえば、私たちは結婚する際に1人の伴侶を選びます。自分自身に制約をかけることで、感情のエネルギーをその1人に集中させることができるのです。それにより、共白髪の人生を築き、深い親密さと安心を得られるようになります。ゲームでもルールという縛りがあるからこそ、相手との駆け引きに夢中になれるのです。ルールがなくなれば、面白さは色あせてしまうはずです。ビジネスも同じで制約があるから、私たちはそれを解決するために悩みます。その過程の中から斬新で面白いアイデアが生まれるのです。

ビジネスの世界もまた、制約ゆえの豊かな実りにあふれている。しかも、出発点において課されていた制約こそが推進力になったことなど、忘れ去られていることもままある。

グーグルのホームページがシンプルなのにも理由があります。実はあれは狙ったわけでなく、ラリー・ペイジのコーディング技術では、当時あれ以上のことができなかっただけなのです。外注する余裕はなく、作れたのは検索ボックスとロゴのみだったというわけです。他の検索サイトはごちゃごちゃしていたのに対して、シンプルな作りが逆に際立ち、ユーザーから評価されたのです。

ツイッターも140文字という文字制限があったから、オリジナルなメディアになれたのです。140字なら個人が気軽に発信できると思ったから一気に普及したのです。リアルタイムにつぶやくことで他のメディアと一線を画したのです。彼らは制約によって、自分たちのスタイルを生み出しました。このように課せられた制約をチャンスに変えた人たちが成功を手にしているのです。

まずは、制約に対するマインドセットを変えるべき!

制約に直面した時にも野心を萎ませようとしない人々ほど、その状況の中にチャンスを見出す。一方、萎んでしまう人たちは制約を束縛と捉えがちである。

大きな野心、世の中をよくしたいという欲求が探求の旅をスタートさせます。課題を解決するためには多くの問題が目の前に現れます。それを解決するうちに唯一無二の存在になれるのです。一方ビジョンを持たない経営者は制約の厳しさの前で挫折して、すぐに妥協してしまうのです。

制約を前にすると人は3つのタイプに分かれます。
1、被害者 制約に直面した時に、押しつぶされ野心を萎ませてしまう人たち。
2、中和者 志を萎ませようとせず別のやり方でしのぎ、なんとか野心を達成しようとする人たち。
3、変革者 制約をチャンスとして使える人たち。場合によっては、途中で野心をさらに膨らませることさえある。

成功者も最初は被害者で徐々にその階段を登っていきます。野心が大きければ、最終的には変革者となり、チャレンジを続けるうちに、世の中を変えるパワーを持ってしまうのです。

変革者になるためには、まずは自分の可能性を信じることです。置かれた状況を把握し、解決策を生み出す質問をすることで、新たな方法が見つかります。
・過去に同じような経験があるか?
・それを解決することは、個人的にも重要なことだろうか?
・自分のいる組織は、過去に同じような経験があるか?私たち自身のことを物語る時に、そのストーリーが出てくるか?
可能性を信じる人たちを褒めたたえるか?それを高く評価するか?
・組織の内外を問わず、自分の共感できる分野において、同じようにして突破口を見出した人を知っているか?

ネガティブなストーリーに支配されるとそこで終わってしまいます。自己信頼のレベルを上げるためには、隠れているストーリーを発掘したり視点を変えて、語り直したりする必要があるのです。自分にパワーを与える質問によって、私たちの脳は新たなアイデアを生み出します。

あとはPDCAを回し、行動を続けることです。いつもの方法がうまくいかないなら、別のアイデアを探すのです。そして、あきらめないために成功するための質問を繰り返しましょう。
・この困難について、どう感じているのか?感情が刺激されるか?
・覚悟を決めて困難を克服するということは、自分にとって重要だろうか?あるいは、自分よりも組織のほうがそのことをより重要視しているのか?
困難を乗り越えるために別の視点を導入するには、どうしたらいいのか?目標は何なのか?その目標は私たちにどんな意味を持つのか?

リーダーがあきらめたら、そこでプロジェクトは終わってしまいます。そこから抜け出すためにモチベーションを高める質問で危機から脱出しましょう。

ナイキの制約が新たな広告を生み出した!

1980年代の初め、ナイキのCEOフィル・ナイトは、ワイデン+ケネディに自社の広告を任せました。その時に伝えた指示はとても制約の大きなものでした。ナイトは広告が好きではなかったし、信用もしていなかったために、今までの表現を否定します。「広告」に見えたり、「広告」のような感じがしたり、「広告」の匂いがするものはすべて避けるということをルールにしたのです。同じ表現は使わない、モデルも出さないなどナイキの制約は広告会社の常識を超えたものでした。

ワイデン+ケネディはランナーの写真を前に、必死にクリエイティブを考えます。クライアントのためだけでなく、自社の成長のために広告らしくない表現を考えたのです。彼らはビートルズの「レボリューション」を新たなフィットネス・ブームのサウンドトラックとして使用して、物議をかもしました。当時新進気鋭の映画監督だったスパイク・リーと、登場したばかりの超大スター、マイケル・ジョーダンを組み合わせたり、歯の抜けた80代の老人が胸をあらわにしながら毎日17マイルを走る様子を見せることでナイキの存在を際立たせます。誰も見たことがなかった広告がアスリートから評価され、ワイデン+ケネディは成長します。そして、この経験によって、ワイデン+ケネディには、どんなに手に負えない要望にも応えられると信じる企業文化が生まれたのです。

目的を絶えず確認し、そのパワーを使ってなんどもチームに呼びかけることがリーダーの仕事です。
ヤフーCEOのメリッサ・メイヤーは「熱意と洞察力を刺激するには、制約のある状況が必要だ」と述べています。制約に内在する困難が、部下たちのハートに火を付けるのです。

まとめ

制約はチャンスだとマインドセットを変えることで、成功が手に入ります。制約があるからといってすぐにあきらめるのではなく、自分を奮い立たせる質問を繰り返しましょう。それを繰り返すうちに新たな解決策が見つかります。なんども困難を乗り越えているうちに、私たちは成長し、確固たる存在に生まれ変われます。

    

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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