フォトジェニックとノスタルジックで売り上げアップをはかる方法

「懐かしい」という気持ちが沸き上がってくると、人は感情が揺さぶられます。結果として消費につながることが多いのです。特に、社会人になると、自分が子供や学生時代に味わった甘酸っぱい感情がよみがえり、それをもう一度体験したいと思います。そのためには多少のお金は惜しみません。(川上徹也)

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感情を揺さぶり、売り上げをアップする7つの方法

川上徹也氏物を売るバカ2 感情を揺さぶる7つの売り方書評ブログを続けます。 本書には7つの感情を揺さぶる売り方が紹介されています。この「エモ売り7」(感情を揺さぶる売り方7カ条) を実践すると、顧客が感動し、商品を買ってくれるだけでなく、ソーシャルメディアやブログで情報発信し、ファンを増やす手伝いをしてくれます。多くの人に話題になることでメディアにも取り上げられることで、ヒット商品を生み出すことも可能になります。
➀「体験(Experience)」を売る
➁「心動く(Moved)」を売る
③「世界観(Outlook on the world)」を売る 
④「共創・協創(Together)」を売る
⑤「インスタ映え(Instagenic)」を売る 
⑥「ここにしかない(Only one)」を売る
⑦「懐かしい( Nostalgia)」を売る

今日はこの中から「懐かしい」のケーススタディを紹介したいと思います。大阪はインバウンド消費で盛り上がっていますが、エリアによってはこの恩恵を受けられずに苦戦するシャッター街も存在します。大阪のシンボル通天閣に近い「新世界市場」もその一つでした。100年以上の歴史がある全長約100メートルのアーケード街ですが、ほとんどの店のシャッターがしまっています。最盛期に約40の店があったこの商店街も、今では10店舗しか営業していません。多くの人が素通りする寂しい商店街になっていたのです。

そんな「新世界市場」に復活の兆しが見えてきました。ノスタルジーを前面に打ち出す新しい取り組みが功を奏し、客足が戻ってきたんのです。2018年3月から毎週日曜日、「値札のないマーケット」WEEKEND PRICELESS MARKET(略称Wマーケット)」が行われ、多くの人が足を運ぶようになったのです。コンセプトは「シャッター街で遊ぼう!」というもので、ここに来れば、古き良き時代の大阪を味わえます。

日曜日になると、シャッター街は、赤いちょうちんと赤いのれんで彩られ、応募してきた店舗がシャッターの前に出店します。台湾の夜市を参考にして、元の商店街の雰囲気を損なわずに、「インスタ映え」することを目指しました。 アジア雑貨、アクセサリー、革小物、古着、着物、スリランカのチャイ、書家、靴磨き、カリフォルニアロール専門店、コーヒーショップ、グアテマラ産高級チョコレートなど個性的な店が軒を連ねます。

毎回20~30店舗が出店し、毎週異なる店が個性を競っています。フォトジェニックとノスタルジックを掛け合わせることで、このシャッター街に人が戻ってきたのです。

共通点はすべての商品に値札がないことです。Wマーケットの最大の特徴は、お客さんが店主に「これ、なんぼ?」と値段を聞くところからスタートするということ。お店の人と値段交渉することで、作り手の「思い」や商品の「ストーリー」を聞くという新感覚のショッピング体験ができるのです。

値段交渉するというのは、アジアの街ではよく見かける光景ですが、今の日本ではほとんど体験できません。店主が自分の思いやストーリーを熱く語ることで、顧客の心が揺さぶられ、ものが売れていきます。リアルなコミュニケーションで、お互いが納得する買い物を体験することで、顧客がそのお店のファンになります。その体験をソーシャルメディアにアップすることで、Wマーケットが話題になり、メディアにも取り上げられるようになりました。2017年の試験開催が評判を呼び、今では毎週定期開催される人気イベントになったのです。

この企画を考えたのは、トリックデザインの取締役・森田純多氏。ネットで簡単にモノが買える時代だからこそ、作り手と顧客との会話を重視したのです。この新しい体験の場をいくつかの商店街に提案しましたが断られ、この「新世界市場」がようやくトライしてくれたと言います。

2017年に試験的に開催するとこの企画がSNSで話題になり、大勢のお客さんが押しかけ、メディアにも取り上げられました。 さらにシャッター街の他の既存店の売上にもいい影響があったことから、定期開催されることになったのです。ノスタルジックとフォトジェニックと熱い商談が、顧客の心を揺さぶり、商店街が復活したのです。新しい出店者、既存店、顧客が喜ぶまさに三方良しの企画だと思います。サイトの写真を見て、私は子供の頃に毎週出かけた東京大田区矢口の渡しの夜店を思い出しました!

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顧客を喜ばす体験が店とオーナーを活性化する!

このWマーケットには、出店者と顧客を結びつける仕掛けがあります。そのひとつが「リアルクラウドファンディングカード」というもので、顧客が応援したいオーナーにカードを手渡します。このカードをもっとも多く集めると、リアル店舗の開業資金を援助してもらえるという特典が出店者に与えられます。店主同士が競い合うゲーム性が顧客との関係をよくし、ますますファンが生まれるという好循環が生まれたのです。長期的視点に基づき、魅力的な人が集まり、共創することでシャッター街が活性化したのです。

商店街の両端には「投げ銭」を入れることができる寳銭箱のようなものが置かれています。「楽しかった!」「商店街活性化を応援したい!」と思った人に寄付してもらう仕組みで、集まったお金はすべて「商店街の設備修繕費」と「出店者への実店舗開業支援金」に使用されます。Wマーケットの取り組みが優れているのは、「エモ売り7」のすべての要素を取り入れて、現場に「熱」を生み出していることです。ノルタルジックな昭和な空間をベースに、インスタ映えする世界観のある空間を作り上げ(しかもあまりお金をかけずに)、SNSを中心に集客し若者にとっては目新しい買い物体験をさせることで心を動かし誰かに伝えたくさせ、継続のための共創の仕組みを作り上げることで、ここにしかない商店街にしたてあげたのです。

商店街、出店者、集まる顧客の思いが、この商店街を短期間で復活させました。集まった人のエネルギーの力が掛け合わされることで、感動が伝染し、多くの人を巻き込んで行ったのです。心を揺さぶる企画がソーシャルメディアで拡散し、メディアがそれを取り上げることで、より多くの人がこの商店街を訪れるようになったのです。感動を揺さぶる成功方程式をこのWマーケットから学べました。

まとめ

「懐かしい」という気持ちが沸き上がってくると、人は感情が揺さぶられ、お金を使うようになります。そして、私たちはその感動体験をソーシャルメディアで、周りの人に伝えようとします。ノスタルジックとフォトジェニックを組み合わせることで人が集まる仕掛けが作られ、メディアがその輪に加わります。良い顧客体験をデザインすれば、人に伝染する仕組みがつくられ、商品が売れるようになるのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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