NPSの採用で、売り上げがアップする理由

熾烈な競争市場では、企業のあらゆる部門が、顧客からの愛顧を獲得することに全力を傾けなければならない。(フィリップ・コトラー)


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マーケティングは顧客志向でなければならない!

カスタマーサクセスがマーケティング業界で話題になっています。顧客を成功に導くことを目的とし、顧客に積極的に提案する社員が多い会社は成長します。広告会社に入社した30年以上前に私はフィリップ・コトラーの書籍をなんども読み、マーケティングの知識を吸収しました。そのコトラーの「顧客を重視すべき」という言葉を今、改めて思い出し、行動の指針にしています。

コトラーが指摘するように、企業が成長するためには、企業のあらゆる部門、社員が顧客のために全力を尽くす必要があります。社員が顧客のことを考えていないとしたら、何も考えていないのに等しいのです。平均的な企業は年間に10~20%もの既存顧客を失っていることがわかっています。それをカバーするために企業は新規顧客を獲得しなければなりませんが、その獲得コストは既存顧客を維持する場合の5~10倍に及びます。既存顧客の喪失によって失った利益を、新規顧客の獲得によってカバーするのはとても難しいのが現状です。

企業は顧客満足度を上げ、顧客離反率を下げなければなりません。その際、コトラーは市場シェアではなく、顧客を満足させることに注力すべきだと述べています。

多くの企業が顧客満足度よりも、市場シェアのほうに注意を払っている。だが、これは誤りだ。市場シェアは過去に関する指標であり、顧客満足は将来に関する指標である。

コトラーは顧客満足が将来に関する指標だと指摘します。マーケティングは顧客志向でなければなりません。最近では、顧客ロイヤルティを高めるために、ネットプロモータースコア(NPS)を経営指標にする企業が多くなっています。顧客を自社のファンにし、離反させないためにNPS調査を行う企業が増えています。アメリカのアマゾンやアップル、メルセデス、デルタ航空などがNPSを経営指標として採用し、業績を伸ばしているのです。

NPSとは⾃社や⾃社製品・サービスに対する顧客ロイヤルティの総合的な評価を表す指標です。多くの企業は顧客満足度調査を実施していますが、これでは顧客の「満足度」しか把握できません。実は、顧客満足度には過去の体験を数値化しているという欠点があり、顧客の未来の行動や感動体験について知ることはできません。顧客満足度の調査結果から施策を設計してもなかなか売上にはつながらないのです。

NPS が従来の顧客満⾜度調査と異なるのは、自社製品・サービスのブランドの「推奨意向」を測ることができる点です。NPSは顧客の今後の購⼊意向や⼝コミで紹介するなどの未来の顧客行動を調査します。NPSアンケートでは、0〜10の11段階で推奨意向を質問します。10がもっとも推奨度合いが高く、0が最低になります。0〜6を選んだ人は批判者、7〜8は中立者、9〜10は推奨者と位置づけ、スコアを算出します。NPSの数値が高い企業は、顧客に対して優れた製品やサービスを提供しています。顧客との様々なタッチポイントで、良質な顧客体験を提供しているため、スコアが高くなるのです。

スコアが低い場合は各々のタッチポイントで改善施策を実施し、高いタッチポイントではスコアを伸ばす努力を続けることで、NPSはアップします。顧客のネガティブ体験を減らし、ポジティブ体験を増やすことで、売上をアップできるのです。「推奨者」は商品やサービスのファンであり、自分が良いと思ったものは、家族や友人にレコメンドします。その結果、売上が向上するのです。NPSには業績と相関関係があり、そのため多くの企業が経営指標として採用している理由がここにあります。

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価格勝負をやめ、顧客体験を高めよう!

大切なのは常に顧客のことを考えることである。勝者を決めるのは競合他社ではなく、顧客なのである

業界の秩序や自社の利益を重視し、顧客体験を軽視する傾向にあります。目先の売り上げや競合他社に勝とうとするあまり、顧客視点を忘れてしまうのです。業界や競合他社の動向に目を光らせるよりも、顧客を知るための行動を起こすべきです。その方法の一つがNPS調査で、スコアが悪いタッチポイントを社員全員で改善するようにすべきです。

売上アップのために4Pのプライスで勝負する企業を見かけますが、価格を下げるだけでは顧客の指示を得られなくなっています。かつては、他社より少しいい製品やサービスを安い価格で売れば、売上をあげることができました。しかし、価格勝負は一時的に売上を高めることはできても長続きしません。価格で獲得した顧客は自社の本当のファンではなく、他の安売りが登場した瞬間に離れていき、売上が下がるリスクがあるのです。「低価格」で成功する戦略は長続きしないのですから、顧客にフォーカスした商品やサービスを開発し、顧客体験をよくする施策を社員全員で考えるべきです。

価格を設定したからといって、価格を売り物にしてはならない。価値を売り物にすべきなのだから。(ジェフ・べゾス)

一見価格で勝負しているように見えるアマゾンですが、絶えず顧客体験を高める努力を続けています。アマゾンより「すぐれた経験を提供する企業が現れること」をアマゾンは恐れているのです。低価格は一時的な強みでしかないと考え、顧客体験を高める努力を続けましょう。長く優位性を維持するためには、顧客の声(VOC)を聞き、顧客体験をアップさせることです。NPS調査を行い、顧客体験を高める施策を実施する方が、価格で勝負するよりはるかに価値があることなのです。

まとめ

コトラーが指摘するように、企業は顧客にフォーカスし、成長を目指すべきです。最近では、顧客体験を高めるためにNPS調査を実施する企業が増加します。顧客を感動させる体験を増やせば、顧客は家族や友人に推奨してくれることがわかってます。新規顧客を獲得することも大事ですが、既存顧客を喜ばすことで、NPSが高まり、売上もアップするのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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