奥谷孝司、岩井琢磨氏の世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略の書評

習慣化

時間とは、顧客の買い物行動における、「選択→購入→使用」のプロセスである。筆者らは、この一連のプロセスを「顧客時間」と呼んでいる。これまでのチャネル設計では、「購入」という瞬間を最も重視し、これをゴールとする傾向が強かった。しかし、チャネルの主導権は顧客に移っている。(奥谷孝司、岩井琢磨)

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チャネルシフトがマーケティングの鍵

奥谷孝司、岩井琢磨氏の世界最先端のマーケティング 顧客とつながる企業のチャネルシフト戦略を読了しました。アマゾンが顧客の消費行動を変えています。デジタル企業がオフラインのマーケットにシフトすることで、オンラインとオフラインの境界がなくなっています。オフライン企業もオンラインに進出し、2つの売り場で相乗効果を狙う必要が出てきたのです。顧客とのつがりを強化するために。オンからオフ、オフからオンのチャネルシフトを行うことがマーケティングの鍵になっています。

モノが溢れている現在においては、様々なマーケティング施策によって、顧客の「感情」を揺さぶらなければなりません。顧客体験(CX)を高め、企業のファンになってもらうこと重要になってきたのです。主導権を顧客に握られた現代においてはカスタマージャーニーマップを描き、購入前後の時間軸の中のCXを高めることがポイントになります。時間軸に線の視点を取り入れ、顧客時間に寄り添うことを考えましょう。

顧客の買い物行動全体で見れば、購入はゴールではなく通過点に過ぎない。したがって、購入という「点」だけを見つめていても、顧客とのつながりを築くことはできない。購入の瞬間ではなく、その前後を含めた「(購入に)連なるステップにこそ、マーケティングの重要性がある」のである。

オンラインとオフラインの境界が曖昧になり、アマゾンのようなオンライン企業がオフラインに進出しています。彼らは顧客とのつながりを強化することで、マーケティングにイノベーションを起こしています。一方のオフライン企業も様々な施策を打っています。今日は顧客の時間軸を考え、成功しているアメリカの外食企業の「ザ・メルト(THE MELT)」の事例を見ながら、新たなマーケティング戦略を考えていきたいと思います。

サンフランシスコのTHE MELTは既存のオフライン企業に対して、新しい戦い方で挑んでいます。THE MELTは一見どこにでもありそうな普通のファストフード店ですが、購買体験を変えることで顧客から選ばれるチェーンになったのです。彼らは顧客時間の選択段階に、アプリを活用し、顧客のランチタイムの無駄な時間を減らしています。創業者のジョナサン・カプラン氏は、IT業界出身で外食にテクノロジーを取り入れ、顧客体験を変えてしまったのです。

「ランチタイムに、できたてのグリルチーズサンドがすぐ買える」ことがTHE MELTの最大の価値です。彼らはORDER→SCAN→ENJOYという3ステップの時間軸で顧客体験を高めているのです。まず、顧客は来店前にアプリを起動して商品を選択し、「ORDER」を完了します。チーズバーガーやサンドイッチ、サイドオーダーなどから食べたい商品を選んでオーダーすると、最寄りの店舗案内と共にQRコードが付与されます。 店舗に到着したら、アプリに表示されるQRコードを、店頭のリーダーで「SCAN」すれば購入が完了します。店内のモニターで、自分のオーダーが出来上がってくる順番が確認できるようになっています。あとは出来上がったアツアツのグリルチーズサンドを受け取るだけです。商品を待たずに受け取り、オフィス、自宅、店内のイートインスペースで「ENJOY」できるのです。来店前にオンラインで選択を行ってもらい、オフラインの店舗で購入するというチャネルシフトを起こすことで、THE MELTは成功しているのです。

 

「価値のない時間」を大幅に短縮したことがTHE MELTの成功要因

THE MELTのオンラインシステムは、来店前にも決済できます。店舗から数キロ以内にいることが確認できれば、商品を購入できます。顧客に最寄りの店舗に注文してもらうことで、ちょうど食べごろのタイミングで料理を提供するようにしています。

ランチの時間に店頭で並ぶのは大好きだ、という顧客はあまりいない。「店内でゆっくり過ごしたい」「オフィスに持って帰ってから食べたい」など、顧客が求める価値は圧倒的に購入の後にある。店で待つ時間は、できれば短いほうがよい。

THE  MELTのプレオーダー・システムは、顧客にとって価値の少ない待ち時間を大幅に短縮することで、これまでになかった購買体験を実現したのです。彼らは顧客の選択段階に入り込むことで、顧客を自分たちの領域に持ち込んだのです。

通常のファストフードであれば、顧客の検討は街を歩いている時に行われる。ランチなどの際に、オフィスの最寄りの店舗を目指していくこともあるだろうが、その店にたどり着く前に心変わりして、他店へ行ってしまうかもしれない。あるいは店にたどり着いても、そこが混雑していれば、やはり他の選択肢を考えることになる。つまり選択肢の多いオフィス街で、ランチを提供する外食店にとって、来店前に顧客を囲い込むことはかなり難しい。

THE MELTの顧客は、待ち時間が少なくいことを知っているので、躊躇なく来店前に購入を決めてしまいます。待ち時間が少ないという優位性が、彼らの強みになっています。顧客のスマートフォンにアプリというチャネルを埋め込むことによって、顧客との強いつながりを築いているのです。

オーダーのスタイルを変えたことで、外食の店舗の在り方も変わりつつあります。多くのオーダーはアプリで、支払いは店頭でのスキャンで完了するため、THE MELTの店舗のレジカウンターは競合よりも小さくなっています。オーダーを取るためだけの大きなカウンターや、常時レジに張り付いている大勢の店員も必要ありません。店員のタスクも減り、料理に集中できるようになったのです。デジタル化、プレオーダーを採用することで、小規模な店舗でも、回転率を上げ効率的に顧客に対応できるようになったのです。店舗を小さくすることで、出店コストを抑制でき、オフィス街の中心地に出店することが可能になったのです。これがさらに顧客の利便性を上げ、多くの顧客を引きつけるているのです。新たな戦略を考えたことで、THE MELTはプレオーダーによって、効率的な投資で好立地に店を出せ、ブルーオーシャンを手に入れたのです。

THE MELTは顧客の買い物行動をデザインし直すことによって、好立地での出店と、回転率の高い店舗を実現しました。当然、他社もこのプレオーダー・システムを模倣しはじめました。スターバックスは全米でのプレオーダー・システム導入を加速し、すでにモバイルオーダーは全体の9%に達しました。しかし、スターバックスは大型店舗や店員という資産を捨ててまで、「購入に特化した小型・好立地店舗」にすべての舵を切ることはできないはずです。THE MELTはデジタル化による、独自のチャネル設計によって、オンリーワンになったのです。

まとめ

オンラインとオフラインの境界がなくなる中で、マーケティングの役割が変わっています。顧客体験を高めるアイデアを考え、実践することで顧客をファンにできます。顧客時間は購入時だけという常識を捨て、購入前後で顧客を喜ばす体験を考えることで、勝機を見出すことができるのです。

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