スティーヴン・ホーキング氏のビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えようの書評

当然ながら、私は落ち込み、博士号の研究を続ける意味が見出せなくなった。なにしろ研究を終えるまで生きられるかどうかもわからなかったのだ。しかしその後、病気の進行がゆるやかになって、研究への情熱が再燃した。余命の期待値がいったんゼロまで下がったことで、新たな一日一日は思いがけない贈りものとなり、そのとき手にしているものすべてがありがたく感じられるようになった。命あるかぎり、希望はあるものだ。(スティーヴン・ホーキング)


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スティーヴン・ホーキングのマインドセットから私たちが学べること

天才スティーヴン・ホーキング博士はケンブリッジ大学の大学院生だった21歳のときに、ALS(筋委縮性側索硬化症)にかかり、学業に対するやる気を一気に失います。ALSにかかると人は徐々に運動や会話ができなくなり、食事も摂れなくなります。最終的には呼吸もコントロール不能になることをホーキンス博士は知り、悪化する病気の前で苦しみ続けます。しかし、彼は余命の期待値を下げることで、日常に感謝の念を持てるようになります。この感謝の気持ちによって、再びやる気を起こすことに成功します。

そして、その頃、のちに妻になるジェーンと出会います。彼女の信念=ふたりで力を合わせれば私の病に立ち向かえるという思いがホーキングを支えます。

彼女のそんな確信が、私の希望になった。婚約をしたことで、私は俄然やる気になり、結婚するなら仕事を得て、博士号の研究を仕上げなければならないと思った。そしてこのときもまた、ビッグ・クエスチョンが私を駆り立ててくれた。私は猛然と仕事に取り掛かり、そして仕事は楽しかった。

ホーキング博士は折りあるごとに、その時どきの「ビッグ・クエスチョン(誰にも解き明かされていない究極の問の答え)」について、科学者、テック起業家、財界人、政治指導者、そして一般の人びとから意見を求めら、それに対する答えを絶えずアーカイブに残していました。本書ビッグ・クエスチョン 〈人類の難問〉に答えようは、「人類は地球に住み続けるべきか?」「AIは人間を超えるか?」など10の難問へのホーキング博士の答えがまとめられています。

彼はALSによって、普通ではない生き方をしてきたました。頭と物理法則を使って、宇宙や時間の秘密を解き明かしました。彼はその旅の中で人生の真理を見つけます。

地上では、良いときも悪いときもあり、波乱もあれば穏やかなときもあり、成功もしたが苦しみも味わった。金持ちになったこともあれば貧乏になったこともあり、健康な身体を持っていたこともあれば障がいを得もした。賞賛されたり批判されたりしたが、無視されたことはなかった。仕事を通して、宇宙に関する私たちの理解に貢献できたことはとても幸運だったと思う。しかし、私が愛する人たち、私を愛してくれる人たちがいなかったなら、宇宙はうつろな世界だっただろう。その人たちがいなかったら、私にとって宇宙の不思議は失われていたにちがいない。

彼は宇宙というビッグ・クエスチョンという課題を解決することに生きる喜びを見出し、肉体的なハンディなど物ともせず、結果を残し続けたのです。基本粒子の集まりにすぎない人間が、自分たち自身を支配する、そしてまた私たちのこの宇宙を支配する法則を理解できるようになったという事実は、偉大な功績だとホーキング博士は指摘します。私たちはこの力を使うことで、解決できていない難問を解決できるはずです。

 

ビッグ・クエスチョンに答えることで人間は進化する。

地球上には、これら以外にも大きな問題が、答えなければならないビッグ・クエスチョンがある。それらの問題に対して答えを見つけるためには、科学を理解し、興味を持って、解決に向けて力を注ぐ、新しい世代が必要になるだろう。過剰に増えつづける人口に、どうすれば食料を供給できるだろう?どうすれば、清潔な水を供給し、再生可能なエネルギーを作り出し、病気を予防し、さらには治癒させることができるだろう?地球規模の気候変動が進むペースを落とすことはできるだろうか?私は、科学とテクノロジーがこれらの問いに答えを与えてくれることを望んでいるが、そうして得られた答えを実際に応用するためには、知識と理解のある人間が必要になるだろう。

「人はみな、未来に向かってともに旅するタイムトラベラーだ」とホーキング博士は述べています。私たちが向かう未来を、誰もが行きたいと思うような未来にするために、力を合わせるべきだと博士は言います。難問は解決できると信じて、ビッグ・クエスチョンの答えを探す旅を続けることで、人類は進化できるのです。

本書の〈10のビッグ・クエスチョン〉は以下で、ホーキング博士は自説をわかりやすく語っています。
1 神は存在するのか?
2 宇宙はどのように始まったのか?
3 宇宙には人間のほかにも知的生命が存在するのか?
4 未来を予言することはできるのか?
5 ブラックホールの内部には何があるのか?
6 タイムトラベルは可能なのか?
7 人間は地球で生きていくべきなのか?
8 宇宙に植民地を建設するべきなのか?
9 人工知能は人間より賢くなるのか?
10 より良い未来のために何ができるのか?

神が宇宙をつくったのではないというホーキング博士の言葉を読むことで、宇宙や時間の概念が変わります。神がすべてを作ったという昔ながらの考え方に対し、博士は宇宙を作るための3つの要素を紹介します。 物資、エネルギー、空間の3つが宇宙を生み出したのです。エネルギーという空間はビッグバンが起こった時に自発的に生じました。 そしてこのビッグバンとともに時間が始まったのです。

宇宙を理解することに一生を捧げたホーキング博士は「うつ向いて足元を見るのではなく、顔を上げて星空を眺めよう」と言います。いま目にしているものを理解しようと努め、宇宙はなぜ存在するのか思索することを忘れないようにしたいものです。人生がどれだけ困難であろうと、博士のように好奇心持ち続け、あきらめなければ、私たちは必ず何かを成し遂げられるのです。

彼が残した言葉を読み、若い世代が大きな問題を解決するために、学び続ける環境を大人世代は真剣に考えなければなりません。2018年3月14日に亡くなった彼の意思を引き継ぐためにも、より多くの人に本書を読んでもらえればと思います。

まとめ

ホーキング博士はALSという病に負けることなく、好奇心を失わずに宇宙を身近な存在に変えてくれました。宇宙、人類の進化、神、時間についてのホーキング博士の考えや彼のポジティブな生き方を学ぶことで、人生をより楽しめるようになります。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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