西野精治氏の睡眠障害 現代の国民病を科学の力で克服するの書評


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睡眠障害 現代の国民病を科学の力で克服する
著者:西野精治
出版社:KADOKAWA

本書の要約

睡眠負債は確実に人の体を蝕みます。1日24時間という時間は変わりません。そのなかで、自分は何の時間を重視し、優先するかを明確にしましょう。その際、睡眠時間を軽視してはいけません。仕事を優先しすぎるのをやめ、睡眠時間を確保することで、脳と体の健康を守れます。

あなたの健康を蝕む、睡眠負債とは何か?

慢性的な不眠状態が続き、睡眠不足が蓄積されていくことを、「睡眠負債」と言います。(西野精治)

日本人の5人に1人が睡眠にトラブルを抱えているといわれていますが、スタンフォード大学で睡眠研究に取り組む著者の西野精治氏は、「睡眠負債」のリスクを指摘します。

スタンフォード大学のデメント教授は「睡眠負債」という表現で、睡眠不足が続くことに警鐘を鳴らしています。1990年代から教授は「眠りの借金が溜まると、脳や体にさまざまな機能劣化が見られる」と現代人に対して、睡眠負債がリスクであることを訴え続けました。

睡眠不足は、”眠りの借金”で、いつかは返済しなければなりません。2~3日睡眠不足が続いたくらいなら、借金は少ないですからいつもより少し長く眠れる日があればすぐに返せます。しかし、3~4週間も睡眠不足が続いて借金がふくらんでしまうと、1~2日いつもより長く寝ても返せなくなります。

睡眠不足が続いて、借金が雪だるま式に増えていくと、人は睡眠負債を抱え、健康に悪影響を与えます。休日にいつもより長く寝ても、目覚めが悪いとか、すっきりしないとか、日中に眠気が出てくるという人は、眠りの借金が溜まってきている可能性が十分にあります。

健康な8人を連日14時間、無理矢理ベッドに入れた際の睡眠時間の推移に関して、1990年代に行われた実験を紹介します。実験前の被験者8人の平均的な睡眠時間は7.5時間でした。彼らに1日中、14時間ベッドの上で好きなだけ寝てもらうようにしたところ、1日目はみな13時間、2日目もみな13時間近く眠っていました。ところがその後は長く眠ることは無理で、徐々に睡眠時間が短くなり、一週間もすると、5時間も6時間もずっとベッドの上で起きているという状態になります。結局、3週間後に睡眠時間は平均8.2時間に固定しました。この8.2時間がこの8人の生理的に必要な睡眠時間だと考えられます。

長い期間、体が必要とする睡眠時間より毎日40分短い睡眠時間であった彼らは「毎日40分の蓄積した睡眠負債」を抱えており、この長年の睡眠負債を返すためには、毎日好きなだけ寝ても3週間かかったということがわかりました。

よくいわれる寝だめで、睡眠負債は返済できないのでしょうか?

残念ながら、睡眠は貯蓄ができません。「週末に寝溜めしておこう」とか、「来月は忙しくなるから、今月はたっぷり寝ておこう」などという行為をしても、ほぼ無意味なこと。仮に、週末にたっぷり寝たとしても、それは、それまで溜まっていた眠りの借金をほんの少しだけ返済できたに過ぎません。

ペンシルベニア大学などの研究チームが行った研究で、知らないうちに蓄積されていく睡眠負債の怖さがよくわかる実験があります。その実験によると、「6時間睡眠を2週間続けると、集中力や注意力は2日間徹夜した状態とほぼ同じレベルまで衰える」ということが明らかになりました。2日も徹夜すれば、間違いなく疲れや眠気で頭がぼーっとして働きが鈍くなることを自覚します。しかし、6時間睡眠を2週間続けた人は、自分の脳が正常に働いていないことに気づきません。そこに、睡眠負債の怖さがあるのです。睡眠不足が常態化することで、失敗や事故のリスクを現代人は高めています。

昼寝で足りない睡眠を取り戻せ!

結論から言うと、睡眠負債を解消する根本的な方法は、まだわかっていません。睡眠が足りているのか足りていないのかを、脳がどうやって認知しているのかが解明されていないからです。いま言えるのは、きちんとした睡眠習慣を身に付け、個人に必要な睡眠時間を十分に確保することです。眠りの借金は、やはり、きちんとした眠りで返済するしかないのです。

睡眠負債を解消するためには、量を確保することが理想ですが、睡眠時間がとれない場合には質にこだわりましょう。「すっきりした」とか、「よく眠れた」という満足感があれば、睡眠の質は満たされています。

最近では、昼寝の効用も科学的に実証されてきました。仮眠を取った後の反応性や認知機能などを調べたところ、パフォーマンスが上がることがわかってきました。短時間の仮眠でパフォーマンスを上げることを「パワーナップ」といい、アメリカでは一般的になってきました。

日本でも昼寝に対する考え方が変わりはじめ、一部の学校や企業で短時間の昼寝を導入されています。パワーナップを行うことで、午後の授業や仕事に前向きになり、成績が向上したという報告もあります。厚生労働省も、「健康づくりのための睡眠指針2014」のなかで、「午後の時刻に、30分以内の短時間が望ましい」と昼寝について言及しています。

昼寝は30分以内がいいというのは、それ以上長くなると深い眠りに入って、目覚めてもぼーっとして、なかなか頭が働かなくなるからです。そのような頭が働かなくなる状態を、「睡眠慣性」と言います。また、昼間に長く寝てしまうと睡眠圧が放出されてしまい、再び睡眠圧が溜まるまでに時間がかかり、結果的に夜の就寝時間が遅くなります。

30分未満のパワーナップならリフレッシュができますし、深い睡眠に入らないので睡眠慣性が出てくることもありません。昼寝をする人のほうが、しない人より認知症の発症率が低いし、糖尿病の発症も低くなるという研究報告もあります。

睡眠負債の返済を目的とするなら、パワーナップは午後、眠くなってきた時間に寝るようにするとよいと著者はいいます。昼間の眠気は、生体リズムによるものと、睡眠圧の蓄積の双方からの眠気と考えられます。、「脳と体を休ませるために睡眠を確保しなさい」という体からのサインが出たら、30分程度の睡眠を取りましょう。短時間でも深い睡眠が取れると睡眠負債の返済に役立つことになります。

睡眠負債は確実に人の体を蝕みます。1日24時間という時間は変わりません。そのなかで、自分は何の時間を重視し、優先するかを明確にしましょう。その際、睡眠時間を軽視してはいけません。仕事を優先しすぎるのをやめ、睡眠時間を確保することで、脳と体の健康を守れます。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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