人は生まれながらにして貴賎・貧富の別なし。ただ学問を勤めて物事をよく知る者は貴人となり富人となり、無学なる者は貧人となり下人となるなり。(福沢諭吉)
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「カネと権力」のない非モテが日本で増える理由
橘玲氏の上級国民/下級国民の中に、有名な福沢諭吉の言葉が紹介されています。この言葉は一般的には、「学問に勤めれば成功できる」という意味だと思われています。しかし、「『貧人』『下人』なのは、自ら学ばななかったためだという解釈もできます。教育の本質は「上級/下級」に社会を分断する「格差拡大装置」であることを理解しないと、人の幸福度を下げてしまうのです。 調査の結果、学歴が幸福度に密接に関係していることがわかりました。そして、この学歴の差が恋愛も左右すると橘氏は指摘します。
大規模な社会調査で明らかになったのは、現代日本社会は「大卒/非大卒」の学歴によって分断されており、もっともポジティブ感情(幸福度)が低いのは高卒・高校中退の非大卒の壮年男性であり、次に低いのは非大卒の壮年女性ですが、非大卒の男性の若者も、主観的自由の意識を除けばポジティブ感情がきわめて低いという現実でした。それと同時に、(ポジティブ感情が高いはずの)大卒グループのなかで、若い男性の幸福度がもっとも低いという奇妙な事実も明らかになりました。なぜ男の幸福度はこんなに低いのか。ここでは、「上級国民/下級国民」を考察するうえで避けて通れないこの問題を突っ込んで考えてみたいと思います。ちなみに、このテーマにはすでに名前がつけられています。それが「モテ/非モテ」です。(橘玲)
男性は甲斐性(経済力)によって、恋愛できるかどうかが決まると言っても過言ではありません。甲斐性がなければせいぜい1人の女性としか関係が作れません。男女の数が同数なら(実際には多くの地域で男の方が多い)、小学生生涯を独身で終える男が大量に生まれてしまいます。
男が「階級」を過剰に気にするのは、それが「モテ」に直結するからです。女性がモテる最大の要素は「若さ」で、男の場合は「カネと権力」すなわち共同体内での地位であることが、多くの調査から明らかになっています。
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インセルの反乱とは何か?
かつての日本では、「30代になれば誰もが結婚する」のが当たり前でした。日本人男性の未婚率は80年代あたりから上昇し、2015年には35.0%となり、男性の3人に1人が40手前まで独身という状況が生まれています。それにともなって女性の未婚率も上昇しましたが、こちらは23.9%と4人に1人にとどまっています。
生涯(50歳時)未婚率も男性23.4%に対して、女性14.1%(2015年)と差が生まれています。高度経済成長以降日本人が豊かになったため、「結婚しない」「子どもをつくらない」生き方が可能になりました。しかし、豊かさが同じなら、男女の未婚率は同じペースで上がっていくはずですが、男性の未婚率だけが高くなっています。
男女の数がほぼ同数だとするならば、答えはひとつしかありません。一部の男が複数の女性と結婚しているのです。日本も他の欧米諸国と同じく2人以上の妻を持つことはできず、かつて一般的だった「妾」や「二号さん」も社会的に許容されなくなりました。その一方で離婚率は上昇し、生涯で2回、3回と結婚することも珍しくなくなりました。 このとき、一部の男性は未婚の(若い)女性と再婚し、離婚した女性は再婚せずに母子家庭のまま暮らすと考えれば、男女の未婚率のちがいが説明できます。そしてこれは、欧米や日本のような先進国で共通して起きている現象です。一夫多妻というのは、同時に複数の女性を妻にすることです。先進国で増えているのは、結婚と離婚を繰り返す「事実上の一夫多妻」です。
成功している一部の上級国民は、合意のうえで慰謝料を支払い独身に戻ることが可能です。彼らは結婚と離婚を繰り返し、「事実上の一夫多妻」を実現しているのです。 社会的・経済的地位のある男性は、「持てる者」であることによって「モテる」状態を生み出しています。
結婚市場においても上級国民と下級国民が分断され、学歴のない非モテが男性の未婚率を押し上げているのです。
非正規やフリーターなどビジネスで成功できない「持たざる者=下級国民」は共同体から排除され、恋愛もできず、彼らは居場所を失っています。
男も女もすべてのひとが自らの意思で結婚・離婚する自由恋愛の社会では、マジョリティであるはずの男性が、必然的に「モテ=持てる者(上級)」と「非モテ=持たざる者(下級)」に分裂することになったのです。 日本社会の主流派(マジョリティ)は「男性」ですが、そこでは「モテ(持てる者)」と「非モテ(持たざる者)」の分断が進んでいます。
男性のアンダークラスを構成する「非モテ」は金も権力もない「持たざる者」で、女性からも関心を持たれない存在になっています。
SNSの普及によって、(「リア充」などと呼ばれる)「モテ」が可視化されたことによって、「非モテ」との格差はますます拡大しています。「非モテ」の男は、世界じゅうの「モテ」の投稿を見ることで、日々格差を実感させられているのです。
人ロ10万人中の自殺者数は男が23.2人、女が10.1人で倍以上の開きがあります(2018年)。内閣府の「ひきこもりに関する実態調査」によれば、ひきこもりの男女比は4対1になっています。こうした傾向は日本だけの現象ではなく、欧米でも同様の傾向が見られます。
ネットにはこういった社会的弱者になった男性の「権利を主張する女性」への罵署雑言(ミソジニー)があふれています。差別される「非モテの男」がネットで、フェミニストへの攻撃をしています。
男性優位社会のなかで女性がさまざまな差別を被っていることは間違いありませんが、それと同様に非モテの男も、男社会のヒエラルキーの最下層に追いやられ、存在そのものを全面的に否定されるような過酷な状況に追いやられています。そんな「非モテの男たち(下級国民)」にとって、「モテの男(上級国民)」とすべての女は自分たちを抑圧する”敵”にしか感じられないのです。
アメリカでも日本でも、非モテの男性が反乱を起こしています。インセルの反乱と呼ばれるテロが目立つようになりました。歩行者を次々はねた10人を死亡させたアレック・ミナシアン容疑者は、自らをインセルと名乗り、「インセルの反乱」をフェイスブックに投稿してました。インボランタリー・セリベイト(Involuntary celibate、不本意の禁欲主義者)、=インセルが先進国で増え、テロを引き起こしているのです。
彼らは勝ち組や女性に対する嫌悪をソーシャルメディアに投稿し、テロを起こしたインセルをヒーローとして崇めています。先進国で稼げなくなった若者たちが、結婚できずに孤独を感じることがテロの原因になっていたのです。勝ち組優先の社会を創り出すことで、社会的弱者になった男性たちが反乱を起こしているのです。
まとめ
アッパークラスの非モテの男性たちが、社会から差別されています。自殺やひきこもりの増加も非モテの男性たちの絶望が原因になっています。彼らの一部は過激な行動に出て、インセルの反乱を起こしています。恐ろしいことに持てるものたちを、ターゲトにテロを起こしているのです。
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