書評 橘玲氏の上級国民/下級国民

ゆたかな社会における幸福とは、究極的には、愛情空間が満たされることだからです。「上級国民」とは「モテる(持てる)者」であり、「下級国民」は「モテない(持たざる)者」なのです。(橘玲)


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下級国民が日本で増加する理由

橘玲氏の上級国民/下級国民が興味深い内容だったので、今日はこちらを紹介します。バブル崩壊後の平成の労働市場が「下級国民」を増やしました。日本だけでなく(先進国を中心に)世界じゅうで「上級国民/下級国民」の分断が進んでいますが、日本にはある特殊要因がありました。

「知識社会化・リベラル化・グローバル化」という巨大な潮流のなかで、世界が総体としてはゆたかになり、ひとびとが全体としては幸福になるのとひきかえに、先進国のマジョリティが「上級国民/下級国民」へと分断されました。先進国の若者の生活レベルは低下していますが、日本では団塊世代の雇用を守るため、若者が犠牲になったのです。

日本は平成の時代に失政を繰り返し、国力を落とし続けました。その結果、一人当たりGDPはアジアの主要国よりはるかに低くなり、もはや先進国とは言えないレベルに落ち込んでいます。

2018年の日本の一人当たりGDPは世界26位で、アジアでもマカオ(3位)、シンガポール(8位)、香港(17位)に大きく水をあけられ、いまや韓国(31位)にも追い越されそうです。主要7力国では首位から6位に転落し、かつては世界の15%を占めていたGDPも30年間で6%に縮小しました。日本経済が低迷をつづけた30年のあいだに、グローバル化の恩恵を受けて、中国・インドを筆頭に新興国が国民のゆたかさを大きく伸ばしました。訪日観光客が増えて喜んでいますが、これはアジアの庶民にとって日本が「安く手軽に旅行できる国」になったからです。すべての日本人が、まずはこの「不愉快な事実(ファクト)」を直視すべきです。

日本人の生産性も低下してます。日本の労働者が生み出す一人当たりの利益(付加価値)は8万4027ドル(約879万円)で、アメリ力の労働者(12万7075ドル)の66%しかなく、OECD(経済開発協力機構)加盟国36力国中21位、主要先進7力国ではデータが取得可能な1970年以降、最下位がつづいています(2017年)。

生産性と賃金のあいだには、頑健かつ強い正の相関関係があります。生産性の高い国ほど国民の平均賃金が高いし、生産性の高い企業に勤める従業員ほど賃金が高くなります。逆にいえば、日本がどんどん貧乏くさくなった理由は、「他国に比べて生産性が低いから」なのです。

PIAAC(ピアック)の調査によると、仕事に必要な「読解力」「数的思考力」「 ITを活用した問題解決能力(ITスキル)」などで、日本人はほぼすべての分野で1位となっています。海外の労働者に比べて能力が劣っていないのに、生産性がきわめて低いとすれば、それは日本人の働き方、あるいは日本の社会の仕組みそのものが間違っていると考えるしかありません。

そして、日本のサラリーマンは世界(主要先進国)でいちばん仕事が嫌いで会社を憎んでいることもわかっています。私たちは世界でいちばん長時間労働しており、それにもかかわらず世界でいちばん労働生産性が低いということになります。日本人は平成の間に不幸な人たちを増産してきました。特に若い世代が割りを食い、日本の未来をより暗くしているのです。

これがかつての経済大国・日本の「真の姿」です。平成の30年間、この国では右(保守派)も左(リベラル)もほぼすべじゆそての知識人が「ネオリベ」や「グローバリズム」に呪謁の言葉を投げつけ、年功序列・終身雇用の日本的雇用慣行こそが日本人を幸福にしてきたとして、「(正社員の)雇用破壊を許すな」と叫びつづけてきました。事実(ファクト)に照らせば、こうした主張はすべてデタラメです。日本的雇用=日本の社会の仕組みこそが、日本人を不幸にした元凶だったのです。

平成の日本の労働市場では、中高年(団塊の世代)の雇用が守るために、若者(とりわけ男性)の雇用を破壊してきました。アメリカでは中小企業や社齢の若いベンチャー企業が多くの雇用を創出しましたが、日本は開業率が極端に低く、新規雇用は増加しませんでした。

日本経済の低迷の原因は、「日本市場に魅力がないから」ということになります。会社を「正社員の運命共同体」にする前近代的な日本経済の仕組みでは、正社員だけを過剰に保護することで労働市場の流動性がなくなり、会社は「いったん入ったら出られない」タコツボと化しているのです。金融危機や東日本大震災のような外的ショックが襲うとたちまち「就職氷河期」になり、若者が雇用から排除されてしまいます。

このような社会でリスクをとってビジネスしても成功が見込めないため、開業率は低く、外資系企業は参入しようとせず、生産性は高い大企業は海外に出て行ってしまいました。これが、平成の30年で日本経済が行きついた無残な姿なのです。その結果、若者たちは社会的弱者になり、非正規社員や引きこもりが増えました。下級国民は団塊の世代を守るために行われた失政によって生まれたのです。

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下級国民の増加が令和の時代を暗くする?

マスコミも含め日本の企業や官庁、労働組合などを支配しているのは「日本人、男性、中高年、有名大学卒、正社員」という属性を持つ”おっさん”で、彼らが日本社会の正規メンバーです。そんな”おっさん”の生活(正社員共同体としての会社)を守るためには「外国人、女性、若者、非大卒、非正規」のようなマイノリティ(下級国民)の権利などどうなってもいいのです。

日本では上級国民を守る政治が続いています。政権を維持するためには、人口の多い団塊世代に支持される政策を政治家たちは行います。彼らは下級国民の存在を無視するような政治を今後しばらく続けるはずです。

金融広報中央委員会の家計調査(2018年)では、「金融資産を保有していない」と回答した割合が60代で22.0%、70歳以上で28.6%もいます。70歳以上の人口は2500万なので700万人が貯蓄なしで暮らしていることになります。

その一方で、世帯別の金融資産保有額が2000万円以上は60代で28.2%、70歳以上で27.9%となっています。ここからわかるのは、高齢世帯が、金融資産をほとんど保有していない3割と、多額の金融資産を持つ3割に二極化しているという実態です。 高齢化が進むにつれて、社会保障に依存する国民の割合は高くなります。このひとたちは年金がないと生きていけませんから、年金改革が政治家にとってはタブーになっているのです。改革が進まなければ、若者世代が相変わらず犠牲となり、令和の時代に下級国民がますます増加するはずです。

この出来事から、これから始まる令和の姿が確実に予想できます。平成が「団塊の世代の雇用(正社員の既得権)を守る」ための30年だったとするならば、令和の前半は「団塊の世代の年金を守る」ための20年になる以外にありません。 この持久戦に耐え抜けば「下級国民」があふれるより貧乏くさい社会が待っており、失敗すれば日本人の多くが難民化する「国家破産」の世界がやってくる。これが、私たちが生きることになる令和の日本なのでしょう。

平成の時代になった「下級国民」の若者たちは、今後も団塊の世代の犠牲になる可能性が高いのです。政治家や官僚は年金や医療費改革を抜本的に行わず、対処療法でしのぐはずです。その結果、「下級国民」の収入は、団塊世代に吸い取られていきます。「上級国民」の幸福のために、下級国民は犠牲を払い続けると著者は指摘します。

30年前に政治家が改革を決めていれば、このような問題は起こらなかったかもしれません。人口問題を予測できていたのに関わらず、政治家も官僚も団塊の世代を守ることを選択したのです。この結果、令和の時代は下級国民が新たな課題になるはずです。本書を読むことで、日本の厳しい現実を再認識できます。

まとめ

「団塊の世代」を優遇することで、日本の若者たちは下級国民にならざるを得ませんでした。平成の時代は団塊の雇用を守る政策によって、若者の雇用が犠牲になりましたが、令和の時代は団塊の年金や医療費のために、下級国民の収入が吸い取られていくのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

 
●複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。

●多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。

●著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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