ブラブラカーか成功した理由は、「信頼」。

ブラブラカーはフランスで2006年に立ち上げられたスタートアップで、そのコンセプトは比較的単純だ。運転者がこれから旅行する場所までの車の空席を「売り出す」。だが、請求できる料金はガソリン代と有料道路の代金まで。利益を出すことは禁じられている(ルール違反になる)。これならどちらにとっても都合がいい。乗客は割安に旅ができるし、ドライバーは旅費を捻出できる。ブラブラカーという名前も地域奉仕っぽい響きがある。ある意味では奉仕とも言えるが、ビジネスでもある。(レイチェル・ボッツマン)

ブラブラカーというシェアリングサービスが人気!

ブラブラカー(BlaBlaCar)というシェアリング・サービスをご存知でしょうか?私はこの面白いサービスをレイチェル・ボッツマンTRUST 世界最先端の企業はいかに〈信頼〉を攻略したかで知りました。サイトを見るとフランスだけでなく、イタリア、東欧やブラジル、インドなどで使えることがわかります。

このブラブラカーの企業価値は2017年時点で12億ポンドになっています。ブラブラカーは旅費の約15パーセントを予約手数料として顧客から受け取っています。ブラブラカーのビジネスモデルは遠距離の移動の旅費の節約で、移動サービスのウーバーやグラブとは競合しません。

ブラブラカーとウーバーの最大の違いは価格設定だが、ブラブラカーの競争相手はそもそもタクシーではない。旅行の平均距離は約320キロと長く、飛行機のエコノミークラスや電車を直接脅かすビジネスだ。

41歳の共同創業者、フレデリック・マゼラが車の空席の市場を作ろうと思いついたのは2003年12月のことでした。 当時パリで仕事をしていたマゼラは、クリスマスに帰省すると家族に約束していましたが、田舎のヴァンデ地方への帰省の予約をしていませんでした。

電車は満席で、車は持っていないため、彼は妹に2時間の回り道をさせて迎えにきてもらうことにしました。冬の夜に車を運転しながら、ほとんどの車にひとりしか人が乗っていないことに気付いたのです。一人乗りの乗用車は無駄でしかないと考えた彼は、車の空席を掲載して、電車と同じように簡単に予約できるアイデアをと思い付きました。意外なことに、競合は存在しませんでしたが、彼が実際に行動に移したのは、3年後の2006年のことでした。

ブラブラカーはユーザーの信頼で飛躍した!

写真や音楽や日々の考えをシェアできるなら、車の座席もシェアできないはずはない。(フレデリック・マゼラ)

彼らの最初のサイトはあまり良いものではなく、ユーザーブロフィールもなければ、レビューもレーティングもありませんでした。ドライバーがメールと電話番号を掲載し、同乗者を募る仕組みになっていました。それを見た人がドライバーに個別に連絡し、値段や条件を交渉していたのです。この初期のモデルは顧客から信頼を得られず、成功しませんでしたが、マーケットは巨大であることがわかりました。

フランスだけでも、大都市間で年間約10億席が空のまま移動していましたし、150キロを超える旅行は年間7億件以上もあったのです。ここから彼らのプラットフォームがそれなりに注目されるまでに、実に10年以上の歳月がかかりました。

著者のレイチェル・ボッツマンは彼らのサービスには信頼が足りなかったと指摘します。

人々はこの新しい旅の方法を受け入れるほどの心の準備が整っていなかった。そこまでの信頼の飛躍はまだできなかった。初期のモデルにはある決定的なものが、人間的な何かが欠けていた。ドライバーと同乗者のマッチングの問題に注目するあまり、信頼の問題を解決できていなかったのだ。

2007年、マゼラはインシアード・ビジネススクールのMBAプログラムに入学しました。そこで、現COO(最高業務責任者)になるニコラス・ブルッソンに出会い、このビジネスをベンチャーコンテストに出すことにしました。結果は残念ながら4位でしたが、その時の審査員の最大の懸念が「信頼」だったのです。親が子供に教えるルール「見知らぬ人の車に乗り込むな」が事業のハードルになっていました。

会ったこともない人同士を信頼させて、車に同乗するまでに持っていくのは、至難のわざだ。基本的にはヒッチハイクと同じだが、それを計画し、相手を信頼し、おカネを支払うようなサービスに変えなければならない。とはいえ、最初の問題は個人の信頼ではない。つまり、人がお互いを信頼し合うところではない。最初の問題は一般的な信頼を築くこと、つまりどうしたらこのアイデアそのものを信頼してもらえるかという点にある。

彼らのユーザーは度々、予約をドタキャンしていたのに、それに対する罰則はありませんでした。当時、同乗者はドライバーのドタキャンを見越して複数の予約を入れていましたし、ドライバーもいいかげんな乗客を見越して多めに予約を受けていたのです。ドライバーとユーザはお互いを信じていなかったのです。

彼らはこの問題を解決するために、2011年、オンライン決済を導入しました。乗客は予約時に前払いで料金を払うことになったのです。これで車のなかで現金を手渡しする気まずさもなくなり、予約も保証されるようになりました。この決済の導入で、キャンセル率は35パーセントから3パーセント弱に激減しました。

これをきっかけに、ブラブラカーのサービスは本格的に広がりはじめました。オンライン決済が信頼の阻害要因を取り除いたことで、ユーザーが一気に増加しました。2017年4月時点で、ブラブラカーは22力国で毎四半期1200万人を超える乗客を運んでいます。つまり、毎月ユーロスターよりも(四半期につき250万人)、英国航空よりも(四半期に付き1000万人)、多くの乗客を運んでいるのです。

ブラブラカーは、オンライン決済という新たなテクノロジーを導入することで、ユーザーの信頼を勝ち得、ビジネスを軌道に乗せることができました。

まとめ

ブラブラカーはフランスのシェアリングサービスですが、顧客がキャンセルを繰り返すうちは成功できませんでした。彼らは決済システムを導入することで、車の中で支払う気まずさが減り、キャンセル率も激減しました。テクノロジーを導入し、信頼を勝ち得ることで、ブラブラカーの事業は軌道に乗ったのです。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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