書評 クリストフ・モリンとパトリック・ランヴォワゼの売れる脳科学

私たちの周りには、他人を説得しようとするメッセージがあふれかえっているが、あまりに多いため、その99%は無視されてしまう。メッセージは、激しいシャワーのように私たちの脳に降り注がれているのだ。(クリストフ・モリンとパトリック・ランヴォワゼ)


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ニューロマーケティングが効果がある理由

クリストフ・モリンパトリック・ランヴォワゼは、脳科学とマーケティングの研究を20年以上行ってきました。彼らは消費者の心を動かすのは、レプティリアン脳(原始脳)であることを発見したのです。今日は彼らの売れる脳科学から、マーケティングのヒントを学んでいきます。

原始脳と理性脳・両方のシステムの活動を測定することで、マーケティングや広告の刺激(メッセージに含まれる刺激要因)が脳全体に及ぼす影響がわかりました。実は、説得のプロセスをコントロールするのは理性脳ではなく原始脳だったのです。原始脳には言語機能はなく、ほぼ無意識のうちに活動します。ユーザーの脳内では目に見えないクリックが行われ、商品を購入しています。

マーケターはこの事実に気づき、ニューロマーケティング調査によって、消費者行動を分析すべきです。ニューロマーケティング調査は、マーケティング刺激に反応して脳内で生じる生物的、生理的、神経的な変化を観測するという点で、従来の調査方法よりもはるかに優れているのがその理由です。

著者たちはSalesBrain社を設立し、クライアントの課題を脳科学的アプローチで解決しています。北アフリカで最大の銀行であるワファキャッシュは「財布のシェア(1人の顧客が支出する金額に占める自社の割合を表す指標)」を調査しましたが、経営陣は、従来型の調査では、顧客の正直な考えは得られないだろうと判断しました。彼らは効果的な広告コミュニケーション戦略を策定・展開するため、ニューロマーケティング調査を実施したのです。自分たちがまだ把握していない顧客の考えを引き出すためにSalesBrainと以下の調査を行いました。

顧客と顧客ではない人を対象に24項目の定性調査を行い、それを音声分析しました。音声分析ソフトウエアは約20の音声パラメータを抽出し、ストレスレベル、認知負荷、悲しさなど、対象者の音声の感情的な変数を明らかにしました。この音声分析を通して、ワファキャッシュは、自社サービスに対する顧客の感情について、それまでよりも客観的な見解を得ることができたのです。多くの顧客が欲求不満や苛立ちを抱いていることが明らかになり、銀行は顧客の感情をより深く理解しました。経営陣は、それをもとに新たな広告キャンペーンを策定し、成功を手に入れたのです。

ニューロマーケティングはどんなメッセージが脳に響くかを徹底的に明らかにします。ニューロマーケティング調査で実証された科学的で厳密なモデルに従い、メッセージを作成すれば、マーケティングは成功します。顧客を説得し、商品やサービスを購入してもらうためには、原始脳と理性脳のボトムアップを狙う必要があります。

NeuroMapでは、メッセージが、脳の最下部一原始脳一に真っ先に届かなければ、説得はうまくいかないことを示している。原始脳は感情・視覚・触覚に訴える刺激に反応し、説得の努力の成否を左右する。

ニューロマーケティングで開発したメッセージによって、原始脳の「関与」を促せます。メッセージは脳の上部に広がり、情報を連続的に処理し、前頭葉での意思決定に影響を及ぼします。特に顧客の痛みを診断すると、顧客行動に影響を及ぼす多くの心理的要素の中から、もっとも重要な意志決定要因が見つかります。

スターバックスは自分の欲しい飲み物を提供してくれる会社ですが、成功要因は別にある著者は言います。多くの人は、家庭モードから職場モードに気分を入れ替える「過渡的な」環境がないという痛みを持っています。そこでスターバックスCEOのハワード・シュルツは、サードプレイスというコンセプトを打ち出しました。サードプレイスとは、家でもなく職場でもない避難場所のようなものです。この独自のポジショニング戦略によって、同社は数百万もの人々の日常的な痛みを取り除いて大成功を収め、世界70力国以上で2万4000を超す店舗を展開しているのです。

説得力のあるストーリーを語れ!

結局のところ、最も大切なのは物語だ。予測不能で、現実的で、興味深い物語。良い物語を作ろう。(ジェームズ・ダシュナー)

脳を反応させる最も効果的なメッセージを作るには、6つの「説得の元素」に従って構成することが重要です。1、つかみ
つかみは感情的な反応をすぐに引き起こすため、相手はあなたの製品やサービスに脳のエネルギーを向けることができます。短く効果的なつかみを考えましょう。
2、主張
製品を購入すべき理由を3つにまとめましょう。製品やサービスの固有なメリットを書き出し、それに基づきメッセージを開発します。
3、全体像
製品、サービス、アイデアが見込み客やオーディエンスの環境にどのように影響するかを、グラフィカルに表現します。視覚的な刺激は原始脳を活性化させるため、あなたの製品がもたらす結果を俯瞰的に示す必要があります。4、ベネフィットの実証
原始脳はあまり進化していないうえ、疑い深いため、簡潔だが確固たる証拠で価値を効果的に示さなければなりません。それぞれの主張について金銭的・戦略的・個人的な価値を数量化し、それをコストと比較します。複雑なソリューションを販売する場合でも、情報量を減らし、1ページにまとめなければなりません。
5、反論のリフレーミング
後悔への恐怖から、相手がネガティブな感情を口にしたら(反論)、理論によってその感情を取り除くことはできません。リフレーミングによって、顧客がポジティブな感情を生み出すように努めるようにしましょう。
6、締めくくり
もう一度主張を繰り返し、「どう思いますか」と聞くようにします。顧客の答えを待ってから、さらに「これからどうしましょうか?」と聞き、顧客の答えを待ちます。一貫性の影響を利用すると次のステップ(購入判断)に進むことができます。

インパクトをさらに高めるために、次の7つの「説得の触媒」をいくつか組み合わせて利用しましょう。
1、物語を話す
相手を別の世界に感情移入させ、「オチ」によって相手の感情をコントロールします。
2、カリスマ性
言葉、声のトーン、ボディランゲージを最大限に生かします。
3、「あなた」
相手にとって最も影響力のある言葉である「あなた」を使い、相手の立場でメッセージを伝えるようにします。
4、対比
ビフォーアフター、ライバル社との比較、痛みとベネフィットなど、対比によって説得の元素のインパクトを高めます。
5、指導手段
あなたのコンセプトを最も効果的に伝える手段を選びます。聴覚的な手段しか使わない人が多いですが、視覚や聴覚、運動感覚にも訴える必要があります。
6、感情を喚起する
人は、理性よりも先に感情的に判断しまあす。感情を喚起して、意思決定を促すようにしましょう。
7、絞り込む
情報が多すぎると、相手を説得するどころか混乱させてしまいます。メッセージをシンプルにするために、痛み、主張、ベネフィットだけに注目し、残りは捨てるぐらいの気持ちでストーリーを開発するのです。

最後にパリの交通事故の事例を紹介します。このストーリーを読むとニューロマーケティングでやるべきことがよくわかります。パリでは年間4500人もの歩行者が交通事故の被害に遭っています。特に道路横断中の事故の割合がヨーロッパで最も高くなっているのです。信号を無視する歩行者に強い衝撃を与えるため、パリ当局は「衝撃のない衝撃」というキャンペーンを行いました。歩行者信号が赤でも多くの人が横断する場所に、歩行者が赤信号で横断しようとすると、大音量の急ブレーキ音が鳴るようにしました。この音を聞くと、誰もが立ち止まったり、叫んだり、恐ろしい表情を見せたりします。その瞬間、カメラが作動して歩行者の写真を撮り、感情のカクテルを強めるため、その写真を道路の反対側の看板に映し出しました。このキャンペーンにより、歩行者は無理な横断をやめました。

視覚、聴覚、体験などの五感に訴えるメッセージを開発することができれば、脳はそれに反応し、商品やサービスを購入します。原始脳の仕組みをよく理解し、効果的なメッセージを伝えるようにしましょう。本書のアドバイスや事例を学ぶことで、ビジネスで結果を出せるようになります。

まとめ

ニューロマーケティングはどんなメッセージが脳に響くかを徹底的に明らかにします。ニューロマーケティング調査で実証された科学的で厳密なモデルに従い、メッセージを作成すれば、マーケティングは成功します。原始脳の仕組みをよく理解し、効果的なメッセージを伝えるようにしましょう。

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