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FUTURE INTELLIGENCE ~これからの時代に求められる「クリエイティブ思考」が身につく10の習慣~
著者:スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール
出版社:大和書房
本書の要約
周りの情報に敏感で、繊細な人が、クリエイティブな作品を生み出せることがわかっています。多くの天才たちには、繊細さという共通点があったのです。敏感で繊細な人は、他者が気づかないことを見つけ、点と点をつなげることで、新しいアイデアを生み出します。天才には人には見えていないものが見えるのです。
繊細な人がクリエイティブな作品を残せる理由
どんな分野でも、真の創造性の持ち主は、並はずれて敏感に生まれついた人だ。そういう人にとって……接触は殴打であり、物音は騒音であり、ちょっとした不運が悲劇であり、喜びが恍惚であり、友人が愛する人であり、愛する人が神であり、失敗が死である。この過剰に繊細な人が、創造せずにはいられない状況に追い込まれると、楽曲や詩や書物や建物や、何かしら意味のあるものを作らずにいられなくなる。そうしないと、息もできなくなるのだ。創作しなければならない、 創作物を吐き出さなければならない。自分を急きたてる不思議な未知なる力に突き動かされ、創作しなければ生きた心地がしなくなるのだ。(パール・S・バック)
クリエイティブに思考が身につく習慣を著者たちは10セレクトし、それを本書で紹介しています。(本書の関連記事はこちらから)
■遊び
■情熱
■夢想
■孤独
■直感
■好奇心
■瞑想
■繊細
■逆境
■異端
今日はこの中から、「繊細」について取り上げたいと思います。多くの天才たちには、繊細という共通点があることがわかっています。マイケル・ジャクソンの育ての親と言われる音楽プロデューサーのクインシー・ジョーンズは、若い頃のマイケルがシャイで繊細な人間であったと述べています。「King of pop」は、幼いころからステージではバイタリティや強さやカリスマ性を発揮しましたが、その私生活は病的でいつも孤独を感じていたのです。彼は「マイケル・ジャクソンでいることがつらい」と感じ、音楽という創作活動を友達にしていました。
マイケルはオプラ・ウィンフリーとの対談で「ぼくは、世界に音楽や愛や調和を届ける楽器として選ばれたような気がするんだ」と自分の感情を吐露しています。自分の過敏さと苦悩を仕事に注ぎ込むことで、独感や疎外感から逃れる術を見つけました。マイケルは驚くほど外向的でオープンでありながら、非常に感受性が高い孤高なスターだったのです。
心理学者ミハイ・チクセントミハイは、オープンさと繊細さという人格の相反する要素が素晴らしいパフォーマーの中に共存するだけでなく、彼らの人格の核になっていることを突き止めました。マイケルのパフォーマーが大胆でカリスマ的でありながら、 感情面にもろさが見受けられるのは、この矛盾から説明できます。
クリエイティブ思考の人々は、そのオープンさや繊細さゆえに、しばしば苦しみや痛みにさらされるが、同時に非常に多くの喜びも味わう。ある分野の第一線にひとりで立てば、無防備にも、脆弱にもなる。(ミハイ・チクセントミハイ)
ステージやスクリーンで大きな存在感やカリスマ的魅力を発揮する大物俳優やミュージシャンの中にも、私生活では内向的で敏感な人がいます。オードリー・ヘプバーンは、多くの人から愛された女優でしたが、内面は非常に繊細でした。映画の役柄では大勢を引きつける魅力を振りまきましたが、映画の外では内向的で、繊細で傷つきやすい存在だったのです。
心理学者ジェニファー・O・グライムズは、ロック・フェスティバルのバックステージで、ヘビメタ・グループのメンバー21人に、それぞれ20分間ずつインタビューを行ないました。グライムズはメンバーの大半に、オープンさと繊細さ、それに外向型と内向型の矛盾が見られることに気づきました。
激しいプレイをステージで行うミュージシャンが、実はステージの裏で、人格の異なる面を見せていたのです。英気を養うための孤独な時間や読書、楽器の演奏や心の均衡を取り戻すための書き物といった孤独な作業に、彼らは時間を使っていました。ミュージシャンたちは、身の回りのことに対して非常に敏感で、音や光や匂いに強烈な刺激を受けた覚えがあると答えました。彼らは、しばしば空想を楽しみ、過剰な刺激を感じて疲れた時には、曲を聴いたり書いたりして、活力を取り戻していました。高い感受性でこの世界を理解することは、恩恵をもたらす一方で、試練ももたらすため、繊細な感受性を持つ人ほど孤独に過ごすことが多くなります
グライムズの研究結果からは、クリエイティブな人は奇抜な外見をしていても、その裏に奥深さや繊細さや複雑さや矛盾が層をなしていることがわかります。ミュージシャンに限らず、クリエイティブ思考の人は非常に世の中の情報に敏感です。逆に言えば、敏感な人は非常にクリエイティブであることが多いのです。
クリエイティブであることと感受性の高さはどちらも、察知し、吸収し、消化し、理解する情報が多いことを意味します。敏感な人にとって、世界はより変化に富み、より劇的かつ悲劇的で、美しく見えるからこそ、素晴らしい作品が生まれるのです。
敏感な人、繊細な人ほどクリエイティブになれる?
敏感な人は往々にして、他の人が見逃すような些細なことに気づき、他の人が無秩序と見なすものにパターンを見出し、日々の生活の細部に意味や象徴を見つけがちだ。このようなタイプの人が表現へと駆り立てられるのは、不思議ではない。クリエイティブ思考であることを、ある意味で「点と点をつなぐこと」と考えれば、敏感な人は、普通の人より点が多いため、点をつなぐ機会の多い世界に生きているのだ。(スコット・バリー・カウフマン&キャロリン・グレゴワール)
敏感な人は、他者が気づかないことを見つけ、点と点をつなげることで、新しいアイデアを生み出します。天才には人には見えていないものが見えるのです。
心理学者のエレイン・アーロンが率いた研究では、感受性は人格の基本的な一面であることが確認されました。感受性の高い人は、内的世界でも外的世界でも、進行中の状況についてより多くのことに気づき、より多くの感覚情報を処理していることが明らかになったのです。
人類全体の15パーセントから20パーセントは、「高感受性者」だと推定されていますが、芸術家やクリエイティブ思考の人々の間では、この割合はおそらくもっと高いと著者たちは指摘します。そして、感受性の高さは、クリエイティブ思考だけでなく、スピリチュアリティや直感、神秘体験、芸術や自然との融合といった特徴とも相関しているのです。
敏感な人は周囲の小さな変化によく気づき、よく反応しますが、それは感覚処理感受性(SPS)が高いためです。SPSの高さは、主に高感受性者尺度というテストによって測定されます。その感受性には、感情だけでなく、認知や身体への刺激に対する感受性も含まれています。
SPSの高い人は、様々な情報に敏感なため、人生を面白くもできますが、過酷な体験をもしがちだと著者たちは言います。
SPSの高い人は良くも悪くも感情的な反応が強い。新しい状況で、立ち止まって確認する、戦略を深く考える、時間をかけて効果的な行動を計画する、引きこもる、といった行動が見られるのはそのためだ。そうした感受性は認知の傾向だが、免疫系の反応にも影響する。感受性の高い人は、身体レベルでもカフェインや薬物や痛みからより強い影響を受けると言われる。基本的に感受性は刺激を強化するため、感受性が高いことは恵みにも災いにもなる。つまり感受性の高さゆえに、人生はおもしろくなるが、過酷にもなるのだ。
チェロ奏者のヨーヨー・マの友人であるマルク・ザルツマンは、マのことを自分が知る中でとびきり愉快な人だと言います。しかし、ヨーヨー・マがいつも朗らかなわけではありません。彼は明るい感情と等しく、暗い感情も多く経験しています。わたしたちがヨーヨー・マの演奏に感銘を受けるのは、この敏感さゆえなのです。
ヨーヨー・マのように、芸術家が自らの感受性を作品に注ぎ込むことができるのであれば、そのような性質こそがまさに天賦の才であり、ゆえに美術や文学や音楽や演劇はこの世界を豊かにしています。
敏感な人は、クリエイティブな仕事を通じて自分のバイタリティや感情を社会に伝え、自らの経験に意義を見出すことができる。敏感な人の鋭い洞察は芸術作品につながり、その作品を通してわたしたちは、自分自身や世界における自分の立ち位置を、新たな光のもとで見ることができるのだ。感受性の高い人は、そうした洞察や観察を表現したい、共有したいという欲求が非常に強く、ゆえに彼らにとって作品は単なる情熱の表出ではなく、表現せずにはいられないものなのだ。
高感受性者とは正確にはどういう人かを調べるために、アーロン夫妻は「感受性が高い」と思っている人々にインタビューを行いました。彼らは、「内向的」な人や、「刺激(騒々しい場所や感動的あるいは衝撃的な娯楽作品など)に圧倒されやすい」人を募集する広告を出し、幅広い年齢や職業の人を、男女が半々になるように選び出しました。それから各人と3、4時間の面談を行ない、幼少期のことやこれまでの経歴、現在の心境や人生の悩みなどを聞き取ったのです。
その結果、感受性は、肯定的な感情から否定的な感情まで、幅広い感情と結びついていました。感受性の高い人は自ら内省し、成長していたのです。また、高感受性の人がすべて内向型だったわけではないことも明らかになりました。感受性の高い内向型の人と外向型の人は世の中に数多くいることを忘れてはいけません。先ほどのヘヴィメタのロック・ミュージシャンを見ればわかるように、内向型の特徴と外向型の特徴が共存することは、クリエイティブ思考の人によく見られる矛盾の一つなのです。
また、ある研究から、HSP尺度は3つの基本的要素に分類できることがわかりました。
■興奮しやすさ
■知覚閾の低さ
■美的感受性だ。
興奮しやすさと知覚閾の低さは否定的な感情や不安傾向に関連しますが、美的感受性は幸福感や旺盛な好奇心と正の相関があります。ジョナサン・チークと研究仲間は、興奮しやすさと知覚閾の低さという要素を掘り下げるうちに、HSP尺度には、「気質の敏感さ」と「豊かな内面世界」という2つの明確な要素があることに気づきました。
敏感な性質とそれを生じさせる高い感受性は、神経症や心の葛藤のような、マイナスのものとみなされがちな経験さえ、個人的成長の糧に変えてしまいます。人が人として成長し、自己認識を深め、他者により同情できるようになるには、敏感さやある種の激しさ、また心の葛藤が必要なのです。豊かな内面を持つことで、他者への優しさを人は示せるようになるのです。
人格形成を成し遂げる人たちには、 人を助けたい、世界の問題を解決したいという欲求があります。このような段階になると、人は万人への思いやりや人類への奉仕の精神、不変の価値への気づきが生まれます。そして、人格形成の最も進んだ段階では、「理想の人格」が達成されます。人が人生の拠り所とする理想が実現するのです。
この段階では「今ある姿」と「あるべき姿」に差がないので、心の葛藤はない。こうした内なる変貌を遂げる人は、独自の方法によって問題を解決したり、自分や他者を受け入れたり、世の中に貢献したりする。また、常に自分の人生の新しい意味を探り、本当の自分を見つけようとする。むしろ本当の自分を見つけるために、彼らは何かに取り組み、何かを発見し続けるのだ。また彼らは、自らの内なる世界が外なる世界を決めることを知る。すなわち、 人は皆その人なりの現実と集団的な現実を創り、また互いの人生は絡み合っているので、個人の選択が世界を戦争にも平和にも向かわせることを理解するのだ。
自己実現をする人たちは、喪失や葛藤や苦悩や敗北を経験します。これらのつらい体験は、個人の成長や大いなる発展を促す触媒になるのです。わたしたちを天才に変えるのは、わたしたちの内にも外にもある苦しみであり、難題であることを覚えておきましょう。
自分に襲いかかったつらい経験を最大限に活用することができれば、人はクリエイティブで、意義深い仕事ができるようになります。それと同時に、自己の強力なアイデンティティを確立し、世の中から認められるようになるのです。
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