パノス・A・パノイ、 R・マイケル・ヘンドリックスの創造思考―起業とイノベーションを成功させる方法はミュージシャンに学べの書評


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創造思考―起業とイノベーションを成功させる方法はミュージシャンに学べ
パノス・A・パノイ、 R・マイケル・ヘンドリックス
東洋経済新報社

本書の要約

ミュージシャンのように自分のセールスポイントを知り、新たなものを作り、自分の才能を見つけて、他者とつながることで、起業家はイノベーションを起こせるようになります。ミュージシャンのマインドセットを身につけ、新たな可能性に心を開き、変化することで、起業家は顧客を維持・開拓できるようになるのです。

起業家はミュージシャンのマインドセットを手に入れよう!

リミックスして統合することはミュージシャンのスキルであり、同時に起業家にとっても必要なスキルだ。別個の情報から共通点とパターンを見出し、様々な要素を統合させる力によって、発明とイノベーションが生まれる。(パノス・A・パノイ、 R・マイケル・ヘンドリックス)

元バークリー音楽大学のグローバル戦略・イノベーション担当上級副学長のパノス・A・パノイとIDEOパートナー兼グローバル・デザイン・ディレクターのR・マイケル・ヘンドリックスの2人は、成功したミュージシャンの取材をもとに、起業家の成功ルールを明らかにしています。彼らは新しい世界を切り開く方法を音楽から学べると指摘します。

ビートルズ、ハンク・ショックリー、ボブ・モーグは、リミックスによって音楽を進化させました。異なる分野の音源を組み合わせることで、新しい音楽が生まれます。この要素を組み合わせること(リミックス)から、事業の新たなアイデアを生み出せるようになります。

著者のパノスは、アメリカと中東の文化をリミックスさせたバークリー・アブダビ校を立ち上げ、マイケルの同僚たちはドバイにパームウッドという、IDEOとUAE政府省庁をマッシュアップさせたような創作スタジオをつくりました。彼らは中東と西洋の文化をサンプリング素材として活用し、全く新しいスペースを想像したのです。

自分を変えることは常に選択することであり、耳を傾け、実験し、コラボし、デモを作り、つながり、プロデュースし、リミックスし、感じ取って断念することにおいてもそれは変わらない。そのいずれも実行するためには自分を知り、自分だけの声とビジョンの理解に努め、実践することが求められる。

ミュージシャンは、時には何もかも手放し、自分の声を信じ、周囲で広がり続ける世界を自分なりに理解します。成功したミュージシャンと起業家はいずれも、常識という声に背を向ける選択をしていたのです。視点を変えて、世の中を見ることで、チャンスをものにできるようになります。

レディー・ガガ、カニエ・ウエスト、ビヨンセ、ファレル・ウイリアムスなど成功したミュージシャンは、起業においても成功を手に入れています。彼らは音楽の創造技法(自分の強み)をビジネスに取り入れ、自分の感性に基づき、プロダクトやサービスをリリースしました。

彼らのように、自分のセールスポイントを知り、新たなものを作り、自分の才能を見つけて、他者とつながることで、新たなビジネスを起こせるようになります。起業家はミュージシャンのマインドセットを身につけ、新たな可能性に心を開くようにすべきです。

デビッド・ボウイのように変化せよ!

今のモデルはジェイ・Z、ビヨンセ、カーディ・B、リアーナ、カニエだね。一つのイメージで固められないし、多面的な創造活動をしている。ビヨンセは驚異的なシンガーだけど、彼女はそれだけじゃない。エリカ・バドゥだってそうだ。DJもやっている。ジェイ・Zはなぜ実業家としてもすごいのか。彼は自分の根っこを理解していて、その根っこは常に時代の空気を読んでいて、その時代の空気は常に人々に向いているんだ。(ハンク・ショックリー)

時代の空気を読み、自分の強みを明らかにし、それを表現することで、音楽だけでなく、ビジネスでも成功できるとプロデューサーのハンク・ショックリーは言います。

「創造と起業の根本にあるものは同じで、それは自由とエネルギーだ」と著者たちは指摘します。ミュージシャンは自由な発想で、様々なビジネスチャンスを見つけ、そこにエネルギーを注ぎます。

ドクター・ドレはiPhone用の最適なヘッドホンがない時代に、そのペインを自ら解決することにします。ヒップホップを聴くためのおしゃれな専用ヘッドフォン「beats」を生み出し、若者たちを虜にします。ドクター・ドレはヘッドフォンを再定義し、新たなマーケットを創造後、それをアップルに売却します。

イノベーション(革新)によって既存の製品やサービスが大きく変わります。さまざまな要素を賢くリミックスすることで、現代の起業家はイノベーションを起こしています。新たなテクノロジーがイノベーションの可能性をより大きくしていることは間違いありません。

最近の成功事例もリミックスによって、説明可能です。
■ウーバー=タクシー+スケジュール・アプリ+地図
■スポティファイ=ラジオ+曲のライブラリー+プレイヤー・アプリ
■クロナッツ=クロワッサン +ドーナッツ+ディープ・フライヤー

視覚域や聴覚域は、互いが反響し合っている。周波数が同じなんだね。だからアイディアとは周波数をミックスしてマッチさせ、自分の望む感情を呼び起こすことなんだ。みんなから聞かれるよ。『どうやってこんなサンプルを思いつくんだ、どうやって決めたんだ』とかね。どうして素材としてあっちよりこっちを選んだかというよりは、サンプルやサウンドにフィーリングがにじみ出るんだ。サウンドが何を伝えていて、それが3次元レベルで伝わっているかを念頭に置く。そうやってこのプロジェクトはこのサウンドで行こうみたいに決まっていくんだよ。(ハンク・ショックリー)

創造には「五感」が欠かせません。物やアイデアに対して、体で深く感じることで、製品に対してより実感が得られるようになります。ミュージシャンやデザイナーは感覚を利用していますが、ビジネスパーソンも頭だけでなく、感覚を研ぎ澄ますことが求められています。

世の中が複雑なるにつれ、イノベーションの起こし方も変わってきました。最近では、異なる分野の要素を組み合わせることが主流になっています。アーティストは編集者及びクリエイターとして、他のミュージシャンの作品をじっくり聴いて、自分が興味を持った一部を借りて、それをリミックスします。

VUCAの時代にイノベーションを起こすためには、世の中のペインを発見することが欠かせなくなっています。課題を見つける力とアイデアの要素と要素を自由にそれを組み合わせるリミックス力が、今の起業家には求められています。

企業は独自性を目指す戦略を立てながら、時代の変化に適応するための戦略を用意するべきです。この2つを両立させることで、企業は競合に優位性を発揮できるようになります。

デビッド・ボウイは居心地の良い場所から離れるために、キャラクターとスタイルを変え、絶えず変化していたのです。

誰かに『まるで誰々みたいだ』って言われたら、不安になって違うことをやるんだ。いろいろ組み換えて、自分で築いたルール、不安、疑念、欠点を打破しないといけない。究極の目標は、誰もがこれは自分の曲、生涯において忘れられない曲だと思ってくれるような曲を1曲でも多く作ることだね。(ウィル・デイリー)

会社が何十年にもわたって成功を維持し、新たな顧客を引き付けるためには、自分の強みを理解した上で変化を許容しなければならないのです。

自分を知ること、時代に応じて変化する術を学ぶことで、人生に磨きをかけられます。時代を先取るだけでなく、人生について考える機会も与えてくれる良書だと思います。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

 

 

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