ケン・ブランチャードのザ・ビジョン(新版)やる気を高め、結果を上げる「求心力」のつくり方の書評


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ザ・ビジョン[新版] やる気を高め、結果を上げる「求心力」のつくり方
著者:ケン・ブランチャード、ジェシー・リー・ストーナー
出版社:ダイヤモンド社

本書の要約

自分は何ものなのかという「目的」、どこをめざすのかという「未来のイメージ」、そしてビジョン実践の羅針盤となる「価値観」をはっきりさせることで、リーダーはよりよいビジョンを描けるようになります。ビジョンをつくるだけでなく、実践することで顧客から応援されるようになります。

経営者がビジョンを作り、継続させなければいけない理由

マネジャーが偉大なリーダーになるのを妨げている最大の要因は、めざすべき明確なビジョンを描けずにいることだ。言い換えれば、自分は何ものなのかという「目的」、どこをめざすのかという「未来のイメージ」、そしてビジョン実践の羅針盤となる「価値観」がはっきりしていないからだ。(ケン・ブランチャード・ジェシー・リー・ストーナー)

ビジョンを持たない経営者は成功できないとケン・ブランチャードは言います。私も様々な会社の経営者と関わってきましたが、ビジョンのない経営者はどこかで失速するというルールを自分なりに見つけていたので、この考え方にはとても共感を覚えます。

どんなリーダーシップをとるにしても、出発点はビジョンをつくることにあります。リーダーシップとは、どこかをめざして進むものですが、そのビジョンがみんなに共感されなければ、リーダーシップも自己満足に終わり、結局は失敗してしまいます。

多くの企業は「ビジョン・ステートメント」を掲げていますが、それが絵に描いた餅になっていることが多いと感じている人も多いのではないでしょうか?先日、出会った経営者も「会社のビジョンをつくっているが、それにあまり注意を払っていない」と言っていました。現実の業務の実態とかけ離れたビジョンを掲げても、誰もそれに共感しませんし、積極的にそれを目指そうとは思いません。これではチームがまとまるわけがありません。ビジョンをつくるだけでなく、どうすれば、実践され、継続できるかを考えるべきです。

保険会社を経営する2代目社長のジムと、中途採用で入社したエリーの2人の登場人物が、会社のビジョンを考え、実践していくストーリーが本書では展開されていきます。2人のやりとりから、私たちはわかりやすくビジョンを学べます。(今回、改めて「新版」を読むことで、この本でビジョンを学んだ頃を思い出せました。)

ビジョンには以下の3つの構成要素が必要になります。
①有意義な目的

目的とは、顧客の視点から見た、組織の〝真の〟使命を明らかにするものである。偉大な組織は、奥の深い、崇高な「目的」をもっている。つまり〝有意義な〟目的だからこそ、従業員の熱意をかきたて、やる気を起こさせるのだ。

社員全員が一致協力できるようになるためには、共通の目的をつくらなければなりません。我が社の存在意義は何か?我が社の使命は何か?を問いかけ、目的を明確にしましょう。何を提供するか?その際、自社から一歩踏み出し、お客様視点で考えることで、ビジョンが命を持ちます。

②未来のイメージ

明確なビジョンにするには、めざす方向性が示されないといけない。

手に入れたい、未来のイメージを言語化し、それに集中することで、イメージを現実に変えられます。社員とともにそれを目指すことが経営者やリーダーには求められます。

明確な価値観

「目的」は「なぜ」を教えるもの。「未来のイメージ」は「どこへ」を教えるもの。「価値観」は「どのように」を教えるもの。

「価値観」の数は少なめにし、重要度にしたがって優先順位をつけることが重要です。「価値観」の内容を明確にし、どんな行動をとればその価値観を実践できるかを書き出しましょう。その中から社員とともに優先順位を付けていくのです。

ビジョンを絵に描いた餅にしないために、どうすればよいか?

ビジョンとは、自分は何もので、何をめざし、何を基準に進んでいくのかを明らかにすることである。

著者は説得力あるビジョンづくりのためのチェックリストを以下のように整理しています
□そのビジョンは、私たちの”真の”使命を理解させてくれるか?
□そのビジョンは、望ましい未来のイメージを、目に見える形で示してくれるか?
□そのビジョンは、日々の意思決定を導く指針となってくれるか?
□そのビジョンには、永続性があるか?
□そのビジョンは、単にライバルを打ち負かすためのものでなく、「偉大なもの」をめざすビジョンか?
□そのビジョンは、数字だけのビジョンでなく、元気を与えてくれるビジョンか?
□そのビジョンは、チーム全員の心と精神に訴えかけるか?
□そのビジョンは、ひとりひとりに、自分がどのように貢献できるかを自覚させてくれるか?

これらの要件を満たすビジョンをつくれれば、チームに明確な方向性を与えることができるだけでなく、意欲を高めることにもつながります。当然、このビジョンは企業だけでなく、個人にも当てはまります。一人一人が自分のビジョンを持つことで、有意義な人生を送れるようになります。本書には自分の死亡記事をイメージし、未来の自分から逆算し、ビジョンをつくるというアドバイスがありますが、この方法はとても効果があります。

ビジョンは壁にかかった額ではない。本物のビジョンは実践されるものであり額に入れるものではない。

経営者はビジョンを創造し、それを伝達し、社員に実践してもらわなければなりません。そのためには、ビジョン作成のプロセスに経営者だけでなく、社員も参加させるです。 「目的」「未来のイメージ」「価値観」を一方的に発表するのでなく、社員も巻き込んで、プロセスを明確にしていくことで、よりよいビジョンが生まれます。社員が夢や希望を語り、意思決定に関与することが増えていくにつれ、モチベーションも高まります。ともにビジョンを生み出すことで、社員への浸透もスムーズになります。

ビジョンが完成した後でも、経営者は絶えず、それを社員に語り続ける必要があります。 ビジョンを実現するための目標をつくることで、ビジョンが実践されるようになるのです。私がアドバイザーをしている会社の代表は月初の全体会議で必ずビジョンを社員に伝え、みんなでそれを目指すことを宣言しています。ビジョンが浸透することで、この組織は強くなり、メンバーはテレワークになっても成果を出し続けています。

目標とはビジョン実現に向かうための具体的かつ計測可能な行動指針です。当然、経営者はビジョンから外れた目標や行動計画をつくってはいけません。逆に言えば、ビジョンがあることで、経営者と社員が適切な目標をつくれ、それに向かって一つのチームとして、行動できるようになります。

主人公の一人であるビルが亡くなる前に残したメモを読むと、ビジョンを作ることの重要性を理解できます。(ぜひ、本書でそのメモをご確認ください。)

ビジョンは、かかわるすべての人に恩恵をもたらすものでなければならない。

少なくとも、ビジョンを実践することで、だれかを傷つけることがあってはなりません。お客さまに利益をもたらしても、従業員に利益をもたらさないようなビジョンは無意味だと著者は指摘します。

以下の5つのステップを経ることでビジョンが浸透し、顧客を感動させる強いチームをつくれます。
1、共有されたビジョンの創造
2、現状を正直に書き出してみる
3、ビジョン実現へ向けて前進する方略を考える
4、メンバーの参加と対話のための計画を立てる
5、個々のメンバーの取り組みをうながす

最後にザ・ビジョンのモデル図を紹介して、本日のブログを終わります。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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