エグゼクティブ･リーダーのための１００日間アクションプラン
ジョージ・B・ブラッド, ジェイミー・A・チェック，ジョン・A・ローラー
日本能率協会マネジメントセンター
エグゼクティブ･リーダーのための１００日間アクションプランの要約
高業績を達成するチームや組織は、共通の目的の共有と、人材、計画、実践の整合性によって構築されています。戦術的能力は、戦略と実行の間のギャップを埋める重要な要素であり、これにより優れた戦略を正しく行えるようにできます。リーダーはチームを動機付ける魅力的なビジョン（心を燃やす命題）を示すべきです。
成功するための100日間の10のステップ
新しい職務に就くという複雑な方向転換を加速させる最善の方法は、始める前に十分な時間をかけて計画を練り、早めに実行に移し、先手を打つことなのです。リーダーとして、すべてのステークホルダーを共通の目的と目標に集中させ、説得力のある方向性を示し、結束力のあるリーダーチームを構築し、優れた実行を可能にする文化を創造する必要があるのです。（ジョージ・B・ブラッド, ジェイミー・A・チェック，ジョン・A・ローラー）
エグゼクティブ・リーダーは、会社や組織の上層部に位置するマネジメント層を指し、例として新任事業部長や経営幹部、新任取締役などが挙げられます。彼らは役割に対して自信を持ち、適切に行動することが求められますが、実際には新しい役割に就いたリーダーの約40%が18か月以内に失敗してしまいます。これは適性の不足、成果の不十分さ、環境への適応不能などが原因です。
しかし、本書の適切なガイダンスからリーダーシップを身につけることで、リーダーは新しい役割と組織に迅速に適応し、高いパフォーマンスのチームを構築し、効果的な戦略を実行することが可能になります。これによって戦略的、運営的、組織的な成果を実現する方法を学ぶことができるのです。
組織を変えるためには、赴任後の最初の100日間が重要です。著者らは以下の４つのアクションが重要だと言います。
①スタートダッシュを決める
新しい職務やチーム統合の際、初日の行動は非常に重要です。初日から積極的に行動することで、仕事の進捗を加速させ、準備期間に得た自信をもって早期の成果を生み出すことができます。
②メッセージを管理する
コミュニケーションは全ての行動や言動に反映されます。自身のメインメッセージを事前にしっかり考え、他人がいつ何を見聞きするかを戦略的に導きます。
③方向性を定め、チームを作る
初めの100日間は、結束力がありパフォーマンスの高いチームを構築するのに最適な時期です。この期間にチームの構成要素を整え、チームの賛同を得ることは、個々人の成功と密接に関連しています。
④勢いを持続させ、結果を出す
初期の100日間はスタートダッシュのスプリントですが、その後もリーダーシップを維持し、継続的に結果を出すための文化を発展させることが必要です。
具体的には、最初の100日間を以下の10のステップを実践することで、大きな果実を得られます。
▪️スタートダッシュを決める
1、成功のためのポジションを確立する。仕事を得る。その仕事が自分にとって適切であることを確認する。よくある「地雷」を回避する。
2、正式業務開始前の、準備期間を活用する。仕事は、オファーを受けたときから始まっている。 メッセージを管理する
3、初日を制する。力強い第一印象を与える。赴任のメッセージを確実にする。
4、文化を発展させる。多様性を活かす。
5、リモートチームとのコミュニケーション、特にデジタルでのコミュニケーションをマネージする。
▪️方向性を定め、チームを作る
6、戦略への転換。30日目までに、「心を燃やす命題」を共創する。
7、オペレーションのアカウンタビリティを促進する。45日目までにマイルストーン管理を定着させる。
8、60日目までに”早期の成功”を選択し、6カ月以内に成果を出す。
▪️ハイパフォーマンスなチームを作る。
９、70日目までに再編成、採用、育成、指導を行う。 勢いを維持させ、結果を出す
10、100日目までに、自社のリーダーシップ、人材、実践、文化を調整し、発展させる。リーダーシップとは多くの点で、文化を構築することです。どのように定義しようとも、文化は組織をまとめる接着剤のようなものです。
これらのアクションを通じて、エグゼクティブ・リーダーは効果的に新しい役割を果たし、組織の成功に貢献することができるようになります。
心を燃やす命題が重要な理由
リーダーシップのトランジションはほとんどすべて「 ホットランディング」（ 混乱・交戦 状態の最中）であり、成功のチャンスを得るためには、地に足をつけて行動する必要があります。
多くのリーダーが失敗する中で、チームを牽引するためには、共通の目的の共有と地に足のついたアクションプランが重要になります。著者らはそれらの構成要素を明らかにしています。
高業績を達成するチームや組織は、共通の目的の共有と、人材、計画、実践の整合性によって構築されています。戦術的能力は、戦略と実行の間のギャップを埋める重要な要素であり、優れた戦略を正しく行えるようになります。
この戦術的能力を支える6つの構成要素は以下の通りです。
・コミュニケーションによる文化形成
効果的なコミュニケーションを通じて組織文化を築く。
・心を燃やす命題
チームを動機付け、目標に向かわせる魅力的なビジョンや目標。
・マイルストーン管理
目標達成に向けた進捗の明確な管理。
・早期の成功
初期段階での成功体験を設定し、モチベーションを高める。
・役割の仕分け
各メンバーの役割と責任を明確にする。
・継続的な発展
組織と個人の成長を促進するための持続的な取り組み。 これらの要素が組み合わさることで、チームは戦術的に強く、目標達成に向けて効果的に機能するようになります。
“心を燃やす命題”とは、チームメンバーが「今やるべきこと」「チームや組織の大きな目標との関係」を明確に定義し、熱意を持って共有され、目的意識を持って緊急に取り組むべきことです。ミッション、ビジョン、バリュー、目標、目的、そしてアクションベースの戦略は心を燃やす命題の重要な構成要素です。そして、そのエッセンスは、誰もが理解し、行動できる「叫び」として明確に表現されます。この叫びをチームと一緒に創り上げ、早期に賛同を得ることが重要です。
成功したリーダーは、ビジョンとバリューを中心にして、チームの方向性を統一し、重要なビジネス課題に集中させることの重要性を強調しています。特に、就任初の100日間はこのプロセスを確立する上で最も困難な時期です。
「心を燃やす命題」とは、チームが現在直面している具体的な課題や行動に集中することで、長期的な目的に対して短期的な活動を推進するものです。 「心を燃やす命題」は以下の要素で構成されます。
・ヘッドライン
情熱を表現するフレーズやキャッチフレーズ。
・ミッション
チームの存在理由。
・ビジョン
将来の目指す姿や成功のイメージ。
・バリュー
態度や行動を導く信念と原則。
・目標
質的なパフォーマンス要件。
・ゴール
成功の定量的基準。
・戦略
目標達成のための方法。
・計画
戦略的優先事項を実現する具体的なプログラム。
・オペレーションのリズム
計画の実行、追跡、学習、発展の方法。
・オーナーシップとアカウンタビリティ
誰がどのような責任を負うかの明確化。
ビジョン・ミッションなどの要素を通じて、リーダーはチームの焦点を合わせ、具体的な行動に移すことができます。100日の間にやるべきことを明確にすることで、チームのやるべきことが理解され、正しい行動が伴うようになります。優れたリーダーになりたければ、心を燃やす命題をチームに明示する必要があるのです。
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