SIMPLE RULES 「仕事が速い人」はここまでシンプルに考える
著者:ドナルド・サル, キャスリーン・アイゼンハート
出版社:三笠書房
本書の要約
複雑なルールを徹底的に絞り込み、シンプルなものに変えることで、企業はスピードと実行力と柔軟性を手にします。ナスダックにIPOしたエアビーアンドビーも当初は失敗を繰り返しますが、たった2つのシンプルなルールを実行することで、成長軌道に乗ったのです。
エアビーアンドビーは、シンプルなルールで成功をつかんだ?
1 、100万人に好かれるより、100人に本気で愛される存在になりなさい。2、ニューヨークに行きなさい。(ポール・グレアム)
エアビーアンドビーのブライアン・チェスキーとジョー・ゲビアは、創業時に失敗を繰り返し、なかなか事業を軌道に乗せられませんでした。資金が絶えず枯渇する中で、ベンチャーキャピタルの「Yコンビネータ」のスタートアップ養成プログラムに参加することが、転機のきっかけになりました。
Yコンビネータで毎週火曜に開催される夕食会に参加し、養成プログラムに参加しているほかの起業家たちとの意見交換から様々な刺激を受けたのです。また、Yコンビネータの創立者、ポール・グレアムから受けたシンプルなアドバイスが彼らの思考と行動を変えます。100人に本気で愛される存在になると決め、ファンベースのマーケティングをスタートします。ブライアンとジョーの2人はホスト(部屋を貸しだす人)が多く、サービス利用が活発なニューヨークへ飛んだのです。
彼らは、ホストたちの家を一軒一軒訪問し、ホストや利用者のインタビューを繰り返しながら、サービスを改善していきます。ホストの家の写真を美しく撮り直すことで、予約者数がわずか1週間で2倍になりました。彼らは、実際にホストの家に宿泊してみて、改めてホストたちのことをビジネスパートナーであると実感しました。
当初の彼らのルールは、「大規模なイベントをターゲットにする」でしたが、さまざまな人との出会いを通して、以下のようにルールを改良していきました。
1、大規模なイベントをターゲットにするのではなく、世界に目を向ける。
2、ホストを大切にする。
3、エアビーアンドビーの信念(たとえば、宿泊場所の写真は、プロ並みのクオリティを維持すること。ゲストが使うせっけんは新品を提供するなどといった、もてなしの精神)に共感してくれるホストを獲得する。
変化に適応したシンプルルールを作ろう!
人生は何が起こるかわからない。エアビーアンドビーの創設者の3人も、きっとそう思っているだろう。サンフランシスコのアパートメントからはじまったビジネスが、今や飛ぶ鳥を落とす勢いで成長しつづけているのだから。(ドナルド・サル, キャスリーン・アイゼンハート)
赤の他人を自宅に泊めるビジネスなんて絶対にうまくいくわけがないと、まわりの人たちから思われていたエアビーアンドビーはシンプルなルールを採用することで、「シェアリング・エコノミー(共有型経済)」の先駆者となりました。
シンプルなルールを教えたYコンビネータのポール・グレアムも、当初は彼らのビジネスモデルを疑っていました。グレアムがエアビーアンドビーに投資したのは、ジョーたちのビジネスアイデアに共感したからではなく、アメリカ大統領選の際にシリアルを売ってまで事業を継続させようとしたその根性を買ったのです。その際のグレアムの思い切った決断によって、Yコンビネータも大きなリターンを獲得します。
ジョー・ゲビア、ブライアン・チェスキー、ネイサン・ブレチャージクの3人の起業家は、何度も倒産寸前に追いこまれながらも、そこから這いあがってきました。そして昨年ついに、エアビーアンドビーは、ナスダックにIPOします。
登録物件も個人宅だけでなく、ラグジャリーな部屋やエアビーアンドビープラスというクオリティの高いサービスも用意しています。今では、古城やツリーハウスにも泊まれるようになり、バリエーションは豊富になっています。彼らは顧客体験を最大化することで、多くの顧客をファンに変えたのです。
人はさまざまな経験をもとに、ルールを進化させていく。だが、完壁に思えるルールであっても、永遠につづくルールはない。ときには、すべてを破棄してつくり直さなければならない状況に直面する場合もある。
今回のコロナ禍の中でもエアビーアンドビーは、キャンセル時の返金の仕組みを改善するなど様々な施策を行うことで、顧客の支持を得ています。結果、業績は比較的堅調に推移しています。環境が変わる中で、企業も自分たちのルールを進化させていく必要があります。シンプルなルールを時代に合わせて修正する企業が、成功という果実を手に入れるのです。
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