ヘンリー・チェスブロウ博士のオープンイノベーション理論とは何か?世界最高峰の経営教室の書評


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世界最高峰の経営教室
著者:広野彩子
出版社:日経BP

本書の要約

オープンイノベーションとは、プロダクト開発や技術改革、研究開発や組織改革などにおいて、自社以外の組織や機関などが持つ知識や技術を取り込んで、自前主義から脱却することです。オープンイノベーションから有益な結果を得るためには、パートナーとの関係を閉鎖的にしないよう留意すべきです。

オープンイノベーション理論とは何か?

産業全体を後押しする国家のインフラ投資が減れば、成長は各企業に委ねられる。良い企業は伸びるが、ダメな企業は誰も助けない。これが「指数関数のパラドックス」の原因というわけだ。

広野彩子氏の世界最高峰の経営教室書評を続けます。今日はヘンリー・チェスブロウ博士のオープンイノベーション理論を取り上げます。戦後の復興は各国政府のインフラ投資によってもたらされましたが、財政赤字でそれが減る中、企業に自助努力が求められるようになりました。

消費者の思考も変化し、プロダクトライフサイクルも短期化し、企業は顧客を満足させる新商品を次々に開発することが求めらています。そんな中、注目されているのが、このオープンイノベーション理論です。オープンイノベーションとは、プロダクト開発や技術改革、研究開発や組織改革などにおいて、自社以外の組織や機関などが持つ知識や技術を取り込んで、自前主義から脱却することです。

オープン・イノベーションには2つの側面があります。1つはアイデアや知識が外部から自社に流れ込み、新製品や新たなビジネスモデルを創造する流れです。もう一方は、アイデアや知識が企業内部からあふれ出て、外部の知識や資金を得て、新たな価値を生み出す流れになります。

プロダクトサイクルの短縮、顧客の価値観の多様化、ベンチャー企業との熾烈な闘いなど、大企業が置かれている環境は激変しています。大企業と言えども安閑としていられず、常に新たな挑戦をしなければなりません。一企業の枠を超えて、イノベーティブなプロダクトやサービスを創出することが、オープンイノベーションの大きな目的です。

新規事業には超えなければならない「死の谷」が存在します。大企業は既に稼ぎ頭の既存事業を抱えていますが、その状況で新規の収益事業を育てるのは簡単ではありません。育成のめどが付いた新規事業の種を本格的にビジネスに移行させることが、特に難しいとチェスブロウは指摘します。

「死の谷」とは、イノベーションを実行に移す時の関門を指す。乗り越えられないとプロジェクトが日の目を見ずに終わることから、「死の谷」と呼ばれる。 イノベーショングループが将来有望なアイデァだと思っても、事業部門の人々がそう思わないことはしばしばある。

新規事業のタネを探すイノベーション部門は、最新のトレンドを調べ、新たな事業機会を探す試行錯誤を繰り返しています。それを収益にするには、ある時点でその種を事業部門に引き渡す必要があります。しかし、両者の意識があまりに違いすぎることが問題として浮上します。

イノベーションを生み出す可能性を持つどんな斬新なアイデアも、企業の理解不足、あるいは経済的・財務的な理由から中止されることは多々あります。「イノベーターのジレンマ」による判断によって、プロダクトの可能性が評価されず、投資がいきなり終焉することもあります。

オープンイノベーションの課題を乗り越える方法

経済産業省の肝煎で日本企業15社ほどが、シリコンバレーでラボを立ち上げたことがありました。各社は何年も資金を投じ、約5年ごとの人事異動によって、現地の最新の知見を日本に持ち帰らせました。当時の参加企業の悩みは、シリコンバレーのラボで立ち上がったプロジェクトが、日本に帰るとことごとく「死んで」しまうことでした。日本の本社は価値を認めず、持ち帰ったタネを育てようとしなかったのです。

日本のある大手電機メーカーでも「死の谷」が起こっています。 大企業には大抵、強力な国内の主力事業があり、通常は事業計画を1~2年のスパンで考えます。しかし、AIのようなものは、10年単位の長期的視点が必要で、それなりの取り組みが必要になります。当然、その電機メーカーにもAIに注目する人材が以前からいましたが、残念ながらそれは基幹事業部門でなく、会社の「辺境」で大学やベンチャー、外資企業らと連携する研究する部門だったのです。社内プロセスのAI化に注目し、PoC(概念実証/Proof of Concept)を出したこともありましたが、基幹事業部門から拒絶されてしまったのです。

社内から新規事業が提案されても、既存事業はえてして消極的だ。 AIは、コンピューターの性能向上などでアルゴリズム開発が可能になり、再び注目されている。しかし、米グーグルですら、コア技術は英ディープマインドの買収で獲得した。数百人にのぼる社内科学者やエンジニアが生み出したわけではない。つまり(新たな提案への)こうした反応は、大企業ならどこでも起こり得る。積み重ねでイノベーションを起こそうとする傾向が強く、一気に「破壊」しようとする動きは歓迎されない。

既存事業の部門が社内での協力に消極的であるために、イノベーションが起きない事例が大企業にはたくさんあります。

しかし、社外との協業を行えば、「死の谷」を越えられるかもしれません。 オープンイノベーションを活用して、社外と優秀なメンバーとプロジェクトを組むことで、新たな価値を提供できるようになるのです。ただし、その際、大企業は独善的にならないように注意を払うべきです。

社外のリソースを使う際に、大企業は資本の力に頼ろうとしますが、それは時にパートナーを遠ざけます。 資本の論理で相手を支配するくらいなら、信頼関係をしっかり築き、資本とは別の「影響力」を相手に与えたほうがよいのです。

日ごろのビジネスを通じて、相手が「この会社との協働があってこそ自分たちは成長できる」と思うくらいの影響力があれば、資本関係などなくとも自然と相手を引き込める。相手を無理に監視しないことに加え、複数の企業と協働する場合は公平に扱う必要がある。 外の組織とウィンウィンの関係とし、必要な情報を互いに提供し、協働し、それぞれが頑張る必要がある。

オープンイノベーションでは数百ものスタートアップと協働した方がよい場合もあります。例えば、スタートアップに共通のエコシステムや基盤を創る場合、全社を公平に扱い、全社にとって使いやすく、メリットがあるものをつくる必要があります。今の時代のオープンイノベーションは、1社ではなく、多くの企業を巻き込むべきです。 

任天堂はこのエコシステムづくりに成功している日本企業の代表格です。任天堂はすべてのゲーム開発会社を資本的に所有しているわけでありません。しかしゲーム開発会社に自社のツールを与え、知識や情報を公平に共有することで、開発者が任天堂と仕事をしたくなる環境を整備しました。任天堂が多くのゲーム開発会社から参加してもらうことに成功したのは、このエコシステムを丁寧に築いてきたからです。

大企業がパートナーを「過剰に管理する」「公平に対応しない」ことで、オープンイノベーションは失敗します。それ以外にも適切なパートナーが選べなかったり、意思決定が極めて遅いと信頼が一気に崩れます。当然、社内調整に手間取り、物事が進まないこともあります。また、イノベーティブな外部スタッフの活躍に対し、プロパー社員が覚える羨望と落胆などによって、事業が停滞することもあります。

オープンイノベーションでビジネスを成功させるためには、リーダーがビジョンを掲げ、お互いの力を引き出すことが必要です。リーダーはオープンイノベーションに対する社内への理解や周知を徹底し、社員のやる気を削がないようにすべきです。お互いが閉鎖的になることでオープンイノベーションは失敗してしまうのです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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