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THE CATALYST 一瞬で人の心が変わる伝え方の技術
著者:ジョーナ・バーガー
出版社:かんき出版
本書の要約
ペンシルベニア大学ウォートン校の人気教授のジョーナ・バーガーは、行動を阻止している障害を特定し、それを除去する方法を考えることで、相手の思考と行動を変えらると指摘します。保有効果を和らげること、現状維持のデメリットを伝えることで、相手は自ら行動を起こすようになります。
保有効果とは何か?
変化を難しいと感じるのは、人間にはすでに持っているものやしていることを過大評価する傾向があるからだ。(ジョーナ・バーガー)
ペンシルベニア大学ウォートン校の人気教授のジョーナ・バーガーは、行動を阻止している障害を特定し、それを除去する方法を考えることで、相手の思考と行動を変えらると指摘します。(本書の関連記事はこちらから)
慣性の5騎士の「心理的リアクタンス(Reactance)」「保有効果(Endowment)」「心理的距離(Distance)」「不確実性(Uncertainty)」「補強証拠(Corroborating Evidence)」を除去することで、よりよい結果を得られます。今日は、この中から、保有効果を取り上ます。
私たち、人間は手放すことを嫌がると言う特性があります。 これから手に入れるときよりも、 手放すときのほうが、 対象のものをより高く評価してしまうのです。 人は一旦ものを所有するとその価値をより高く見積もります。 何かが「自分のもの」であると考えると価格設定を間違えてしまうのです。
どうやら人間は、一度何かを自分のものにすると、それに愛着を覚えるようだ。その結果、それの価値を高く見積もるようになる。これがいわゆる「保有効果」だ。保有効果はいたるところで見られる。
さまざまな研究によると、 想定される損失の2.6倍の利益を得られなければ、 人は行動を起こさないことがわかっています。新しいことをやるなら、今より少し効果的ではダメで、はるかに効果的でなければなりません。
好きなもの、自分にとって価値のあるものを手放すには、 その「見返り(効果の向上、コスト削減、 その他の前向きな変化)」が、 手放すものの少なくとも2倍の価値を持つ必要があるのです。
現状維持を打破するためには、スイッチングコストを相手に分からせ、それ以上のメリットがあることを伝えるべきです。過去の習慣を変えるためには、損失よりも大きなメリットを相手に知らせなければならないのです。
保有効果を除去しよう!
変化にコストはつきものだ。新しい製品を買うのはお金がかかり、新しいサービスを導入すると、使い方を覚えるまでに時間がかかる。新規の企画は形にするまでにかなりの努力が必要で、新しいアイデアは慣れるまで時間がかかる。そのうえ、これらのコストはたいてい前払いだ。(ジョーナ・バーガー)
新しいプログラムやプラットフォームを使いたいのなら、まず時間と労力をかけて使い方を覚えなければなりません。ソフトウェアがバージョンアップされたら、それを使いこなすために、新しいユーザーインターフェイスに慣れたり、機能を覚えるという面倒な作業が付随します。
しかし、変化のリターンを得るまでには、時間がかかります。新しくプログラムを導入した際に、実際リターンが見えてくるのは、だいたい導入から数週間か数カ月後になります。
このコストとリターンの時間的ギャップが行動の妨げとなります。人は「コストが先、リターンは後」という事態になるなら、何もしないことを選びます。現状維持という選択肢があれば、多くの人はこれを選びます。
ビジョナリーカンパニーで有名なジム・コリンズはこんな言葉を残しています。
『グッド』は『グレート』の敵だ。(略)グレートな学校がないのは、グッドな学校をすでに持っているからだ。グレートな政府がないのは、グッドな政府がすでに存在するからだ。グレートな人生を手に入れる人がほとんどいないのは、グッドな人生で満足するのがあまりにも簡単だからだ。
私たちは物事が「グッド」の状態なら、現状維持を選んでしまいます。今のままで特に問題がないのなら、あえて変えようとは思いません。
しかし、何もしないことのコストはゼロに見えるかもしれないが、実際はそうではありません。小さな違いが時間をかけて積み重なれば、やがてかなり大きな違いになります。
カタリストは、行動しないことのコストを明らかにします。彼らは現状と、変化を起こした結果の間にある違いを明確にして、変化の利点を納得してもらいます。変化の利点を強調するのではなく、何もしないことによって、いったいどれほどのものを失っているかを明確にし、相手に行動を起こさせます。
変化の触媒になるには、人々を新しいものに慣れさせるだけでは不十分だ。古いものを手放す手助けもしなければならない。それが、「保有効果を和らげる」ということだ。
紀元後711年、イスラム帝国ウマイヤ朝の軍人タリーク・イブン・ズィヤードは、部下たちに弱気の虫を起こさせないために、自分たちが乗ってきた船を焼くことを命じました。漢の韓信も背水の陣によって、兵士たちのやる気を引き出し、大勝利を手にします。
現状を打破したいときに、この考え方や姿勢を応用できます。古いやり方を完全に捨てるのではなく、他の方法で古いやり方のコストを明確にするのです。
IT技術者のサム・マイケルズは新しいソフトウェアの導入で苦労していました。多くの社員がソフトウェアをアップデートせず、変化を起こしてくれませんでした。彼は古いソフトウェアという船を焼き「現状維持」という選択肢を排除しました。最新版に更新していないすべての人に古いソフトウェアのサポートを終了するというメールを送信しました。アップデートをしない社員には、今後トラブルがあってもサポートをしないと宣言します。結果、今まで抵抗していた社員全員が、ソフトウェアをアップデートしました。
現状維持にはコストがかかるということを認識させることで、人は自分の行動を変えます。何もしないことで不利益を被ると伝えることで、相手は自らアクションを起こすようになります。
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