なぜ、移民は起業で成功する確率が高いのか?


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2030 世界の大変化を「水平思考」で展望する
著者:マウロ・ギレン
出版社:早川書房

本書の要約

アメリカのテック系ベンチャーの約23パーセントは、移民が創業したものです。彼らには当然成功したいというハングリー精神があります。アメリカ人とは異なる視点と経験によって、移民たちはアメリカという新天地で、ビジネスチャンスを見出しています。

なぜ、移民がスタートアップを成功に導けるのか?

雇用を創出するグーグル、インテル、イーベイ、フェイスブック、リンクトイン、テスラには、共通点がふたつある。ひとつは、アメリカ経済を一変させたこと。もうひとつは、創業者か共同創業者が移民であることだ。(マウロ・ギレン)

マウロ・ギレン2030 世界の大変化を「水平思考」で展望する書評を続けます。本書の中に、アメリカのベンチャー・スタートアップの成功者に移民が多いという話が書かれていたので、今日はこの理由を考えてみたいと思います。

テスラのイーロン・マスクは南アフリカからカナダに移住し、その後ペンシルベニア大学ウォートン校に進学しますが、わずか2日で退学し、アメリカでZip2を起業します。その後、ペイパルの前身になるXドットコムを立ち上げました。彼はテスラやスペースXを次々に起業し、成功を手に入れます。

グーグルのセルゲイ・ブリンもロシアからの移民ですし、インテルのビジネスモデルを大胆に変革したアンディ・グローブもハンガリーからの亡命移民でした。実際、アメリカのテック系ベンチャーの約23パーセントは、移民が創業したものです。彼らにはアメリカで成功したいというハングリー精神があります。移民たちはアメリカ人とは異なる視点と経験によって、アメリカという新天地で、ビジネスチャンスを見出しています。

超党派のシンクタンクである米国政策財団の報告によれば、2016年時点でアメリカのユニコーン企業・87社のうちなんと44社が、移民による創業でした。その44社を創業した起業家のうちの23人が、大学か大学院で教育を受けるためにアメリカに留学してきてた学生だったのです。彼らの主な出身地は、インド、カナダ、英国、ドイツ、イスラエルでした。

経済にとって移民は恩恵だ。なぜなら、移民は起業する傾向が強いからだ。

デイヴィッド・ヒンダウィは、1944年にバグダッドでユダヤ系イラク人の家庭に生まれ、1951年にイスラエルに移住しました。1970年、カリフォルニア大学バークレー校で博士号を取得するために渡米し、2007年に、息子のオリオンとサイバーセキュリティ企業のタニウムを創業しました。現在、タニウムは500人の従業員を抱えるまでに成長しています。

経済を強くする移民パワー

全米科学・技術・医学アカデミーの包括的な報告書は「移民は移住先の人間よりも革新的だ」と述べています。彼らは、科学や工学分野のスペシャリストとして移民します。他国に移民するというチャレンジ精神によって、彼らは新天地で起業します。

リンクトインの共同創業者のリード・ホフマンはワシントン・ポスト紙で次のように述べています。

慣れ親しんだものをすべてあとに残して、新たな土地で新たに始める。成功を掴むためには協力関係を築く必要がある。スキルを獲得しなければならない。即興で対処しなければならない時もあるだろう。移民とは大胆な計画だ。(リード・ホフマン)

2016年にジョージ・メイソン大学が行なった調査によれば、移民はアメリカの総人口の約22パーセントを占めていました。起業以外でも、移民が活躍していることが調査からも明らかになっています。

医師と執刀医全体の28パーセント、准看護師、精神科助手、在宅介護助手の22パーセント、看護師の15パーセントが移民です。バイオ技術分野で働く医学者の半数以上も移民です。彼らの大半が、医療サービス提供者としての教育を出身国で受けていました。移民の医療従事者がいなければ、アメリカの医療はもはや成り立たなくなっていることがわかります。

科学分野のノーベル賞受賞者を見れば、移民の力を実感できます。2000年以降、化学、物理学、生理学・医学分野でノーベル賞に輝いたアメリカ市民は85人でそのうちの33人(40パーセント近く)がアメリカ国外の生まれでした。世界で最もイノベーションを起こす国という地位を、今後もアメリカが維持し続けるためには、移民の活躍が欠かせないことがわかります。

全米科学・技術・医学アカデミーはすでに1997年の報告書で、移民はアメリカ経済に正味のプラス効果を与えるという結論を出しています。2017年の報告書では、移民のいないアメリカの未来は暗いものになると指摘します。GDPは今よりはるかに低くなり、ひとり当たりGDPも同じように低下していたはずです。

アメリカ経済にとって不動産市場は非常に重要で、移民の流入と彼らの子孫の成功が新たな住宅需要を生み出します。2030年になる頃には、移民の創造的なダイナミズムが、アメリカをより強くしています。

移民がアメリカ経済を元気にしているなら、日本もこの政策を見習うべきです。プロフェッショナル人材の移民が増えれば、日本のベンチャー・スタートアップ界隈も今以上に成長するはずです。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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