ポール・ルイ・イスケの失敗の殿堂―経営における「輝かしい失敗」の研究の書評

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失敗の殿堂―経営における「輝かしい失敗」の研究
著者:ポール・ルイ・イスケ
東洋経済新報社

本書の要約

輝かしい失敗(Brilliant Failures)とは、価値を生み出そうとしたけれど、本来意図した結果が出せなかった試みです。挑戦による失敗が異なる結果をもたらし、そこから成功への道が見つかることもありますし、失敗体験から私たちは多くの学びを得られます。輝かしい失敗を繰り返すことで、成功の可能性が高まります。

イノベーションンには失敗が不可欠

失敗覚悟で挑戦することは重要だ!(ポール・ルイ・イスケ)

新しい試みの90%以上が失敗に終わっていると言います。多くの人はたった一度の失敗であきらめてしまい、イノベーションを起こせずにいます。失敗した際の教訓を今後に活かすことで、私たちは様々なチャンスを手に入れることができます。失敗を次につなげられる人が、イノベーションを起こせる人なのです。

失敗の殿堂―経営における「輝かしい失敗」の研究の著者のポール・ルイ・イスケは、マーストリヒト大学ビジネス・経済学部教授で、「輝かしい失敗研究所」のチーフ・フェイリュア・オフィサー(最高失敗責任者)として、イノベーションと失敗の関係を研究しています。イスケは失敗には成功につながる「輝かしい失敗」があると述べています。

輝かしい失敗(Brilliant Failures)とは、価値を生み出そうとしたけれど、本来意図した結果が出せなかった試みであり、避けられる過失や犯罪は該当しない。また、そこから学んだ教訓や学習経験は共有される。

輝かしい失敗はその反対で、それについて語りたいと思うような失敗です。著者は輝かしい失敗をその結果に基づ木、以下の2つのタイプに分類します。
■タイプ1……意図した結果と違うが、依然として価値があり、時には意図した結果を上回ることもある。
■タイプ2……当初に意図したほどの価値は生み出せなかったが、学習体験を積める。

失敗の原因は、私たちの弱みや不運だけではない。人間の最も重要な資質のーつは創造性だ。複数のパラダイムを使って考えたり、異なる角度から物事を見ることで、新しいパターンをつくり出せる。別の言い方をすると、創造性とは、何か新しいものを生み出す能力だ。そして、新しいものを生み出すときには、失敗するリスクがつきまとう。というのも、うまくいくかどうかわからないからである。

輝かしい失敗には、「輝かしい失敗=V×I×R×A×L」という方程式があります。
■V=ビジョン(何を達成しようとしたのか)
■I=インスピレーション(エネルギーをつぎ込んだのか)
■R=リスク管理(リスクにうまく対応したか。リスクは多すぎても、少なすぎてもよくない。リスクが少なければ、機会を逃すことになる)
■A=アプローチ(適切に準備しているか。一緒に協力したのか。そこにある知識を生かしたのか)
■L=学習(学んだことを応用したり、ほかの人と共有しているか)

この5つのスコアを掛け合わせることで、再現性を持たせ、輝かしい失敗というアイディアを広め、得られた結果や教訓を共有することができます。

コラボレーションが成功の鍵

失敗について人前で話すことは勇気が入りますが、イノベーションを起こすためには、あえて共有することが求められます。失敗の共有は他者への貢献にもなりますし、自分へのフィードバックになります。失敗を共有することで、新たな出会いをデザインでき、そこからコラボレーションが生まれることがあります。

コラボレーションの成功と失敗に関する調査結果を要約すると、コラボレーションを成功させるには3つのタイプの適合が必要であることがわかりました。

1、文化の適合
コラボレーションは、関係者がいくつかの基本的な原則や価値観に同意した場合にのみ成功します。多様性は良いことですが、メンバーの意見が一致しなければ、一緒に作業するのはひどく困難で骨が折れ、コラボレーションは成功しません。

2、戦略の適合
共通の目的はあっても、各当事者は常に独自の野心を持っています。共通の目的と個人の目的が互いに矛盾せず、理想的には互いに強化し合うときにのみ、コラボレーションはうまくいきます。

3、運用面の適合
コラボレーションを阻むのは、言語の壁、互換性のない(コンピュータ)システム、時差、場所の隔たり、時間の制約などだです。信頼、コミットメント、結果、優先順位の変更などの要因のーつ以上がうまく適合しなかったときに、コラボレーションはたいてい失敗します。

イノベーションを実現させるより効果的な方法は、すべての知識を自前で開発するよりも、必要な知識をすでに身に付けた人やうまく開発できる人を探すことだという事実を、組織はとうに認識している。

イノベーションを起こすためには、独自の知識を使う方法だけでなく、関連する知識をよそで見つけて使う方法を組織が習得すべきです。外部で知識を見つけ、評価し、それを既存の知識に結びつけるために、より多くのスキル開発が求められます。

他者とつながる能力や、どのようにコラボレーションの成果を市場にうまく持ち込むかという判断力も必要となります。そのためには、他者が持つ知識について基本的な理解があり、成功を分かち合う覚悟が欠かせません。

成功には多様な能力が欠かせません。そのためには、勇気を持って自分の失敗を明らかにすべきです。失敗を犯した際には様々な知見を取り入れ、何度もやり直すことが重要です。「前回よりもうまくできたか?」を自問し、そうでない場合には、もう一度チャレンジすることを自らに課しましょう。

失敗にや対する世間の空気を変えなければ、イノベーションは起こせません。

現状では、失敗する権利は間違いなく固有の権利となっていない。おかれている環境の組織的な愚かさのせいで失敗した人は、その後、目標達成のためにセカンドチャンスを与えられない傾向すら見受けられる。

私たちが生きている現代は複雑な世界となっており、イノベーションを起こさなければ、課題の解決が難しくなっています。

しかし、失敗が許容されない世界からは、イノベーションは生まれません。人々の失敗への偏見を取り除き、失敗体験は素晴らしいという空気をつくる必要があります。失敗を許容し、共に失敗し、共に学んでいくことが、イノベーションには欠かせないことを著者は私たちに教えてくれました。

次回は著者が明らかにした「失敗の16のルール」を紹介します。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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