マウロ・ギレンの2030 世界の大変化を「水平思考」で展望するの書評


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2030 世界の大変化を「水平思考」で展望する
著者:マウロ・ギレン
出版社:早川書房

本書の要約

2030年、今からほぼ10年後、世界の消費スタイルは、今とは異なったものになります。アジアとアフリカの人口が増加し、購買力が高まります。また、高齢者人口も増え、14億人の市場を形成します。経営者は今後の変化のシグナルを察知し、様々なデータを活用し、水平思考に基づき戦略を立案しましょう。

激変する2030という未来

私たちの知るそのような世界は急速に消えつつあり、目の前に広がるのは、新たなルールが動かす、ひどく困惑する新たな現実だ。いつの間にか、ほとんどの国で祖父母の数が孫の数を上まわる。アジアのミドルクラス市場が、アメリカと欧州を合わせた規模をしのぐ。男性より女性のほうが多くの富を所有する。ふと気がつくと、産業ロボットが製造労働者の数を超えている。人間の脳よりコンピュータのほうが多くなり、人間の目よりセンサーの数が増え、国の数より多くの通貨が出まわる。それが2030年の世界である。(マウロ・ギレン)

2030年、今からほぼ10年後、世界の消費スタイルは、今とは異なったものになります。消費の中心が欧米からアジア・アフリカに移り、世界の富は男性より女性の方が多く持つようになるとペンシルベニア大学ウォートン・スクール教授のマウロ・ギレンは予測します。

私たちは未来の変化を知ることで、その変化をチャンスに変えられます。人口データや都市の変化やイノベーションの推移を予測することで、ビジネスのヒントを見つけられるようになります。2030年の未来予測について、このブログでも今までに何冊か取り上げていますが、他の本がテクノロジーに重きをおく中で、本書はアジアやアフリカなどの新興国の変化に力点を置いています。(2030年以降の未来予測の関連記事)

 2030年は先が見えない未来ではなく、ある程度の予測が可能です。

本書が描く未来像の影響を受ける人は、すでにそのほとんどが生まれている。彼らの学歴や現在のソーシャルメディアの利用パターンを考えれば、消費行動をおおまかに描き出すことは可能だろう。あるいは、80~90歳まで生きる人の数についてもかなり正確に算出できる。また、現時点でそれなりに確かな自信を持って予測できるのは、一定の割合の高齢者が介護者──人間にせよ、ロボットにせよ──を必要とすることだ。後者の場合、そのロボットは様々な言語を多様なアクセントで話し、自分の意見は押し通さず、休みは取らず、高齢者の金融資産を騙し取ることもなく、精神的や身体的に虐待することもない。

現在は中国とアジアが新たなマーケットとして注目されていますが、今後、マーケットは2つの大きな柱を持ちます。エリア的には、最大の人口規模になることが予測されるアフリカより年代的には人口がもっとも多くなる高齢者にフォーカスした企業がシェアを高めていきそうです。

企業は変化するマーケットを狙え!

役に立つのは、新たな時代へと向かう変化を、ゆっくりと進行するプロセスだと捉えることだ。一つひとつの小さな変化が私たちをパラダイムシフトへと近づけ、ある日とつぜん、何もかもを大きく変えてしまう。つい忘れがちだが、小さな変化は積み重なる。変化を、ゆっくりと容器を満たしていく一滴の水だと考えよう。

2030年に焦点を合わせると、南・中央アジア(インドを含む)は人口規模で世界1位を確実にしています。2位はアフリカ、僅差で東アジア(中国を含む)が3位に後退します。東南アジア(カンボジア、インドネシア、フィリピン、タイなど)が4位、ラテンアメリカが5位と続いて、1950年に世界第2位を誇った欧州は6位に転落します。

2030年以降、南アジアとサハラ以南のアフリカが世界的な人口密集地域になっています。中国、韓国、日本などが構成する東アジアは、もはや世界で最も人口が多い地域ではなくなっています。

ケニアやナイジェリアのようなサハラ以南の国でも、出生数が減ることは間違ありませんが、それでも、ほとんどの国と比べてもはるかに高くなり、それらの地域では平均寿命の著しい延びが見られるようになります。

世界の消費の中心はアジアに移り、企業はアジアマーケットを意識した商品開発を行なっているはずです。世界的には少子高齢化が進み、富は都市に集中します。女性の教育レベルが上がり、収入も増え、女性の富裕層が今後増加していきます。

10年もしないうちに最も大きな世代となるのは60歳以上だ。今日、その世代がアメリカの富の80パーセントを所有し、「高齢者市場(グレーマーケット)」が生まれつつある。彼らこそ最大の消費者層だ。改めて高齢者にも焦点を合わせておかなければ、大企業も中小企業も時代に取り残されてしまう。

ボストン・コンサルティング・グループの試算によれば、成長する高齢者マーケット(グレー市場)への準備ができている企業は7社に1社しかないことがわかっています。既存企業もスタートアップも、ほとんどの技術、マーケティング、セールス部門が若者をターゲットにしていますが、今こそこのグレー市場に商機を見出すべきです。

2030年になる頃には、60歳以上は現在の10億人から世界中で14億人に増加します。一部の見積もりによるとその頃には、グレー消費者の購買力は20兆ドルにも達すると言われています。若者だけにフォーカスするのではなく、グレー市場の動向をしっかりと把握し、チャンスをものにしましょう。

未知の脅威をチャンスに変えるには「水平思考」で展望することが重要です。著者は以下の8つの視点で、世界を見るべきだと言います。
1、アフリカのベビーブーム
2、経済社会における高齢者(グレー)の財布を狙う
3、中国やインドなどのミドルクラス拡大
4、女性の所得増と地位アップ
5、地球温暖化時代の都市の役割
6、スマホによる技術革新・創造的破壊
7、シェアリングエコノミー
8、ブロックチェーン・仮想通貨

これらを個別に考えるのではなく、まとめて捉えることで、新たなチャンスが見えてきます。人間の視界と同じように、企業やいろいろなタイプの組織も効果的に機能するためには、中心視野の周辺から入ってくるかすかなシグナルを察知し、解釈し、それに基づいて行動しなければなりません。著者がピックアップした8つの未来の予兆から、水平思考を行い、自社の戦略を組み立てるようにしましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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