朝倉慶氏の株高・資源高に向かう世界経済入門 株がバブルというウソの書評


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株高・資源高に向かう世界経済入門 株がバブルというウソ
朝倉慶
ビジネス社

本書の要約

中国のデジタル人民元の動きが加速しています。デジタル人民元が先行する中、アメリカはこのデジタル通貨戦争で覇権を握れるのでしょうか?残された時間が限られる中、この数年のデジタル通貨の動向によって、米中両者の覇権争いの帰趨が決まるはずです。

米中の覇権争いがデジタル通貨でも激化!

中央銀行デジタル通貨(CBDC)を進めるかどうか、またどのように進めるか。いかなる場合でもその前に幅広い声に耳を傾けることを約束する。(ジェローム・パウエル)

中国とアメリカの覇権争いが激しさを増しています。最近では、テクノロジーだけでなく、金融面、特にデジタル通貨での争いが注目を集めています。

FRBのパウエル議長もデジタルドルの発行を視野に入れ始めています。いよいよドルのデジタル化という世界の通貨市場を激変させる動きが現実化してきたのです。

中央銀行デジタル通貨、CBDCとは文字通り、CB(セントラルバンク)、DC(デジタルカレンシー)をつなげた言葉であり、中央銀行が紙幣でなくデジタル化された通貨を発行するということです。米国のデジタルドル、中国のデジタル人民元、ユーロ圏のデジタルユーロ、日銀がデジタル円を発行していくことになります。

新興国を含めた世界各国の中央銀行がデジタル通貨を発行する構えをみせる中で、米国によるドル支配の終焉が起こる可能性が高まっています。中国のデジタル人民元の影響力が格段に広がり、覇権争いが激化していくはずです。

米国は米ドル現物の流通を主流とした”通貨体制の継続”を望んでいましたが、世の中の変化がそれを許さなくなっています。フェイスブックのリブラ構想やビットコインなどの暗号資産の爆発的な広がり、中国政府によるデジタル人民元の発行が、米国の態度を変化させたのです。

中国政府は2022年、北京で開催される冬季オリンピックまでにデジタル人民元の発行を実現すると明言しています。米国は中国の動きに先行し、優位性を発揮する必要があります。デジタル人民元が発行される前後にデジタルドルも世界に流通させると著者は指摘します。

中国は世界第2のGDPを叩き出す大国ですが、人民元は世界の為替市場において現在2%のシェアしかありません。使い勝手が悪い人民元のシェアを高めるのであれば、人民元を米ドルのように”自由に使える通貨”にしなければなりません。

中国の経済的な発展は著しく、このペースで行けば、GDPにおいて米中の逆転が2030年以前に起こる確率が高くなっていますが、その際、中国は米国から覇権を奪いたいと考えているはずです。当然、中国は米ドルに依存する体制から抜け出したいはずです。中国は最終的には自らの通貨である人民元の世界的な流通を目指してくるはずです。

中国はデジタル人民元を実験的に導入して、例えば一帯一路で中国が強い影響力を持つような国々からデジタル人民元を使用してもらう形を取るでしょう。ラオスやカンボジアなどのアジアの中国寄りの国がこの候補になるはずです。

デジタルドルに先行するデジタル人民元

中国は今回のコロナのパンデミックを契機として、発展途上国をはじめとしてワクチン供与を積極的に行い影響力の拡大を目指しています。アフリカにおいても中東においても中国は自らの勢力圏を拡大しようとしています。中国はこれら一国一国の通信インフラを整備、ワクチンを供与、さらにデジタル人民元を使ってもらうことで、中国は各個撃破で自らの勢力圏を拡大させていく腹づもりと思われます。場合によって中国は援助や貿易上のメリットなどもデジタル人民元を使うことを条件として、自らの影響力の拡大を目指す可能性もあるでしょう。

例えば、親米国のUAEで、中国製のワクチンの3回目の接種が始まることになりました。UAEは中国製のワクチンの製造拠点となることが決まっています。さらに、UAEはファーウェイの5Gの技術を使用することも決めています。アジアや中東の国々が通信インフラとともに、中国のデジタル人民元を使うようになれば、ドルの覇権が揺らぎ、結果、ドルの過剰流通からドル暴落が起きる可能性も出てくるのです。

また、カンボジアなどでは自国の中央銀行が発行するデジタル通貨「バコン」が広く流通し始めています。今までカンボジアの預金の8割まではドルで保有されていましたが、デジタル通貨へのシフトが始まっています。銀行口座を持たない国民の携帯電話の普及率は高く、ドルを使うよりデジタル通貨の利用が便利だと感じているのです。新興国の一部で従来広く使われていた米ドルから、自国が発行するデジタル通貨への転換が起こる可能性が高まっています。

中国としては、まずアジア全域や一帯一路で関わる新興国を中心としたエリアで、デジタル人民元を使用する経済圏を構築していくはずです。中国は着々とデジタル人民元の発行に備えて、布石を打ちはじめています。実際、2020年10月中国当局は広東省深圳でデジタル人民元の普及実験を開始しました。12月には江蘇省蘇州で10万人を対象にさらに大規模な実証実験を行っています。

今春からは、実験を行っている地域であれば誰でも「デジタル財布」を作れるようになっています。中国工商銀行など大手行の口座があれば、アプリで数分のうちに開設できるようになりました。自らの銀行口座にある人民元をデジタル人民元に振り替えできるようになったのです。在10の地域で行っている実証実験を当局はさらに28の地域に拡大することを発表しています。1回の支払いに使える上限額を引き上げるなど、デジタル人民元の利用を促進しています。

デジタル人民元は、1日あたり1000万人が利用する北京の地下鉄でも利用できるようになっています。2022年に開催される北京オリンピックにおいても、旅行者がデジタル人民元を使用できるようになあります。中国を訪れた人は皆、自動的にデジタル人民元を保有することとなり、誰でも中国政府の監視下に置かれるようになるのです。

一方、中国当局はビットコインをはじめとする暗号資産の規制を強化することを発表しました。中国当局は金融機関や決済企業が暗号資産関連の業務を行うことを全面的に禁止したのです。金融機関は暗号資産を人民元や海外通貨と交換することもできなくなりました。

また、デジタル人民元を普及させることで、アリペイやウィーチャットペイの力を徐々に削ぎ、2社の寡占体制を変えていくと著者は指摘します。

デジタル人民元を統括する中国人民銀行がほとんどの決済シェアを奪うことができれば(徐々にそのように誘導する)、中国当局は資金の流れを100%知ることができるようになります。そうなれば中国全体の実体経済を当局が完全に監視・把握でき、最終的に管理できるというものです。

デジタル人民元を広く普及させることは、中国当局がすべての資金の流れを知ることができます。また、海外にデジタル人民元を拡散させれば、ファーウェイの通信機能に乗ってあらゆる取引を把握できるようになるのです。

FRBとしてはドルの覇権体制を維持したいのですから、仮に中央銀行デジタル通貨の国際基準ができるのであれば、その作り方に最初から関与し、米国が主導権を握ることを目指すはずです。

ECBは2026年以降、正式にデジタルユーロを発行するといわれる中、デジタルドルやデジタル人民元の動きが、この1、2年で加速するはずです。デジタル人民元が先行する中、アメリカはこのデジタル通貨戦争で覇権を握れるのでしょうか?残された時間が限られる中、この数年のデジタル通貨の動向によって、米中両者の覇権争いの帰趨が決まるはずです。米中のデジタル通貨の情報から目が離せなくなっています。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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