何もしない(ジェニー・オデル)の書評


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何もしない
ジェニー・オデル
早川書房

本書の要約

アテンションエコノミーは、私たちに多くのストレスを与えます。SNSは時に他者への嫉妬や取り残される恐怖(孤独)をもたらします。SNSのタイムラインから距離を置き、内省する時間を持つことで、癒しを得られます。何もしない時間を持つことが「セルフケア」につながるのです。

現代において、何もしないことは罪なのか?

目覚めている時間のすべてが生計を立てるための時間と同一になる状況において、自分の余暇さえもフェイスブックやインスタグラムの「いいね!」の数で評価するために差し出し、その成果を株価をチェックするかのごとくつねに気にして、自分の個人ブランドが成長するようすを監視する暮らしを続けるうちに、なんでもないことに時間を費やすのは正当化できなくなり、時間はすべて経済資源となる。何もしないでいると投資にたいするリターンは望めない。ジェニー・オデル

テクノロジーが進化し、ギグワークが当たり前になる中で、人の時間の使い方は変化しています。時間を切り売りしたり、SNSで情報発信することに価値があるという考え方が主流になり、何もしないことは意味がないことだと考えられるようになってきました。時間の価値を生産性で測るようになることで、私たちは自らを忙しくしているのです。

iPhoneなどのデジタルギアを朝から晩まで手放せなくなっている現代人が、デジタルデトックスを実践することは難しくなっています。デジタルに依存している私たちには、何もしないことという選択肢はなくなりつつあります。

サンフランシスコの女性アーティストジェニー・オデルは、バードウォッチングとバードリスニングによって、何もしないことの重要性に気づきます。鳥の鳴き声を聞くために、彼女は自らの五感を総動員し、人間らしい時間を再び過ごせるようになりました。

原初のタイトルは、How to Do Nothing: Resisting the Attention Economyで、著者は私たちにアテンションエコノミーへの抵抗を問いかけています。FacebookやTwitterは金儲けのために、私たちに魅力的なコンテンツを絶えず見せつけます。インフルエンサーの写真や動画に時間を割かれることで、私たちは自らの貴重な時間を浪費しています。

デジタルギアやSNSから離れない限り、私たちは「何もしない」時間を取り戻せません。

非商業的空間が失われていくのと同じように、自分の時間と行動がすべて商業的なものになりうると私たちは気づいている。公共空間が、いかにも公共のものだと見せかけた小売りスペースや企業所有の得体の知れないパークに姿を変えているように、私たちは、「われわれのしたいこと」とは似ても似つかない、余暇は妥協するべきだという考え方、つまりフリーミアム(一定のサービスまでは無料提供だが、それ以上のサービスに課金するビジネスモデル)な余暇を売りつけられているのだ。

デジタルギアから距離を置き、生産性を拒絶することが私たちに求められています。人の話や自然の音を聞くための時間を確保したほうがよさそうです。

数年前から私は「瞑想」を習慣にしています。マインドフルネスを取り入れることで、頭をからっぽにでき、落ち着きを取り戻しました。

マインドフルネスを行うことで、自分自身の心を意識できるようになり、SNSなどの情報に流されなくなります。自分との対話を重ねることで、人生の質を高められるようになることに気づきました。

アテンションエコノミーに抵抗しよう!

「何もしない」とは、ある意味で洗脳を解く装置であり、バラバラになってまともに機能しなくなったさまざまな感情に滋養を与えるものだ。このレベルで「何もしない」を実践すると、注意経済に抵抗するためのツールがいくつか手に入る。最初に手に入るツールは修復にかかわるものだ。この時代にあっては、「何もしない」時間や空間に身を置くことが何よりも大切だ。

他者に接続する時間と自分の感受性を大切にする時間のバランスを取ることが、現代人には求められています。インターネットやSNSの普及が、情報量の爆発的増加と情報そのものの価値の低下をもたらしました。注目を集めること自体が重要視され、本来自分に不要な情報が私たちの周りに溢れています。アテンションエコノミー(注意経済)が私たちを不幸にしているのです。

刺激が多すぎる現代は、私たちに多くのストレスを与えます。SNSは時に他者への嫉妬や取り残される恐怖(孤独)をもたらします。他者の投稿から離れ、内省する時間を持つことで、癒しを得られます。何もしない時間を持つことが「セルフケア」につながるのです。

「何もしない」を実践するとことで、聞く力を育めます。 四六時中、アテンションエコノミーとかかわり合って暮らす私たちは、自然との対話や自分との内省の時間を減らしています。

〈ディープ・リスニング〉を実践して、相手をより理解することに時間を費やしましょう。140文字のメッセージだけでは、相手との関係を深めることはできません。「接続性」(connectivity)だけでなく、「感受性」(sensitivity)を養う時間を日常に取り戻すのです。

感受性とは対面の会話から生まれ、時に相手とぶつかることもあります。お互いの話を注意深く聞くことで、自分が間違っていることに気づけたり、相手をリスペクトできるようになります。SNSの接続性だけでは、この感受性は養えません。

利用してやろうという思惑とは無関係の非商業的な活動や思考のために、維持(メンテナンス)のために、ケアのために、自立共生(コンヴィヴィアリティ)のために、私たちの空間と時間を死守するべきだ。さらに、私たちの身体、別の存在の身体、私たちが身を置く景観の集合をあからさまに無視して、軽んじるあらゆるテクノロジーから、人間の動物性をなんとしてでも守らなければならない。

月に一度、私は茶室での時間を過ごします。茶室にはiPhoneも時計も持ち込めません。デジタルギアを外し、目の前のお茶に集中することで、脳がスッキリします。茶室という何もない空間で、自己に向き合う時間を持つことで、ストレスを軽減できるのです。月に1度、わずか1時間の茶室での時間によって、自分にエネルギーを与えることができるのです。何もせずに今に集中する時間を持つことが、私らしさを取り戻すことにつながります。

リラックスし、施策に耽ったり、仲間との対面での会話の時間を持つことで、私たちは幸せになれるのです。デジタルデットクスにお金をかけなくとも、自然の中での散歩や瞑想を習慣に取り入れればよいのです。SNSから一定の距離を置き、自由意志で自分の時間をコントロールするようにすべきです。豊かさは今ここにあると考え、自然や他者との会話に喜びを見出しましょう。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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