テクノロジーは私たちの脳と体を支配する?ユヴァル・ノア・ハラリの21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考の書評

人間には体がある。過去1世紀の間に、テクノロジーは私たちを自分の体から遠ざけてきた。私たちは、自分が嗅いでいるものや味わっているものに注意を払う能力を失ってきた。その代わり、スマートフォンやコンピューターに心を奪われている。通りの先で起こっていることよりもサイバースペースで起こっていることのほうにもっと関心を払う。スイスにいるいとこと話すのは、かつてないほど簡単になったが、朝の食卓で配偶者と話すのは難しくなった。(ユヴァル・ノア・ハラリ)


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テクノロジーが人のコミュケーション能力を劣化させる?

ユヴァル・ノア・ハラリ21 Lessons: 21世紀の人類のための21の思考書評を続けます。私たちの身体はITの進化についていけずに、日々問題を起こしています。多くの人はマルチタスクができず、iPhoneで世界の誰かとのコミュニケーションを楽しむ間に、目の前の奥さんとの会話をおざなりにし、意味のない喧嘩を引き起こしてしまいます。奥さんとの会話に集中しようと決めても、iPhoneの魅力に勝てないダメな旦那を続けている自分を見るたびに情けなくなります。

太古の狩猟採集民は、絶えず油断なく気を配り、食料を探し、敵の存在に注意を傾けていました。現代人のリスクは彼らに比べ少なく、それほど鋭い感覚は必要としません。現代人は目の前のことを意識するのをやめ、注意を払わなくなっています。

スマートフォンで電子メールを送りながらスーパーマーケットの通路を歩き回り、保健所などがすべて品質を監督している無数の惣菜から好きなものを買うことができる。だが何を選んだにしても、テレビの画面の前で、メールをチェックしたり番組を観たりしながら、味にはろくに注意も払わず、せかせかとお腹に入れることになりかねない。

オンラインのコミュニケーションが魅力的になることで、私たちは目の前のリアルを大事にしなくなっています。コミュニティはオンラインで始まってもかまいませんが、オフラインの世界にも根を張らなければなりません。フェイスブックのマーク・ザッカーバーグは 2017年2月の声明で、オンラインのコミュニティはオフラインのコミュニティを育むのを助けると説明しました。

しかし、多くの場合、オンラインはオフラインの犠牲の上に成り立っており、両者には根本的な違いがあります。フェイスブックを優先しようとしたら、そこに時間を割かなければなりませんし、オフラインには物理的な移動が伴います。離れたところに住む病気の友人にお見舞いの言葉をメッセンジャーで送ることはできますが、お花を持ってのお見舞いはできません。

人間には体がありますが、過去1世紀の間に、テクノロジーは私たちを自分の体から遠ざけてきました。私たちは、自分が嗅いでいるものや味わっているものに注意を払う能力を失ってしまったのです。スマートフォンやコンピューターに心を奪われ、誰かとのコミュニケーションに現を抜かしています。
 
自分の周りのリアル社会で起こっていることよりも、サイバースペースで起こっていることのほうに関心を払うことは正しいことなのでしょうか?スマートフォンの先にいる誰かとのコミュニケーションと目の前の人のどちらが大事なのでしょうか?テクノロジーの進化がリアルなコミュニケーションを阻害し、人間そのものを変化させています。
 

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自分を失う時代が近づいている?

人々は、「経験をシェアする」という名目で、自分に起こっていることを、他人にどう見えるかという観点から理解することを促される。何か胸の躍るようなことが起これば、フェイスブックのユーザーは本能的にスマートフォンを取り出し、写真を撮り、投稿し、「いいね!」という反応が返ってくるのを待つ。その間、彼らは自分自身がどう感じているのかには、ほとんど注意を払わない。それどころか、彼らがどう感じるかは、オンラインの反応によってしだいに決まるようになってきている。

ソーシャルメディアの友人たちの反応ばかりを気にして、自分の感情を私たちは置き忘れています。自分との対話の時間がiPhoneやソーシャルメディアによって、犠牲になっています。リアルの交流や1人の時間を減らすことで、自分の体や感覚を失い、疎外感を抱く人が増えています。

ソーシャルメディアのコミュニケーションを増やすことで、孤独を感じるのは本末転倒です。自分の体とのかかわりを失うことが、私たち現代人のリスクになっています。自分の体にしっくり馴染めないなら、世界との関係をよくできる訳がありません。

フェイスブックはリアルのコミュニティを大事にしようとしていますが、そのためにはオンラインとオフラインの間の溝を埋めなくてはなりません。フェイスブックをはじめとするオンラインの巨大企業は、人間を視聴覚的な動物すなわち、2つの目と2つの耳が10本の指と電子機器の画面とクレジットカードにつながったものと見なしがちですが、人間には体があることを思い出さなければなりません。

オンラインのアルゴリズムには限界がありますが、GAFAはテクノロジーの力でオンラインとオフラインの垣根を無くそうとしています。グーグルグラスのような機器やボケモンGOのようなゲームは、オンラインとオフラインの区別を取り除き、両者を融合させて単一の拡張現実にするようにデザインされています。

さらに深いレベルでは、バイオメトリックセンサーや、脳とコンピューターを直接つなぐブレイン・コンピューター・インターフェイスが、電子機械と有機的な体の境界を少しずつ消し去り、人体という領域に文字どおり食い込むことを目指している。

巨大なテクノロジー企業は、いったん人間の体と折り合いをつけてしまえば、私たちの目と指とクレジットカードを操作しているのと同じやり方で、私たちの体全体を支配し、操作しようとするはずです。体という感覚を失い、自分という存在を否定することが果たして幸せなのでしょうか?テクノロジーに脳と体を奪われる時代が近づいています。

まとめ

テクノロジーの進化が私たちの脳と体の働きを変えています。GAFAなどの巨大IT企業は私たちの脳と体を支配し、行動をコントロールしようとしています。自分を失わないために、人は何ができるのでしょうか?時にはテクノロジーとの距離を置く必要があります。

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この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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