たった1人からはじめるイノベーション入門 何をどうすればいいのか、どうすれば動き出すのか
竹林一
日本実業出版社
本書の要約
たった1人のWILLから「新しい軸」が生まれて、さまざまな商品・サービスなどの事業のアイデアが芽を出して、たくさんの人を巻き込むなかで、ひとつの事業へと結実します。やりたいことをやり、多くの人を巻き込むこと、あきらめないことがイノベーションには欠かせません。
イノベーションはWILLから始まる!
「自分の意志に従い、信念を持ってやり続ける人がいる。それに賛同した人が集まって、新しい価値が生まれる。最後に外部の人たちがその価値に『イノベーション』というレッテルを貼る」つまり、「自分は、いまイノベーションを起こしているんだ!」なんていう人はいなくて、「自分がやりたいと考えたこと」をやりきった後に新しい価値が生み出されている。(竹林一)
「新しい仕組みを創って、新しい価値が生み出されたら、それはすべてイノベーションだ」と著者の竹林氏は指摘します。そのためには新しい軸を作り、「世界観」を新しくデザインする必要があります。
「アイデア」というと、特別なもののように感じるかもしれませんが、そのはじまりは、「ちょっとしたWlLL(意志)」から起こります。「こんなことしたいんだ」という思いから「じゃあ、どうして実現するか」と考えるうちに、次のアイデアが生まれます。それをシェアするうちに、仲間からの協力が得られ、やがてビジネスモデルを創造できるようになります。
イノベーションを起こすためには、「こうありたい」という理想の未来を描き、そこからバックキャストで社会的課題を考えるようにします。次に理想の未来をつくるために、いま現場で何が起こっていて、何をやるべきかをフォーキャストで考え、未来とのギャップを埋めていきます。
「未来」と「現在」という2つの時間軸で考え、未来と現在をつなぐトンネルが貫通する地点にビジネスにおける「新しい軸」のヒントがあります。トンネル工事を成功するためには、未来から掘り進む人と現場から掘り進む人とのコミュニケーションをよくすることが欠かせません。
コミュニケーションがうまくとれていないと、近くでお互いのトンネルを掘る音はするけれど、いつまで経っても貫通しない。つまり、事業にならないというわけです。イノベーションの構想はたった1人からでもはじめられますが、その実現のためにはさまざまな立場の人を巻き込むコミュニケーションカが求められます。
「未来から考える人」と「現場から考えていく人」が常日頃からコミュニケーションをとっておく必要があります。
イノベーションは「秘密結社型ビジネスモデル」からはじまります。最初はWILLを持った人たちが集まって、「
「秘密結社」というのは、
エフェクチュエーションの5つの原則
本書には、インド人経営学者のサラス・サラスバシー教授が、エフェクチュエーション:市場創造の実効理論のなかで提唱した5つの原則が紹介されています。アントレプレナーシップを持った人には、以下の共通点があるのです。
・手中の鳥の原則
新しい方法ではなく、既存の手段を用いて新しいもの想像します。
・許容可能な損失の原則
損失が出ても致命的にはならない許容範囲のリスクをあらかじめ設定します。
・クレイジーキルトの原則
形も柄も違う様々な端切れを縫い合わせて1枚の布をつくるクレイジーキルト(パッチワーク)をビジネスに活用します。顧客や競合他社、従業員などをパートナーと捉え、一丸となってゴールを目指します。
・レモネードの原則
酸っぱくて使い物にならないレモンに工夫を凝らして、甘いレモネードを作ります。予期せぬ事態が起こっても偶然をテコにして、結果を出します。
・飛行機の中のパイロット原則
コントロール可能な活動に行動を集中することで、良い結果を出せます。
未来は予測できるという前提の目的ありきの「コーゼーション」では答えが見つけづらくなっています。VUCAの時代にイノベーションを起こすためには、いま手にしているものからビジネスを考える「エフエクチュエーション」的な考え方が有効なのです。
たった1人のWILLから「新しい軸」が生まれて、さまざまな商品・サービスなどの事業のアイデアが芽を出して、たくさんの人を巻き込むなかでひとつの事業へと結実する。
まずは、自分の「WILL」を明らかにし、それを発信することで仲間が現れます。あとは失敗を恐れずに、行動を続けるうちに、よいご縁が生まれたり、奇跡が起こります。結果を出したければ、「起承」の人と「転結」の人を仲良くさせ、彼らの力を引き出すことです。
最初から成功するビジネスはなく、そこには大きなハードルが待ち受けています。イノベーターは決してはあきらめてはいけないという著者のメッセージが響きました。自分のやりたいことであれば、あきらめないはずですから、まずは自分のやりたいことにフォーカスすべきです。
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