迫りくる大きな現実を見つめよ
ピーター・センゲ
ダイヤモンド社
本書の要約
サプライチェーンの抜本的改革が求められる時代における企業経営の課題を解決するためには、組織の境界を超えることができるリーダーの育成が欠かせません。部分最適ではなく、システム全体から正しい答えを見つけるシステム思考と多くの人から学ぶことができるリーダーが、複雑になった世の中の課題を解決します。
複雑な課題を解決するために必要なこと
企業をコミュニティと見なす意識を、いまの私たちはほとんど失ってしまいました。しかし、企業はともに働く人々の集団なのです。コミュニティ志向の強力な文化はめったにありませんが、これがないと、新しいビジョンを構築することはできません。(ピーター・センゲ)
学習する組織論で有名なピーター・センゲは、リーダーとは技術や経営からプロセスや企業文化に至るまで、イノベーションを考案する人だと定義します。組織にビジョンを共有し、課題を解決するために、企業をコミュニティだと捉えるべきです。
特に、環境問題などを解決し、サスティナブルな世の中を実現するためには、組織が自らを、さらに大きなシステムの一部として認識しなければなりません。企業は学びの境界を無くし、社会との共生を目指すことで、よりよい社会を実現できるようになります。
リーダーはそれまで接点のなかった相手と協力することを学ぶようにすべきです。学習する組織を生み出すためには、システム思考とチーム学習が欠かせません。その際、リーダーは組織内部だけでなく、外部の人たちの知識や体験を取り入れるべきです。自社のビジョンをNGO(非政府組織)などの外部のチームにも共有する必要があります。
大きなシステムは複雑すぎて、一人では把握し切れません。システムの内外を問わず、境界をまたがることが多すぎるため、組織外の人たちの知識や体験も積極的に活用すべきです。
社員に積極的に動いてもらうためには、意欲的なビジョンが必要になります。 環境保護運動において、企業の存在が悪だと喧伝されすぎた結果、企業で働く人はやましさを感じています。社員がやましい思いを抱いていては、人は大胆な行動を起こせずにいます。企業が積極的に環境問題に関与するというビジョンを示すことで、社員のモチベーションを高められます。
イノベーションに最も長けているのは優れた企業なのですから、そこに優秀な人を集める仕掛けを考えるべきです。NGOや政府だけでは、問題解決はできないと考え、企業のイノベーションをそれに掛け合わせるのです。 そのために企業は、NGOをはじめとする非営利組織と協力することを学ぶべきです。
リーダーとは境界を越えることができる人
ザ・コカ・コーラ・カンパニーは〈コーク〉を1リットルつくるために使う水の量を、従来の3リットル超から2.5ットルに減らすことを決めました。しかし、〈コーク〉1リットルに添加する砂糖の原料となるサトウキビを育てるためには、200リットル強の水が必要とされています。
同社はこれを見落としていましたが、WWF(世界自然保護基金)とパートナーシップのおかげで、農業の水消費量の問題も解決できるようになりました。
優れた企業は最高の人材を雇うだけでなく、自社より広くて深い知識を持つNGOと提携することによっても、常に専門性を拡大できるようになります。
ユニリーバは、すべてを持続可能な形で調達するという目標を達成するために、社内だけでなく、外部のイノベーションを採用しています。
不可能だと言われることほど、設計に携わる人々を奮起させるものはありません。
重要なのは地位ではなく、その人の持つ情熱、ネットワークを築く能力、組織の機微についての知識です。ラテン語の語源を見ると”lead”という言葉には 境界を越えるという意味があります。リーダーは境界を越え、 解決策を見つけることに熱中する人々のネットワークを構築する必要があります。
不可能なことを可能にするためには、境界を越えるリーダーが必要で、そのリーダーが力を発揮することで、メンバーの力を引き出せます。
サプライチェーンの抜本的改革が求められる時代における企業経営の課題を解決するためには、組織の境界を超えることができるリーダーの育成が欠かせません。部分最適ではなく、システム全体から正しい答えを見つけるシステム思考と多くの人から学ぶことができるリーダーが、複雑になった世の中の課題を解決します。
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