なぜ、我々はマネジメントの道を歩むのか 人間の出会いが生み出す「最高のアート」
田坂広志
PHP研究所
本書の要約
経営者は、自分が社員の人生を預かっていると考え、彼らに命懸けで語るべきなのです。語る言葉に魂が宿ることで、自ら姿勢を示すことで、部下の行動を変えられます。自分と部下を共に成長させると決め、自らの思考と行動を変えることで、弱かった組織を強くできるのです。
マネージャーが苦労を避けてはいけない理由
深い縁あって巡り会った部下や社員に対する、愛情。 もし、我々の心の中に、その愛情があるならば、必ず、我々は、素晴らしいマネジメントの道を歩むことができるでしょう。(田坂広志)
マネージャーは部下とよりよい関係を築くために、「深く豊かな人間観」を養う必要があります。そのためには人との出会いを大切にし、そこから深い意味を感じるようにすべきです。
時には、部下が自分との「相性の悪い人」かもしれませんが、そこには、深い意味があると考え、 彼らに貢献する姿勢を保つことで、自分をステップアップできるのです。また、仕事において与えられる「苦労」や「困難」にも深い意味があります。苦労や困難は自分と部下を成長させる機会だと考えましょう。これを乗り越えることで、部下に「働き甲斐」を与えられます。
我々の人生における「苦労」や「困難」とは、何か。 それは、できることならば避けて通りたい「不幸な出来事」ではない。 それは、我々の可能性を引き出してくれる「素晴らしい出来事」に他ならない。
私たちは苦労や困難があるからこそ、成長でき、喜びを得られます。そして、 苦労や困難があるからこそ、他者とのご縁を強くできるのです。
仕事は、苦労や困難があるから、「働き甲斐」を感じることができます。 人生は、苦労や困難があるから、「生き甲斐」を感じることができると考え、部下とともに苦労や困難を避けないようにすべきです。
経営者やマネージャー楽天性を身につけるべき理由
経営者やマネジャーが身につけるべき、「究極の楽天性」でしょう。たしかに、経営の世界、マネジメントの世界。様々な苦労や困難が、やってくる。しかし、何が起ころうとも、決して、命、取られるわけではない。
失敗した際に、上司が楽観性を持つことで、その危機を乗り越えられるようになります。大変なトラブルに巻き込まれても命を取られるわけではないと考え、必死に行動することで状況を変えられます。リーダーは部下が苦しんでいる時こそ、その場の空気を変える努力をすべきです。
部下は経営者やマネジャーの「後姿」から、学び、その姿勢を模倣します。リーダーが「後姿」が、喜びを伝えてくるならば、部下や社員は、変わります。「人間として成長することの喜び」を実際の行動で示すことで。部下は自ら成長できるようになります。
そのためには、上司自ら成長を続けなければなりません。上司が成長を止めれば、大切な部下も成長を止めてしまいます。言い換えれば、部下が成長しないのは、上司が成長していない証拠なのです。
著者はリーダーとは「山を登り続ける人間」だと定義します。人間成長という山をの頂を目指し、登り続ける人が強い組織を作れるのです。
そして、その人物の周りに多くの人々が集まってくるのは、結果に過ぎない。人々が集まってくることを求めて、山に登っているわけではない。自分に与えられた道を、精一杯に登っていく。 力の限り登つていく。すると、気がつけば、なぜか、同じ山道を一緒に登る人々がいる。その方々とのご縁を大切に、ときに、励まし合いながら、山道を登り続ける。ただ、誰よりも深く、その山道を登り続けていきたいという願いを持っている。それが、結果として「リーダー」と呼ばれるときもある。しかし、「リーダー」と呼ばれるために、山に登っているわけではない。
経営者は、自分が社員の人生を預かっていると考え、彼らに命懸けで語るべきなのです。語る言葉に魂が宿ることで、自ら姿勢を示すことで、部下の行動を変えられます。リーダーの本気度が組織の成長を決めるのです。
せっかく出会った部下とのご縁を大切にし、自分と部下を共に成長させると決めることで、弱かった組織を強くできるのです。部下と一緒に困難を乗り越える経験を重ねることで、部下との「深い縁」を築けます。
昭和の時代に厳しい指導を受けた私は結果、メンタルが強くなり、困難を乗り終えられるようになりました。しかし、時代は確実に変化します。ITが進化し、オンライン会議が当たり前になり、部下とのコミュニケーション時間が減る中、リーダーは新たなマネジメントを模索する必要があります。著者のこのアドバイスを今の時代にどう活かすかを考えましょう。
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