沢渡あまね氏のバリューサイクル・マネジメント ~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方の書評


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バリューサイクル・マネジメント ~新しい時代へアップデートし続ける仕組みの作り方
著者:沢渡あまね
出版社:技術評論社

本書の要約

DXを活用して、社員一人ひとりが「健全な組織のバリューサイクル」を回すことで企業は強くなります。経営者が示したビジョンに基づき、バリューサイクルをつくり、リーダー、マネジメント、現場の一人ひとりがそれぞれの役割を正しくアップデートしていくことで、企業は持続的に成長していきます。

健全な組織のバリューサイクルとは何か?

どんなに盤石な業界であっても、ビジネスモデルおよびビジネスモデルを支えるマネジメントの仕方を変化させていかなければ、早晩衰退するだろう。なぜなら、我々を取り巻くビジネス環境、人材マーケット、テクノロジーや法制度、自然環境や社会環境は著しく変化しているからである。(沢渡あまね)

環境が激変する中で、ビジネスモデルを変えられない企業は、スタートアップやベンチャーに狙われ、短期間にそのポジションを失うことが多くなりました。名門コダックはデジタルカメラの波に乗り遅れ、今やその存在すらありません。自動車業界もテスラの攻撃を受け、株価の時価総額を見れば、トヨタやGMよりもはるかに評価されています。未来から逆算し、ビジネスモデルを考え、マネージメントを捉えなければ、大企業も生き残れなくなっています。

企業には様々な経営課題がありますが、経営課題を解決することで、従業員が働きやすくなり、パフォーマンスが高まります。経営者がビジョンを示し、メンバーがコラボレーションしながら経営課題を解決することで、顧客やパートナーから支持されるようになります。

ワークスタイル&組織開発専門家の沢渡あまね氏は、マネージメントキーワードを言語化し、それをつなぐことが重要だと言います。

経営課題、すなわち経営のマネジメントキーワードと部門単位・現場単位のマネジメントキーワードをそれぞれ言語化して、接点を見出す。経営、部門、現場おのおのが何に取り組まなければならないのかイメージできるようにする。その「景色合わせ」こそが、組織変革の1丁目1番地だ。

その上でDXを捉えるようにすべきです。DXの最終ゴールはビジネスモデル変革で、最新のITツールを導入することではありません。課題を解決し、生産性を上げるためには、従業員やパトーナーとのコラボレーションが欠かせません。コラボレーションのためには、登場人物がデジタルでつながる必要があります。

1人でもアナログな仕事のやり方をした瞬間に、その行動はデータとして記録されませんし、蓄積もされません。関係者全員がデジタルを使うことで、コミュニケーションやコラボレーションが円滑になります。経営課題をスピーディに解決したければ、アナログなやり方を見直し、デジタルにシフトしていくべきです。

ビジネスモデルを変革するためには、経営者がビジョンを示し、以下のバリューサイクルを生み出す必要があります。

ビジョンにあった社員を採用することで、説明コストが下がり、育成がスムーズに行われます。採用された社員が期待された本来価値を創出することで、経営課題をスピーディに解決できるようになります。まさに、ビジョナリーカンパニーで提示された「同じバス理論」が、正しいことがわかります。偉大な組織への飛躍は何よりもまず、適切な人を主要な席につけることから始まるのです。

DXを活用して、社員一人ひとりがこのサイクルを回すことで、企業は強くなります。著者は6年以上かけてこのバリューサイクルをつくったそうですが、経営者はこのサイクルに基づき、経営を行うべきです。リーダー、マネジメント、現場の一人ひとりが、それぞれの役割を正しくアップデートしていくことで、企業は成長していきます。

4つのオープンが、組織のコラボレーションを生み出す!

沢渡氏は「健全な組織のバリューサイクル」を意識して、まずは、自分の半径5メートルの小さな世界を変えることが重要だと言います。「週5日×8時間」という働き方の常識を疑って、自分にあった働き方を一人一人が実践することで、私たちは幸せになれます。

そのために、4つのオープンを実践しましょう。これにより組織のコラボレーションやイノベーションが加速します。
■情報のオープン
■ソースのオープン
■環境のオープン
■ココロのオープン

自組織あるいは自分自身のビジョンやミッション、抱える問題・課題、理想の姿、得意とすること、不得意とすること、やりたいことをオープンにすることで、そのテーマに共感するファンや協力者とつながることができる。意志決定や日々の業務を遂行するために必要とする情報を、抱え込むのではなくむしろオープンに共有することで、解決のスピードが速くなる。情報を共有された人たちのエンゲージメントが高まり、チームの一体感とパフォーマンスが向上する。

企業は壮大なビジョンをつくり、発信することで、成長できるようになります。このブログでも何度も書いているようにMTP=Massive Transformative Purpose)を設定し、それを発信することで、多くの仲間を引き寄せます。

ピーター・H・ディアマンディス&スティーブン・コトラーの2人は、良質なコミュニティーをつくりたければ、以下の9ステップを実践するとよいと言います。
①アイデンティティー MTP(世界に途方もない変化をもたらす目標)は何か
②コミュニティー・ポータルの設計
③コミュニティーづくりのリソース
④コミュニティーづくりの初期段階
⑤コミュニティー・コンテンツの制作
⑥エンゲージメントとエンゲージメント戦略
⑦コミュニティーのマネジメント
⑧成長を促す
⑨収益化

沢渡氏もノウハウ発信することで、ノウハウがどんどん蓄積されると述べています。ノウハウを惜しみなく発信する組織は、ファンを寄せつける力、つまりブランドパワーも高まります。

オープンな社風を作ることで、オープンな人もより集まりやすくなり、組織をより強くできます。情報、ソース、環境。これら3つをオープンにしていくと、やがて私たちのココロがオープンになります。オープンな人が集まることで、職場は明るくなります。よいコラボレーションが生まれ、コラボレーションがイノベーションを生み出します。

企業を成長させるMTPに書かれていた11のルールを沢渡氏はバリューサイクルでわかりやすく表現してくれました。(サリム・イスマイルの記事

企業が成長し、一人ひとりが幸せになるためのメソッドを沢渡氏はオープンにしています。本書を参考にして、まずは半径5メートルの世界を変えることから始めましょう。

ブロガー・ビジネスプロデューサーの徳本昌大の5冊目のiPhoneアプリ習慣術がKindle Unlimitedで読み放題です!ぜひ、ご一読ください。

 

 

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