ディストピア禍の新・幸福論(前野隆司)の書評

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ディストピア禍の新・幸福論
前野隆司
プレジデント社

本書の要約

日常生活のなかで、あるいは日常から一歩踏み出して、他者との新しい出会いを求め、「つながりと感謝」を持つことで、幸福度が高まります。つながりを強化し、利他的に生きる幸福な人が増えれば、他者を許せる社会が実現し、平和な世の中が訪れると著者は指摘します。

なぜ、高齢者の幸福度は高いのか?

あなたのまわりにいる90歳を超えた老人を見てほしい。人にはよるが、たいていは幸せそうで、「明日はもういないかもしれないな」「いつ死んでもいいんだよ」などと冗談をいって笑っているところがある。彼ら彼女らだって死を意識しているには違いないが、若いときほど死を恐れてはいない傾向がある。 これを、「老年的超越」という。(前野隆司)

90歳以上の高齢者は、加齢に伴ってネガティブな状況が増えるにも関わらず、彼らの幸福感が低くないことがわかっています。この老年的超越と呼ばれる現象から、私たちは多くのことを学べます。

スウェーデンの社会学者であるラーシュ・トーンスタムは、90歳から100歳くらいの高齢者は、死の恐怖が減少し、自己中心性が弱まり、自分と世界の境界が曖昧になり、寛容性が高まり、極めて幸福度が高い傾向があることを見つけました。死が近づいた彼らは、人生を達観し、いまを幸せに生きることで幸福度をアップしているのです。

幸福学を研究する著者は、人生が幻想であると考えることで悩みを減らせると指摘します。

過去についての悩みも、未来についての不安もすべて幻想なのだから、いまをいきいきと生きればいいだけなのだ。そう決めて、そう生きるだけなのだ。ほんの束の間の人生である。それを幸せに生きるか、不幸せに生きるか。それはもう、選択の問題なのだ。だったら、幸せに生きたほうが、有り体にいえば「得」ではないか。

死は誰にでも確実に訪れます。死から逃れることはできないのですから、その死から逆算し、自分のマインドセットを変えるのです。「どうせいつか死ぬのだから、幸せに生きても不幸に生きてもたいした違いはない。どちらでもたいした差がないのだったら、幸せを選んだほうがいい」と著者は述べています。

高齢者のようにいまを大切にし、感謝の気持ちを持って、利他的に生きることで、幸せな人生を送れるようになります。

幸福になるための4つの因子

幸せな人には、以下の共通点があります。
・人と自分を比べ過ぎない人は幸せである。
・自分軸を持っている人は幸せである。
・自主的で主体的な人は幸せである。
・自己決定する人は幸せである。
・なにかを成し遂げた人は幸せである。
・なにかを成し遂げるために努力している人は幸せである。
・目的が明確な人は幸せである。
・成長する人は幸せである。
・自己肯定感の高い人は幸せである。
・自己受容できている人は幸せである。
・楽観的な人は幸せである。
・満喫する人は幸せである。
・視野の広い人は幸せである。
・ポジティブな人は幸せである。
・リスクをとってチャレンジする人は幸せである。
・多様なつながりのある人は幸せである。
・強いつながりや弱いつながりのある人は幸せである。
・利他的で親切な人は幸せである。
・他人のために貢献する人は幸せである。
・感謝する人は幸せである。
・幸せな人はレジリエンスが高い。

著者の研究グループは、心の状態に関連する幸せについて因子分析という手法によって、幸せの4つの因子を明らかにします。
①「ありのままに!」因子
自分らしくを意識します。他人と仲良くしながらも、同時に他人と自分を比べないようにします。

②「やってみよう!」因子
自分が心から関心を持てることと、長期的な人生の目標を見据えながら、スモールステップで達成していくことで幸福度がアップします。

③「なんとかなる!」因子
実際に自分に起きた出来事をなるべくポジティブに解釈し、他人との関わりも意識して増やしていけば、最初は無理だと思えることも、継続しているうちに達成できます。

④「ありがとう!」因子
日常生活のなかで、あるいは日常から一歩踏み出して、他者との新しい出会いを求め、「つながりと感謝」を持つことで、幸福度が高まります。

わたしたちが行った研究によると、「親密な他者との社会的なつながりの多様性(多様な人と接すること)と接触頻度が高い人は、主観的幸福が高い傾向がある」ことがわかった。一方、「つながりの数(接する人数)は、つながりの多様性ほどには、主観的幸福にあまり関係しない」という結果が得られた。つまり、同じような友だちがたくさんいる人よりも、人数は少なくても、多様な友だちがいる人のほうが幸せな傾向があるということだ。年齢、性別、国籍、性格など様々な属性・特徴を持つ友だちがいたり、そんな友だちに接する頻度が高かったりする人のほうが幸せなのである。

自分勝手な人は幸福度が低く、利他的な思いを持ち他者と助け合う人のほうが幸せなのです。

これらの4つの幸福な因子を意識しながら行動していけば、幸せになれるのです。利他的に助け合いながら、やりがいやチャレンジ精神や自分らしさを発揮していく社会が幸せな社会なのです。

しかし、現在は世の中が分断化され、専制的な政治を行う勢力が民主主義を破壊しようとしています。一部の超富裕層のみが豊かにり、中流層が消滅するなど資本主義も問題を抱えています。このようなディストピア禍において、つながりや利他の精神を築き、より調和的な世界を目指すためには、まず「他者を想像すること」から始めるべきです。

カオス化する世界のなかで、多様な価値観を持つ人々がつながり合うためには、許し、信じ、対話することからはじめる以外に解決策はない。

幸せの4つの因子を意識し、自分を幸せにすることで、心が成長し、他者に貢献できるようになります。ディストピア禍の中でも、他者を信じ、つながりを強化することで、自分をより幸福にできるのです。

幸福な人が増えれば、他者を許せる社会が実現し、平和な世の中が訪れるという著者の主張に共感を覚えました。理想論かもしれませんが、まずは自分の幸福度を高め、他者への貢献を目指します。


 

 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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