「音大卒」は武器になる
大内孝夫
ヤマハミュージックエンタテイメントホールディングス
本書の要約
音大生はストレスに打ち勝つ能力が高く、舞台慣れしているという強みがあります。フレームワークを身につけ、プレゼン能力を鍛えれば、営業やコンサルとしても能力を発揮できます。練習するのが当たり前の環境で育った音大生は、継続力やあきらめない力が半端ありません。企業は音大生の採用に積極的になるべきです。
音大生の能力とは何か?
音大生は一般大学の学生に比べ格段と勉強し、自分の専攻の能力・技術力を高めようと努力しています。(大内孝夫)
著者は銀行員を退職後、音大の就職課に転職し、音大生のスキルの高さに気づきます。音大生は一般の大学生に比べはるかに一所懸命に学んでいますし、努力を重ねていると言います。
書籍「ピアニストの脳を科学する 超絶技巧のメカニズム」によると小さい頃からピアノを弾いている人の脳は、普通の人よりも活性化されていると科学的に証明されたそうです。同様に、小さい頃からヴァイオリンを弾くことも、脳によい影響があることが明らかになっています。音楽を小さい頃から続けている人は普通の人よりも脳が発達しているのです。
音楽を通じて学ぶこと、音大で身に付くスキルなどは、あらゆる分野に応用できると著者は指摘します。しかし、多くの学生が音楽家になることを望んでいますし、一般企業も音大生の価値を認知していないために、就活時にミスマッチが生じています。
音楽家が身につけている能力には以下のものがあります。
・コミュニケーション能力
・タイムマネジメント
・礼儀、清潔さ
・レジリエンス(教師から叱られてもめげない力)
音大生は就職では不利になると思われがちですが、パーソナルブランディングを行い、自分の強みをPRすることで、一流企業にも就職できるようになります。結果、一般企業も音大生の価値に気づくようになります。
実際、音楽大学を卒業し、実業の世界で成功している人で有名なのは、元ソニー社長の大賀典雄氏です。武蔵野音楽大学の卒業生の中には、ゲーム機・ゲームソフト大手関連企業の社長もいると言います。
企業が音大生を採用すべき理由
私は法学部を卒業しましたが、弁護士になろうとは思いませんでした。司法試験の難しさを知っていましたし、多くの学生がするように就活を行い、一般企業に就職しました。しかし、音大生は音楽家になることを必須だと捉え、一般企業への就職活動に後ろ向きになりがちです。このマインドセットを変えることが、人材不足の解決策になります。
本書は音大生のために就職のノウハウを指南していますが、企業側の視点で読むと音大生を採用する意味に気づけます。著者は音大生だけが身につけている能力があると言います。
一般大学生にはなく、すべての音大生がかなりの高いレベルで身に付けている能力。そんなものはあるわけない、と思うかもしれませんね。しかし、あるのです。私はあえて断言します。 それは、「いくら叱られてもめげない精神力」です。
最近の学生は親や教師から叱られた経験がなく、打たれ弱い面があります。しかし、音大生は子供の頃から激しい練習に耐え抜いています。厳しい指導のもと他の学生との真剣勝負に絶えず晒されてきたのです。
音大生はストレスに打ち勝つ能力も高く、舞台慣れしているという強みがあります。フレームワークを身につけ、プレゼン能力を鍛えれば、営業やコンサルとしても能力を発揮できます。練習するのが当たり前の環境で育った音大生は、継続力やあきらめない力が半端ありません。諦めない力とアイデアの力が掛け合わされることで、新規事業の立ち上げなどでも力を発揮してくれそうです。
音楽家になれない音大生の多くは教師や保育士になっていると言います。一般企業やベンチャーの採用担当は音大生の採用を本気で考えてもよいかもしれません。子供の頃から努力を続けてきた音大生には、さまざまなスキルがあります。音大生との接点がない私たちには、音大生という「宝」を見つけられていないことを本書から学べました。
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