日本国民が貧乏になった理由は財務省にあり??ザイム真理教 (森永卓郎)の書評

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ザイム真理教
森永卓郎
三五館シンシャ

本書の要約

財務省は財政の均衡を至上の目標とし、メディアや専門家を説得して「国債は悪」という世論を作り上げることに成功しています。著者の森永卓郎氏は、この「ザイム真理教」の教えを財務省が堅持し続ける限り、日本経済は衰退を続け、国民生活は一層の貧困化を強いられるでしょうと指摘しています。

財務省の政策が日本人を不幸にする理由

最近、ネットの世界では「ザイム真理教」という言葉が頻繁に使われるようになった。財務省は、宗教を通り越して、カルト教団化している。そして、その教義を守る限り、日本経済は転落を続け、国民生活は貧困化する一方になる。(森永卓郎)

財務省がカルト教団化するという実態を宗教を超えた形で明らかにしようとしているのが、経済評論家の森永卓郎氏です。財務省は財政均衡を錦の御旗にして、メディアや識者を洗脳することに成功し、国債が悪だという世論を形成していったのです。

20年度末において日本政府が抱える国の借金が1661兆円に達することが、財務省が公表したデータによって判明しました。

しかしながら、同時に政府が有する有価証券、土地、建物などの資産が1121兆円分あることも分かっています。このような資産を算入すれば、実際の債務残高は540兆円という数字に収まります。また、通貨発行による利益を考慮すると、債務残高はたったの8兆円に留まります。

政府が何も景気対策を行なわずに、需要不足を放置していると、経済の収縮とともに税収がどんどん落ち込んで、財政はますます悪化してしまう。

現在、岸田政権は財政緊縮政策を推し進めており、21年度からは予算ベースで28兆円もの削減を行う予定とされています。しかし、具体的な数字の公表にはまだ2年程度の時間が必要となります。増税という空気を作ることで、日本経済をだめにしようとしているのが、岸田内閣の実態なのです。

岸田政権の下では、「消費税減税」という最も効率的で公平な経済対策の可能性がなくなりました。これは、財務省の教義では消費税は上げるものであり、下げるものではないとされているからです。

しかし、財務省の影響力が及ぼす問題は、これだけにとどまりません。次に来るであろうのは、増税の波です。財務省は、コロナ対策のための補正予算による費用を増税で補填することを計画している可能性があります。その結果、全ての国民の負担が増加することになります。

新型コロナウイルスの影響後の経済は、少なくとも数年は元の状態に戻らないと予想されています。このような状況下で大幅な増税が行われれば、経済は恐慌状態に陥る可能性が高いです。この問題に対する我々の認識と対策が、今後の経済状況を大きく左右することでしょう。

アベノミクスが失敗した理由とは?

2021年10月に朝日新聞が衆院選を前に行なった世論調査で、「一時的にでも消費税を引き下げるほうがよい」と答えた人は35%にすぎなかった。残りの人は、消費税はそのまま、あるいは増税してもよいと考えている。つまり、単純計算だと、いまやザイム真理教は8000万人以上の信者を獲得していることになる。

著者は消費税を下げることで、日本経済は復活すると述べていますが、多くの国民は財務省からマインドコントロールされているのが現状です。消費税を下げたほうがよい理由をアベノミクスを事例に考えてみたいと思います。

「アベノミクス」は2012年から始まった安倍政権下の大規模な社会実験で、日本経済をデフレーションから脱出させようとする試みでした。三つの戦略的な「矢」—金融緩和、財政出動、成長戦略—を用いて、安倍政権は物価上昇率をマイナスからプラスに押し上げ、労働市場の状況を大幅に改善しました。

しかし、目指した2%の消費者物価上昇率と、物価上昇と賃金上昇の良いサイクルを通じた経済成長、という二つの目標は達成されませんでした。

著者は、日銀の異次元の政策で金融緩和は実現したけれど、財政出動がまったくできなかったと言います。特に2度にわたる消費税率引き上げが、経済の悪循環をもたらしてしまい、景気を冷やすことで、日本経済は浮揚のチャンスを失ったのです。

消費税率が5%に引き上げられるまで、日本の実質賃金は増加傾向にありました。しかし、消費税率が5%に上昇した瞬間、実質賃金の下降が始まり、日本経済はデフレーションへと向かいました。 消費税率が上昇すると、それだけ実質所得が減少します。

その結果、消費が減り、消費関連企業の売上げが減少します。売上げが減少すると、企業はコスト削減を迫られ、リストラや非正社員への置き換えといった形で人件費を削減します。そして、この人件費の削減がさらなる所得の減少を招き、消費の減少という悪循環を引き起こします。

この悪循環は、2014年に消費税率が8%に引き上げられたとき、そして2019年に10%に引き上げられたときにも再現されました。

財政出動は避け、通貨発行益を増やすことに成功した結果、2020年度末の日本の実質的な債務は驚くべきことに8兆円まで減少し、ほぼ無借金状態へと財政が改善されました。これは、財務省の大勝利と言えるでしょう。 完全無借金の先進国はほとんど存在しませんが、日本はこれを達成しているのです。

日本の国債金利が世界で最も低いのも、日本が実質的に無借金であると投資家が理解しているからだと著者は指摘します。しかし、問題点は、財政再建が実質的に完了しているにも関わらず、社会保障のカットと増税が繰り返されていることです。これは、財政状況よりもむしろ、財務省の独自の教義の遂行が優先されている証拠なのです。

財務省は、1990年代以降、一貫して財政緊縮路線を採り続けた。その結果、何が起きたのか。1995年には世界の18%を占めていた日本のGDPが、いまや6%を切る始末だ。先進主要国のなかで最高に近かった日本の賃金は、いまや主要国中最下位になっている。一人当たりGDPでみると、日本はすでに香港よりも2割も低くなっており、韓国にも抜かれた。中長期的には、中国にも抜かれるだろう。

政治家たちが財務省が主張する緊縮財政の真の危険性を理解できていないため、日本は今、困難な状況に直面しています。これにより、日本が世界初の「衰退途上国」へと進んでいる可能性があります。 これは、財務省に影響力を持たれている政治家を選出してきた我々国民の失敗が反映されています。適切な政治家を選出する力が欠如していた我々国民が、今そのつけを払わされているのです。

特に、岸田文雄氏が総理となったことで、財務省主導で政策が決まっています。税金や社会保障料の増加は、GDPの55パーセントを占める個人消費に大きな影響を及ぼし、日本を成長しない国に変え、国民の生活を苦しくしています。

今や日本国の国民負担率は五公五民になっています。これは江戸時代であれば一揆が起こるレベルです。「プライマリーバランス」重視という政策を、今すぐにでも見直すべきだという著者の主張に私も共感を覚えます。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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