「超」創造法  生成AIで知的活動はどう変わる? (野口悠紀雄)の書評

a laptop computer sitting on top of a wooden table

「超」創造法  生成AIで知的活動はどう変わる?
野口悠紀雄
幻冬舎

本書の要約

生成AIの時代には、人間でなければできない仕事の価値が上がります。私たちは、AIやテクノロジーの能力を最大限に活用しつつ、私たちが持つ「人間らしさ」を強化していく姿勢が不可欠です。新しい時代の中で、私たちの価値を再確認し、それを最大限に活かす方向性を模索することが、今後の成功の鍵となるでしょう。

生成AIで生産性を高める方法

生成系AIは自然言語(人間が普段使っている言葉)による問いかけに対して、自然言語での答えを出力しますが、その内容を信用することはできません。(野口悠紀雄)

ChatGPTの登場により、人間の仕事における基本条件が大きく変わりました。以前は、人間は単純な知的作業に多くの時間を費やしていましたが、生成AIであるChatGPTのおかげでその効率が著しく向上しました。これにより、人間はより多くの時間を創造活動に集中することができるようになりました。

ChatGPTは、大量のデータを学習して自然な文章を生成することができるAIモデルです。その応答の自然さや柔軟性には驚かされる人も多いでしょう。しかし、ChatGPTには情報の正確性や信頼性に関する限界が存在します。

創造活動とは、アイディアを見つけ、育てることを指します。ただし、単にアイディアを思いつくだけでは十分ではありません。良いアイディアを生み出すためには、方法論や経験が必要です。

著者の野口悠紀雄氏は半世紀にわたってアイディアを生み出す手法を蓄積してきましたが、その経験値から生成AIの賢い使い方を教えてくれます。

知的作業の中核となる部分以外の周辺作業を効率化するために、生成AIを積極的に活用すべきです。翻訳や文書の要約、文章の校正などはその良い例と言えます。 今日のビジネスの舞台で、知的作業の効率化は急速に重要性を増しています。

その中でも、中心的な部分ではない周辺の作業を効率よく行うために対話型AIを使用することは、非常に価値があります。たとえば、文書の翻訳や要約、文章の校正は、人が行うと多くの時間とエネルギーが必要です。しかし、AIを導入することで、これらの作業を短時間でかつ高い精度で実行できます。

AIの活用は周辺作業だけに限られるわけではありません。むしろ、中心的な知的作業の部分にも導入することで、より深い変革をもたらすことが考えられます。AIを適切かつ緻密に利用することで、ビジネスの核心に大きなインパクトをもたらすことができるでしょう。

特筆すべきは、文章を作成する作業の効率向上です。ビジネスの場では文章を書くことは日常的なもので、多くの時間と労力を要します。AIは、文章の生成においても非常に有効なサポートを提供できます。もちろん、AIには独自の創造力はありませんので、完璧な文章を一から作ることは難しいかもしれません。しかし、人の思考やアイディアを補完し、サポートする役割を果たすことは十分に可能です。

アイディア創出の3つのステップ

人間は、生成系AIを使って周辺作業の効率を上げ、それによって節約できた時間を使って、創造的な仕事に専念すべきです。

確かに、生成系AIには完全な独自の創造力がありませんし、時に誤った情報を提供することも否定できません。しかし、それだけの理由で彼らの能力を見過ごすべきではありません。

実際に、生成AIは、私たちが日常的に行っている知的作業に革命的な変化をもたらしています。例えば、文書の翻訳や要約、文章の生成や校正などの作業を、人間の手によるものとは比較にならない速さで遂行できます。

また、文章の生成や校正においても、生成AIは多くのオプションを提供し、クオリティの高い文章を短時間で作成することができます。 このようなAIの力を適切に利用することで、私たちは更なる業務の効率化と、クリエイティブな仕事に集中できるようになります。

実際、私もこのブログを書く際に、生成AIを使っていますが、生産性が一気に高まりました。アイディア出しや視点の偏り、校正などに活用することで、創造的な仕事により時間を使えるようになりました。特に文章の校正能力は驚異的で、 ChatGPTを活用することで、誤字脱字を減らすだけでなく、言い回しも改善できました。

生成AIがルーティンワークを担当することで、私たちはより多くの時間とエネルギーをクリエイティブな活動に注ぐことができます。新しいアイディアの発想や創造的なプロジェクトに集中することで、より良い成果を生み出すことができるのです。

アイディアは、天才の頭脳から突然、湧き出るわけではありません。いかに独創的なアイディアでも、これまで存在していたアイディアの新たな組み立てや、再構築から誕生します。

アイディアはジェームス・W・ヤングが指摘したように要素と要素の組み合わせです。巨大な経済価値を生み出すためには、必ずしも独創的なアイディアを持つ必要はありません。実際、アップルやグーグルなどの成功しているビジネスも、既存のアイディアを新しい対象に適用することで成果を上げています。(ジェームス・W・ヤングの関連記事

例えば、新しい商品を開発する際には、既存の技術や知識を活用して改良を加えることがあります。これは、新しいアイディアを一から生み出すよりも、既存のアイディアを応用する方が効率的であり、経済的な価値を生み出しやすいからです。

著者は以下の3つのステップでアイディアが創出できるようになると言います。
①まずは、行動を起こし、仕事をスタートします。完璧なテーマや中身がなくとも、仕事を始めることが最初のステップです。そして、アイディアを形にする最も効果的な方法として、音声入力を利用します。脳の中に浮かんだことをすぐに音声で記録し、それをメモとして保存します。

②「超」メモ体系を整備します。思いついたアイディアや新たに得た知識を随時このメモに追記していくことで、一つの大きな知識の集合体を作り上げていきます。

③タスクに没頭し、頭をその仕事で埋め尽くした後、環境を意識的に変えてみましょう。デスクから離れて外へ散歩に行く、新しい場所で作業をするなどの方法があります。この新しい環境で、新たなアイディアや視点が得られる可能性が高まります。また、ブレインストーミングのセッションを行ったり、睡眠前や起床直後のリラックスした状態を利用して、アイディアのインスピレーションを得ることもおすすめです。

生成AI時代に必要な能力とは?

生成AIを用いて作業効率を上げることで、私たちの創造的な時間を確保することができます。新しいアイディアやコンセプトが生まれた場合、その背景には常に人間の独自の考えが存在します。たとえAIが結果を出力するツールとして使われていたとしても、本当の創造の源は、そのAIに指示やプロンプトを与える人間の思考にあります。

これは、真の創造力は人間だけが持っているという意味です。しかし、その創造力を発揮する方法やアプローチが、技術の進化によって変わってきています。近い未来、AIと人間の協働がさらに進化する中で、創造は人間の専売特許、ただし、その発揮の仕方が生成AIで変わるようになります。

プロンプトの能力が結果を左右する時代においては、私たちは問いの力と思考力を磨く必要があります。適切なプロンプトを与えることで、AIの回答の質を向上させることができます。また、AIを使い倒すだけでなく、自身の思考力を活かし、AIの回答を補完することも大切です。AIとの協力関係を築きながら、より高度な問題解決や意思決定を実現しましょう。

AIに仕事を奪われずに、AIと協働するためには、以下のようなスキルや能力が求められます。 
・創造性
AIがデータに基づく予測や解析を行う中、真の創造的思考や新しいアイディアを生む能力は、人間が持つ固有の資産となります。新しいビジネスモデルやアート、デザインなど、人間だけが持つ感受性や経験に基づく発想が求められるでしょう。

・分析能力
たとえAIが大量のデータを分析できるとしても、その結果を人間の文脈で解釈し、意味を持たせる能力は人間独自のものです。具体的な状況や背景に合わせて情報を解釈し、適切な判断を下す能力が不可欠となります。

・統合的推論能力
複数の異なる専門分野の知識を統合し、それをもとに独自の結論や新しいアイディアを導き出す能力。これは、複雑化する問題を解決するためのクロスオーバーな思考が求められる場面で特に重要です。

・コミュニケーション能力
AIとの協働が進む中でも、人間と人間の間の信頼関係を築くためのコミュニケーション能力は不可欠です。感情の理解や共感、聞き手の立場に立ったコミュニケーションが重要となるでしょう。

・柔軟性と適応性
AIやテクノロジーの急速な進化に対応するための柔軟な思考や、新しい環境や技術に迅速に適応する能力も重要です。 これらの能力を育成し、磨くことで、未来の労働市場や社会においても、私たち人間は引き続き価値を提供し続けることができるでしょう。

仕事の内容や形態が変わる中で、人間が担うべき役割も変わってくるのは自然の流れです。テクノロジーの進化は労働市場に変革をもたらすと同時に、新しいスキルや能力を求めています。しかし、この変革は必ずしもテクノロジー関連のスキルだけを指すわけではありません。

例えば、感受性や共感、感情の理解などの「人間らしさ」を活かしたコミュニケーション能力は、AIには模倣することが難しく、人間にしかできない貴重なスキルです。また、文化や社会的背景に基づく判断力、複数の知識を総合しての洞察力も、AIの能力を超えた部分であり続けます。

このように、生成AIの時代には、人間でなければできない仕事の価値が上がります。私たちは、AIやテクノロジーの能力を最大限に活用しつつ、私たちが持つ「人間らしさ」を強化していく姿勢が不可欠です。新しい時代の中で、私たちの価値を再確認し、それを最大限に活かす方向性を模索することが、今後の成功の鍵となるでしょう。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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