AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方 (伊藤穰一)の書評

a man standing in a cave at sunset

AI DRIVEN AIで進化する人類の働き方
伊藤穰一
SBクリエイティブ

本書の要約

生成AIの時代には、個性を発揮することこそが重要となるため、日本社会も変革を迫られることになります。 時代の変化に対応するためには、個人は平均的を抜け出し、思考力を鍛える必要があります。日本社会は、教育制度や就職活動などの面で、個性を発揮できるような環境を整備していく必要があります。

Chat GPTが起こす変化とは?

Chat GPTなどのジェネレーティブAI(人間の出すオーダーに答えて、テキストや画像などの生成物をつくり出すことのできるAI。生成AIとも呼ばれる)によって、僕たちが日常で用いる「言葉」を使って洗練されたAIシステムと「会話」ができるようになったことは、まさに魔法のような出来事でした。(伊藤穰一)

ChatGPTは、従来のSiriやアレクサなどの音声アシスタントよりも遥かに賢く、創造的で、まるで人間のような対話が可能なAIツールです。その特徴的な点は、人間が普段使っている自然言語でAIに命令や質問をすることができることです。

この特性により、使いやすさと普及スピードが大幅に向上しました。例えば、私たちが日常的に使っている言葉や表現でChat GPTに対話を依頼することができるので、より直感的で自然なコミュニケーションが可能です。

この先進のAI技術は、独自の学習アルゴリズムと広範なデータセットを基に訓練されており、その結果として驚くべき能力を持つようになりました。会話の流れを理解し、質問に適切な回答を提供するだけでなく、創造的な文章やアイデアを生成することも得意です。私も文章の校正やリライトなどは、Chat GPTやBardにお願いすることが増えています。

ChatGPTの普及スピードは驚異的です。一般のユーザーにも簡単にアクセスできるようになり、その利用範囲は広がり続けています。執筆、マーケティング、医療、教育、ビジネス、など、さまざまな分野でChat GPTの応用が進んでいます。私たちが普段使っている自然言語でAIとコミュニケーションできることで、より柔軟で効率的な作業が可能になり、生活や仕事の向上に貢献しています。

Chat GPTは「優等生」である一方で、しばしば噓をつきます。Chat GPTは、非常にはっきりとした口調で「答え」をいいます。その中には、正しい情報とエラーが混在しています。 エラーが混在しているにもかかわらず、まるで真実をいっているように感じられることから、テクノロジー業界ではこの現象を「幻覚(hallucination)」と呼びます。また実在しない情報をでっちあげることもあります。

この「幻覚」現象により、ChatGPTの回答が真実であるかのように感じられることがあります。しかし、その中には誤りが含まれている可能性もあるため、注意が必要です。特に情報の正確性が重要な場面では、人間の判断や追加の検証が必要です。 この認識を持った上で、ChatGPTを活用することが重要です。

特に重要な情報や専門的な知識を求める場合には、信頼性の高い情報源や専門家の助言を優先しましょう。また、Chat GPTの回答に疑問が生じた場合には、追加の情報収集や他の情報源の確認を行うことをおすすめします。 技術の進歩により、Chat  GPTのパフォーマンスは向上し続けていますが、完全な正確性を保証することは難しいです。私たちがChat GPTや他のAIツールを使用する際には、その能力と限界を認識し、適切な判断と注意を払うことが重要です。

現在の段階においてChat GPTは、重要な決定を下すための確たる情報提供ツールではなく、専門家の生産性を飛躍的に向上させるためのツールとして運用すべきです。

Chat GPTは、あくまで事実検索エンジンではなく、アイデアを共有するパートナーや、多岐にわたるドキュメント作成の下地作りや、ドキュメントへの提案を支援する副操縦士(copilot)としての利用がより有効だと言います。

Chat GPTをどう使う?

ジェネレーティブAIは、こちらの問いかけに対して「正解の選択肢」を示すのではなく、こちらからの投げかけに従って作業し、「案」を提示する。それを元にこちらが「正解を導いていくためのツール」の一種であるということです。

ジェネレーティブAIは、人間からの指令に従い、膨大な学習済みデータを綿密に参照しながら、返答を提供します。このAIの目的は、「あなたが必要としているのは、このようなイメージですか?」という提案であり、単なる正解の選択肢を示す検索ではありません。

検索技術とは異なり、ジェネレーティブAIの提案はあくまでも柔軟であり、人間がフィードバックを行うことで調整されます。もし提案されたものが望んでいるものと異なる場合、人間は「ちょっと違うな。もっとこんなふうにしてほしい」と伝えることができます。そのフィードバックを元に、ジェネレーティブAIは最初の案を調整して再提案してくれます。

このような連続的なプロセスによって、最終的な成果物を練り上げることができるのです。 ジェネレーティブAIは、まるで別の人間とブレストしながら作業しているかのような感覚を与えてくれます。その柔軟性と連続性が、創造的な活動や意思決定のプロセスにおいて非常に有用です。

経営者としては、ジェネレーティブAIを「正解を導くためのツール」として活用することができるのです。 ジェネレーティブAIの活用は、さまざまな領域で可能です。

たとえば、ブランディングやマーケティングの分野では、新たなアイデアやコンセプトの提案に役立ちます。また、商品開発やデザイン また、商品開発やデザインのプロセスにおいても、ジェネレーティブAIは有用です。例えば、新商品のアイデアやデザインコンセプトを求める際に、ジェネレーティブAIに対して要件や要素を指示することで、多様な提案を受けることができます。

それにより、従来の枠にとらわれない斬新なアイデアが生まれる可能性が高まります。 さらに、マーケットや顧客の嗜好の変化に対応する際にも、ジェネレーティブAIは役立ちます。例えば、商品のパッケージデザインや広告素材の生成において、最新のトレンドや顧客の好みを考慮した提案を得ることができます。結果、マーケットに適したアピール方法や顧客の心を捉えるデザインを生み出すことができます。

さらには、クリエイティブなコンテンツ制作やエンターテイメント業界においても、ジェネレーティブAIは革新的な役割を果たします。映画やゲームの制作においては、特殊効果の生成や背景設定などにジェネレーティブAIが活用され、よりリアリティのある世界を構築することが可能となります。

ジェネレーティブAIが真っ先に役立つ局面は、次の3点です。 ①今まで日常的に感じてきた「面倒なこと」を解消すること②着想の「とっかかり」を得ること③「ブレスト」をして、アイデアを磨き上げること

ジェネレーティブAIは、経営者にとっては創造性やイノベーションの促進に欠かせないツールとなり得ます。人間の創造力とジェネレーティブAIの柔軟性やスピードを組み合わせることで、より効率的で魅力的な成果物を生み出すことができるのです。私は一人壁打ちをする際に、Chat GPTをよく使うようになりました。

人間の役割は「着想すること」や優れた選択肢を生み出すことにフォーカスされ、ジェネレーティブAIは具現化や実作業の一部を担当することになります。

ジェネレーティブAIの進化と普及により、手作業による物事の創造や製作は減少する傾向になるでしょう。代わりに、ジェネレーティブAIを効果的に活用することで、より効率的で優れたアイデアの具現化が可能となります。ジェネレーティブAIは、人間の着想を支援するツールとして活用され、生産的なブレストやアイデアの磨き上げに貢献します。 ジェネレーティブAIを使いこなすことは、難しいことではありません。

むしろ、日常的な面倒なタスクの解消やアイデアの着想のとっかかりを得るために役立ちます。例えば、ルーティンワークや煩雑な手続きをジェネレーティブAIに任せることで、時間と労力を節約することができます。

また、ジェネレーティブAIはブレストの場で重要な役割を果たします。アイデアの共有や議論の際に、ジェネレーティブAIが提案を行い、それを基に参加者が意見を出し合い、アイデアをより洗練させることができます。このようなプロセスにより、創造的なアイデアの出現や問題解決の質が向上します。

生成AI時代に身に着けたいスキルとは?

すでにプロとして質の高い仕事をしてきた人の能力、すでに多くの人に求められる優れたビジネスを展開してきた企業の機能が、ジェネレーティブAIというツールを実装することで、一気に拡張されるということです。

この技術を実装することで、すでにプロとして質の高い仕事をしてきた人の能力や、多くの人に求められる優れたビジネスを展開してきた企業の機能が一気に拡張されるということが言えます。 例えば、ジエネレーティブAIを活用することで、作家やコピーライターなどのクリエイティブな職業の人々は、よりクリエイティブで新しいアプローチを取ることが可能となります。

また、ビジネス分野においては、営業やマーケティングの分野で、既存のデータから予測し得なかった新たなビジネスチャンスを発見することができるようになるでしょう。 しかも、ジエネレーティブAIは、人間のミスを抑えることができるため、精度が高い上に、非常に効率的であり、コスト削減にもつながります。このような効果によって、多くの企業やビジネスの分野で、ジエネレーティブAIが導入されることが期待されています。

ジェネレーティブAIは、経営者やクリエイターにとって非常に有用なツールです。面倒なタスクの自動化やアイデアの具現化を支援し、生産性を向上させることができます。未来において、ジェネレーティブAIの活用はますます重要となるでしょう。経営者としては、その可能性を把握し、戦略的にジェネレーティブAIを活用することが求められます。

ジェネレーティブAIが有能なツールになればなるほど、「人間にしかできないこと」をすることが、人間の仕事になっていきます。では「人間にしかできないこと」とは何かというと、「おもしろいこと」「風変わりなこと」です。 そして合理性という点で優れているAIが浸透すればするほど、人間が「合理的であること」の重要性は、どんどん薄れていくでしょう。

Chat GPTが普及すればするほど、平均点を取ることよりも、尖った個性を発揮することのほうが高く評価されるようになります。 日本社会は、これまでは「まず平均的であること」を重んじ、それぞれの個性の発揮は後回しにされがちでした。

生成AIの時代には、個性を発揮することこそが重要となるため、日本社会も変革を迫られることになります。 時代の変化に対応するためには、個人は平均的を抜け出し、思考力を鍛える必要があります。日本社会は、教育制度や就職活動などの面で、個性を発揮できるような環境を整備していく必要があります。

AI時代の評価では、クリエイティビティと主体性の両方が重要な要素となってきます。クリエイティビティは、新しいアイデアや解決策を生み出し、創造的な業績や成果をもたらします。これに加えて、主体的な思考と行動は、自己の考えや価値観に基づき、主導的な役割を果たす能力を指します。

クリエイティビティと主体性は、AI時代において、従来以上に重要となるでしょう。なぜなら、AIは、従来は人間が担っていた多くの作業を自動化できるため、人間は、AIでは代替できない、クリエイティビティと主体性を発揮することが求められるようになるからです。

クリエイティビティと主体性を身につけるためには、さまざまな経験や知識を積み重ね、自分の考えや価値観を形成することが大切です。また、自分の意見を主張し、周りの人を引っ張っていくことができるように、コミュニケーション能力を高めることも重要です。 AI時代は、クリエイティビティと主体性を発揮できる人材が、より多くの活躍の場を得ることができる時代になるでしょう。


この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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