THINK BIGGER 「最高の発想」を生む方法
シーナ・アイエンガー
ニューズピックス
THINK BIGGER (シーナ・アイエンガー)の要約
イノベーションは要素と要素の組み合わせによっておこなります。その際、自分の専門外の新しい要素の選択とその有用性の評価を行うことが重要になります。成功したイノベーターたちは、解決策のヒントを業界の内部だけでなく外部からも探しました。このアプローチにより、創造的な解決策を導き出すことができるようになります。
イノベーターが行なっていたのは戦略的な模倣
「創造的なアイデアを生み出す天才」と「たゆみない努力」だ。(シーナ・アイエンガー)
シーナ・アイエンガーは、課題解決のプロセスについて、本書で詳細に説明しています。著書はフランスの彫刻家フレデリック・オーギュスト・バルトルディの「自由の女神」のアイデア創出から実現のプロセスによって、「THINK BIGGER 」のストーリーを始めます。
彼女は、斬新なアイデアとは、要素の組み合わせが新しいという考えを明らかにしています。つまり、既存の要素を新しい方法で組み合わせることで、革新的なアイデアが生まれるのです。
バルトルディによって制作された自由の女神も、様々な要素の融合で構成されています。女神の大きさや姿は、エジプトの墓を守る巨大な像にインスピレーションを得ています。その役割としての配置は、スエズ運河の灯台を彷彿とさせるものです。この灯台と同様に、自由の女神も港への道しるべとしての役割を果たしています。
自由の女神のポーズは、「真実」を象徴するものであり、彼女の冠と名前、そして象徴的な意味は、古代ローマの自由の女神リベルタスから取り入れられています。
また、この彫刻の顔は、バルトルディの母親をモデルにしているとされています。 これらの要素が組み合わさることで、自由の女神はただの彫刻以上の意味を持ち、自由、民主主義、希望の象徴として世界中で知られるようになったのです。その存在は、アメリカ合衆国はもちろんのこと、世界中の多くの人々に影響を与え続けています。
ピカソやマティスといって天才も要素と要素を組み合わせること、戦略的に模倣によって、成功を手に入れたのです。
あらゆる成功したイノベーターと同様、彼らがやったのは、ひとことで言えば「戦略的模倣」である。成功事例を学び、そこから有効な部分を抽出し、それらの新しい使い方を模索し、そしてそれらを組み合わせて、新しく役に立つものを生み出したのだ。
イノベーションにおいては、自分の専門以外の新しい要素を選択し、その有用性を見極めることが非常に重要です。成功したイノベーターたちは、解決策を見つけるヒントを業界内外の両方で探しました。つまり、彼らは「箱の中」と「箱の外」という2つの視点からアイデアを探求したのです。この二重のアプローチは、イノベーションを実現するために不可欠です。
イノベーションは決して一直線に進むものではありません。多様な視点からのアイデアやインスピレーションを組み合わせることで、より革新的で実効性のある解決策を生み出すことができるのです。このプロセスは、従来の考え方に囚われず、さまざまな角度からの思考を取り入れることで、新たな価値を生み出すための鍵となります。
創造性に関する研究では、多様な分野で活躍する創造的な人々に共通する特徴として、「好奇心が強いこと」が挙げられています。この好奇心は、意識的に身につけることが可能です。同様に、創造的な活動を成功させるために必要な「粘り強さ」も、意識的な努力で養うことができます。
Think Biggerに取り組む際には、この好奇心と粘り強さが重要な要素となります。 アイデアの質は、組み合わせるピースの質によって左右されます。問題解決に行き詰まることは、しばしば必要なパズルのピースが不足しているためです。脳の中に必要なピースが備わっていなければ、外に出て探索することが肝心です。新しい情報や知識、経験を積極的に収集することで、創造的なアイデアを生み出すための豊かな素材を手に入れることができます。
大きなアイデアを生み出すための6つのステップ
アイデア創出のプロセスは次のような6つのステップで構成されると著者は指摘します。
ステップ1 課題を選ぶあなたの解決したい課題は何か?
まず、課題を正しく選びます。課題を明確にし、その本質を見極めることが重要です。
ステップ2 課題を分解するあなたの課題を構成する「サブ課題」は何か?
課題をサブ課題に分解します。大きな課題を小さな課題に分割することで、解決が容易になります。
ステップ3 望みを比較するおもな意思決定者は何を望んでいるか?
解決策を求める際には、「望み」を比較します。つまり、複数の解決策の中から最も望ましいものを選びます。問題解決の過程において、「解決策を考えるあなた」、「解決策のターゲット(問題が影響を及ぼす対象)」、そして解決策の実現に影響を及ぼす「第三者」の3つの集団を考慮することが重要です。
まず、これら3つの集団それぞれの「望み」をリストアップし、それらを比較対照します。この比較分析を行うことで、様々な視点から解決策を検討することが可能になります。
ステップ4 箱の中と外を探す「別領域」で過去にうまくいった解決策は何か?
こんな風に考えるとわかりやすい。5人がチームとしてブレインストーミングをする場合は、5人の持っている知識しか利用できない。これを「箱の中」の思考と呼ぼう。これに対しThink Biggerは、古今東西の人々の知識を総動員し、他人のアイデアに耳を傾け、心地よい環境から飛び出して、知識を広げていく。これが、「箱の外」の思考だ。ブレインストーミングは狭め、Think Biggerは広げる。
ブレインストーミングはアイデア出しに効果的だと広く考えられていますが、実際にはその効果に疑問を投げかける意見もあります。著者によれば、チームメンバーはブレインストーミング中に、彼らが既に持っている知識や情報に限定されてアイデアを出すため、その範囲が限られてしまうと指摘されています。
つまり、ブレインストーミングによって得られるアイデアは、チームの既存の知識や経験の枠を超えることが難しく、イノベーションを生み出すには不十分なことがあるというわけです。
別の領域でも解を探すことが重要です。他の分野や産業からのアイデアや解決策を取り入れることで、新たな視点や発想が生まれます。
ステップ5 選択マップ戦術の「組み合わせ」を何度も試そう。
異なるアイデアや解決策を組み合わせることにより、より創造的な解決方法を見つけることができる可能性が高まります。この組み合わせプロセスは反復的に行う必要があり、ピースが完璧に合うまで試行錯誤することが重要です。Think Biggerのアプローチでは、このような試行錯誤の過程を重視します。ピースを動かし、ひっくり返している間に、ひらめきが生じ、パズル全体の絵が見えてきます。
ステップ6 第三の眼あなたが見ているものは他人にも見えるだろうか?
この最終ステップでは、あなたがこれまで個人的に取り組んできたアイデアを持ち、外部の人々にそのアイデアを見せて、彼らがどのように捉えるかを探ります。人間は二つの目だけでなく、「第三の目」としての脳の機能を通して物事を認識します。第三の目は、脳内のワーキングメモリに心象が形成される現象を指します。
この段階の目的は、他人からのアイデアの質に関するフィードバックや評価を得ることではありません。むしろ、他人があなたのアイデアをどのように理解するかを知ることで、あなた自身がアイデアについてより深く理解することにあります。他人の視点を通して得た理解を基に、アイデアをさらに発展させ、そのアイデアが真に追求する価値があるものかどうかを見極めるのです。
著者よれば、課題解決は単純な一連の手順ではなく、綿密なプロセスが必要です。課題の選択から解決策の実行まで、様々なステップを踏むことによって、より効果的な解決策を見つけることができるのです。 課題解決力は、現代のビジネスや社会において非常に重要なスキルです。
複雑化する問題や変化する環境に対応するためには、柔軟な思考と創造性が求められます。シーナ・アイエンガーの提案する課題解決のプロセスを学び、日々の業務や生活に活かしていきたいと思います。
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