運を味方にする 「偶然」の科学
バーバラ・ブラッチュリー
東洋経済新報社
運を味方にする 「偶然」の科学(バーバラ・ブラッチュリー)の要約
運は予測不可能なものかもしれませんが、努力や思考を向上させることで改善することは可能です。自分を信じ、柔軟に対応する方法を学ぶことが、運を良くするための鍵です。積極的な行動を通じて、より良い運を手に入れましょう。ポジティブな行動によって適切なタイミングで適切な場所にいられるようになります。
運が良い人は柔軟に対応することができる!
私たちがなにをしたところで、ランダムネスは生じる──私たちの宇宙はカオス理論が支配しているのだから。(バーバラ・ブラッチュリー)
心理学者・神経科学者のバーバラ・ブラッチュリー氏は、私たちの運命や結果は完全にコントロールできないと述べています。この考え方は、私たちにとって重要な教訓を与えてくれます。なにをしたところで、結果が必ずしも予測通りになるわけではないということです。しかし、これは決して諦めることを意味するものではありません。
私たちは、困難や予期しない出来事に直面したときに、柔軟に対処する能力を身につけるべきです。カオス理論が支配する宇宙において、私たちの行動や選択は一つの要素に過ぎません。その他にも、環境や他の人々の行動など、様々な要素が複雑に絡み合って結果が生まれます。
なにをしたところで、ランダムネスは生じます。しかし、私たちはその中で自らの道を切り開き、運に恵まれるために努力し続けることができるのです。
全ての行動や感情、期待や恐怖、そして運の感じ方までもが、私たちの脳の仕組みによって生まれます。良い運を持つ人は、適切なタイミングに適切な場所にいるという特別な能力を発揮します。彼らは行動や選択が運にどう影響するかを理解し、それを利用して運を自ら向上させることができるのです。
運を良くする秘訣は、まず自分の行動や思考に注意を払うことから始まります。自分ができると信じることを積極的に行い、状況に柔軟に適応することで、より良い運を引き寄せることが可能です。 運は予測不可能なものかもしれませんが、努力や思考を向上させることで改善することは可能です。自分を信じ、柔軟に対応する方法を学ぶことが、運を良くするための鍵です。積極的な行動を通じて、より良い運を手に入れましょう。
新たな研究によれば、運を信じる人は運を個人の特徴、つまり個性のひとつと見なしているそうだ。「自分は幸運だ」と思っている人は、予測できない、偶然起こった問題に直面し、その問題を克服しなければならない場合でも「自分は幸運なのだから」と信じることで、希望と自信をもっているらしい。
運が偶然のものであるとしても、「自分は運がいい」と信じる人は、予期せぬ出来事に対しても耐性があり、どのように対応すべきかを見つけ出すのが得意です。この視点からすると、自らを幸運だと思う人は、運が悪いと感じている人に比べて心理的に安定しており、ストレス管理の能力も高いといえます。
多くの人が運を良くしたいと願っていますが、その運を自分でコントロールできると考える人は少ないかもしれません。しかし、科学的な研究により、幸運を引き寄せる共通の原則が明らかになりました。
運が偶然に影響されるとしても、自分が運がいいとポジティブに考えることで、突発的な出来事にも強くなり、解決策を見つけやすくなります。この思考法は、自己を幸運だと認識する人が、運が悪いと思っている人よりも精神的に健康で、ストレスへの対応能力が優れていることを示しています。
運の良い人に見られる共通の法則を取り入れることで、誰もがより幸せを感じることが可能です。これには、ポジティブな思考を持つこと、機会を見逃さない行動をすることなどが含まれます。このように意識的に努力することで、運を自分の味方につけることができるのです。
楽観主義者と悲観主義者は、同じ事象に遭遇しても、それを運と関連づけて説明する方法が異なります。そして、それぞれの脳は情報を処理する際にも異なるアプローチを採用しています。
研究によると、幸運への信念と楽観主義は正の相関関係にあることがわかっています。つまり、幸運を強く信じるほど、人は楽観的になりやすく、希望を持ちやすい傾向があります。
一方で、悲観主義が非常に強い人は、うつ状態に陥りやすいと心理学者リン・エイブラムソンらは指摘しています。うつ病を一連の心の不調として見ると、エイブラムソンによれば、その中の一つが「希望を持てないうつ」であり、このタイプのうつ病では深い悲しみや意欲の低下、社交活動への関心喪失、エネルギーの低下、無感動無関心、活動全般の減少などの症状が見られます。
希望を持てないうつ病を抱える人々は、しばしば深刻な悲観主義者であり、自分に起こる出来事が悪いものだと予想し、その結果、更にネガティブな結果を招くと信じています。
悲観主義者と楽観主義者が、実行注意システムを異なる方法で活用している可能性があります。研究によると、前頭葉の左右(脳の左右半球にそれぞれ位置する前頭葉)は、希望を持てないうつ病に苦しむ人々では非対称な活動を示し、うつ病でない人々ではその活動がより対称的であることが分かっています。
うつ病に関するメカニズムの研究が進められており、ウィスコンシン大学の研究チームが行った調査では、多数の大学生の脳波を分析した結果、悲観的な傾向のある学生ほど、左前頭葉の活動が低下していることが明らかになりました。さらに、左右の前頭葉の活動のバランスを分析することで、3年後にうつ病を発症する可能性が高い学生を予測できることも示されました。
希望を持てないうつ病を抱える人々の前頭葉の非対称な活動が、彼らの悲観的な思考を強化しているのかもしれません。この発見は、前頭葉の活動のバランスが、将来のうつ病のリスクを予測するための重要な指標であることを示唆しています。 また、この研究は注意の重要性を強調しています。
外部の出来事に対する意識から始まる注意は、悲観的な思考を持つ人々にとって、自分の感情や思考に対する意識とバランスを保つ上で不可欠です。幸運感と注意力との関連性に関する言及も、この文脈で重要なポイントとなります。
運が良い人の特徴とは?
私たちの五感は、外界からのエネルギー(光、音、圧力など)に反応し、周囲で何かが起こっていると感知した際、そのエネルギーに関連する情報を脳に送信します。このプロセスの次のステップは、起きている出来事に対して注意を払うことです。現在起こっていることが重要でないと簡単に判断せず、聞こえる音や揺れる葉っぱに、五感をフルに活用して集中します。
そして、過去の経験を参考にしながら、聞こえた音の重要性を評価します。注意を払うためには、確率を考慮に入れたり、他の選択肢を検討したりする必要があります。なにかのリスクの芽を見つけるとその出来事の原因を究明しようとします。 この過程でどれだけ運が良いかは、何が次に起こるのかをどの程度予測できるかによって変わるかもしれません。
例えば、五感が必死に脳へメッセージを送って活動電位を生じさせているにも関わらず、それを無視するとしましょう。その結果、運の悪いことを引き寄せてしまうのです。
このように、私たちの五感は、外界の情報を受け取り、それを脳で処理するための重要な役割を果たしています。私たちが周囲の出来事に対して注意を払い、適切に対応することで、私たちの生活はより豊かで充実したものへと変わります。
私たちはたいてい、つらい体験を通じて、自分の期待について学んでいく。しかし、つらい体験こそが、本当の意味でなにかを学ぶ唯一の方法なのだ。私たちは問題を解決しようとする。そして、その解決策がいい結果をもたらすのか、悪い結果をもたらすのかを確認しようと、成り行きを見守る。その結果が満 足のいくものとなったことがわかるまで、結果の良し悪しはわからない。だからこそ、運に頼ると高くつく。幸運の女神が微笑むのは、たいてい結果がわかったあとだからだ。私たちが一連の行動をとり、その解決策に時間と労力を費やしたあとになって、ようやく幸運の女神の出番となるのだ。
このブログでもお馴染みの運の専門家のリチャード・ワイズマンによると、運を向上させるためには4つの基本原則があります。彼は「自分は成功する」という期待を持つことと、集中力を高めることが運に恵まれる秘訣であると述べています。
ワイズマンが開発した「幸運のワークショップ」プログラムでは、これらの原則を実践させることで、参加者たちに運を鍛えさせています。このプログラムを通じて、運が悪かったいくつかの学生が運勢を好転させ、大きな成功を収めたという報告があります。 ワイズマンによれば、運が良い人の思考には以下の特徴があるとされています。
①運が良い人は、日常生活でチャンスを見つけ出し、それに気づき(注意を払い)、チャンスに基づいて行動します。彼らは運が悪い人よりもチャンスに気づきやすいとされています。
②運が良い人は、直観や本能を信じ、「本能に従って行動する」ことを重視します。彼らは世界に対して直観を働かせるべきだと考え、その直観に注意深く耳を傾けます。
③運が良い人は、「自分は成功するし、目標を達成する」という強い信念を持っています。このような未来に対する期待が、彼らが運に恵まれやすくなる要因となっています。
④運が良い人は、不運な出来事や望まない事態が発生した場合、それから学び、その経験を未来への期待に組み込みます。彼らは次回は同じミスを避けるという期待を持ち、不運を幸運に変えることができます。
ワイズマンが見つけたこれらの原則を理解し、日々の生活に取り入れることで、私たちも運を自らの手で向上させることが可能です。
リチャード・ワイズマンは、運が良い人は直観に注目しており、自分の本能に従うことを恐れないと言います。直観、すなわち「本能的な勘」は、脳内で途切れることなく流れる感覚のパターンを理解しようとする能力であり、私たちは日々の判断をこの直観に頼って行っています。
決断は大きく分けて二つの方法で行われます。一つは、情報を慎重に考慮し、過去の知識に基づいて熟考する「努力を要する」意識的な方法です。もう一つは、瞬時に行われる直観的な方法で、こちらは特に意識を向けることなく、迅速に役立つ決断を下します。 直観は「次に何をすべきか」を判断する際にも重要な役割を果たします。
この「なんとなくわかる」感覚は、曖昧で漠然とした認識から成り立っており、運が良い人はこの種の直観に特に注意を払い、積極的に取り組むか、避けるかの判断に利用しています。神経科学の研究では、直観がどのようにして迅速かつ正確な判断を可能にしているかを示しています。
特に、眼窩前頭皮質は、視覚や聴覚など複数の感覚からの情報を素早く検知し、予測する機能を持つと考えられています。この脳の領域は、情報の基本的な「要点」を捉え、対象物が現実世界で「実在」するかどうかを判断する役割を果たしているようです。
幸運を信じていればいるほど、その人は目標を達成しやすく、困難に直面しても粘り強く頑張る傾向があったのだ。それに「運がいい」と信じている人たちは目標を達成できると強く信じていた。たとえ、そこに到達するには少しばかり運に恵まれる必要があるとしても。
運が良い人は、実行機能の活用法を学習し、目標達成に役立つような行動を取ることで、運に恵まれる傾向があります。運が悪いと感じる人たちと比較すると、運が良い人は外向的で、新しい体験を積極的に追求し、シフティング能力(タスクや思考の切り替え)、抑制力(不要な反応の抑制)、拡散的思考(複数の解決策の探求)において高い能力を示します。
運を良くすることは、楽観的な姿勢や未来に対する希望を持つこと、そして困難に直面しても粘り強く挑戦し続ける意欲と関連があります。運が良いと自認する人は、運を自分でコントロールできるという信念を持ち、これが彼らが目標を達成しやすくなる一因となっています。逆に、運を自分のコントロール外のものと考える人は、目標達成に対する自信が低い傾向があります。
結局のところ、運を信じることは、困難な状況に直面してもモチベーションを高め、パフォーマンスの向上につながり、成功の確率を高めることができます。
ランダムネスを味方につけるために、専門家たちはさまざまな持論を展開してきました。彼らはなぜ私たちが「運がいい」と感じるのか、また与えられた状況で幸運に恵まれる確率を高める方法についても研究しています。
神経学者のジェームズ・オースチンは、4種類の運のタイプを提案しました。まず、純粋に偶然のなせるわざというタイプがあります。これは完全に偶然によって起こる幸運です。次に、行動というタイプがあります。これは自分の行動によって幸運を引き寄せることができるタイプです。
また、準備をすることも運のタイプの一つです。これは運に備えるための準備をすることで、幸運を引き寄せられるようになります。最後に、個性や当人のやる気というタイプがあります。これは個人の性格や意欲によって幸運を引き寄せることができるタイプです。
また、タイプ1の幸運以外は、勤勉勤労とランダムな運の組み合わせで成り立っていると言われています。つまり、ランダムネスに努力、行動、準備が加わることで、その結果は「有益で幸運だった」と解釈される確率が高くなるのです。
つまり、運がいい人とは、偶然の幸運だけでなく、自分の行動や準備によって幸運を引き寄せることができる人のことを指します。彼らはランダムネスを味方につけるために努力し、行動し、準備をすることで、より多くの幸運を引き寄せることができるのです。
逆に、運が悪い人とは、偶然の幸運に頼ることが多く、自分の行動や準備を怠る人のことを指します。彼らはランダムネスを味方にすることができず、幸運に恵まれる確率が低くなってしまいます。
つまり、運がいい人と運が悪い人の違いは、自分の行動や準備によって幸運を引き寄せることができるかどうかにあります。運がいい人は、偶然の幸運だけでなく、自分の努力や行動によっても幸運を引き寄せることができるのです。
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