カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(室橋裕和)の書評

a table topped with bowls of food and a plate of nachos

カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」
室橋裕和
集英社

カレー移民の謎 日本を制覇する「インネパ」(室橋裕和)の要約

インネパ(ネパール人)のカレー店が増殖しています。インネパはネパール人の努力と情熱が詰まった場所であり、彼らの成功の象徴になり、ネパール人を惹きつけています。ネパール人たちが日本での生活を築き、地域社会に貢献する一方で、彼らの背景には多くの挑戦やハードシングスがあることも忘れてはなりません。

なぜ、インネパは増殖するのか?

いまや在日ネパール人の人数は15万633人(2023年6月末時点)となった。10年前の2013年末は3万1537人だから、10年間で5倍に膨れ上がったことになる。もちろん留学生や、IT関連などほかの業種で働くネパール人も含まれてはいるのだが、かなりの部分が「カレー移民」とその家族であると考えられている。日本のどこに行っても見るわけだ。(室橋裕和)

都内、首都圏にはインネパ(インド・ネパール)のカレー店が大変な勢いで増殖しています。前々からこの大量出店が不思議だったのですが、著者の室橋裕和氏がその理由を明らかにしてくれました。

ネパール料理レストランの通称「インネパ」は、インド料理でもなく、ネパール料理でもない独自のメニューを提供しています。バターチキンカレー、ナン、タンドリーチキンといったメニューがコピペのように並ぶのにも意味があります。

ネパール人の成功の秘訣は、成功者の料理を模倣することにあります。彼らは日本市場で成功を収めることに焦点を当てており、「きちんとしたインド料理を出す」や「故郷ネパールの伝統料理を提供したい」といった情熱は二の次なのです。なぜなら、彼らのビジネスモデルはそういったアプローチではないからです。彼らはネパール人に関わらず、日本人に人気にインドのカレーというイメージで勝負しているのです。

ネパール人オーナーたちは、日本でのビジネスを家族を支える手段として捉えています。彼らは「失敗は許されない」という強い危機感を持ち、成功の可能性を高めるために、一般消費者層(ビジネスパーソン・学生)を主な顧客に設定することが、商業的に合理的だと考えています。ビジネスの成功を最優先に考え、料理の独自性よりも、既存の成功モデルを模倣する戦略を選ぶことが多いのです。

しかし、このアプローチにはリスクが伴います。例えば、修行期間を終えた後に、元の店の近くで同様のコンセプトの店を開くことは、市場の飽和を招き、最終的には共倒れにつながるリスクがあります。一般的な日本のビジネス感覚では、競争優位性を築き、独自のマーケティング戦略や出店計画を練ることが重視されますが、ネパール人オーナーたちはしばしば安易な模倣を選択します。

実際に、日本で大きな成功を収めるのは約2割のオーナーに限られ、多くの人々が厳しい生活状況に直面していると著者は指摘しています。

増殖するインネパの現実とは?

日本で広がっていった「インネパ」だが、そこにはもうひとつの要素があるようにも思う。ネパール人の心根、国民性だ。どこか日本人にも似た柔らかさ、和やかさをまとっている人が多い。日本人とうまくつきあっていける人柄なのかな、と感じる(もちろん人によるけれど)。

ネパール人と日本人の相性がよく、自国に産業のないネパール人の一部は日本を目指し、インネパでの修行を始め、やがて独立を果たします。このような現象が起こる背景には、日本人とネパール人の文化や価値観の類似性があると言われています。両国の人々はお互いを尊重し、協力し合う姿勢を持ち、それが良好な関係を築く土台となっています。

また、日本人の舌に合わせて作られたインネパのカレー料理との相性も良いとされています。日本人の舌に合うカレーが多いこと、リーズナブルなプライス、ネパール人の親族ネットワークによる相互扶助、参入障壁の低さなどが、日本中に5000店舗ものインドカレー店が存在する要因となっています。これらの要素が組み合わさり、インドカレー店が日本中に急速に広がり、文化的な交流や経済的な活性化をもたらしていると言えます。

1990年代から、日本のインドカレー業界にネパール人オーナーが顕著に増加しました。この現象の背後には、当時、ネパール人が比較的容易にビザを取得できるようになったことが大きな要因です。行政書士や仲介業者が、ビザ取得や就労、さらには店舗開設のサポートを積極的に提供し始めたことで、ネパールからの移民や留学生は新たな機会を見出しました。

ネパールからの留学生が日本企業に就職することは難しかったため、カレー店の経営に参入していきます。これにより、ネパール人が運営するインドカレー店が日本各地で増え、彼らによる飲食業界への参入が加速しました。このような経緯を経て、ネパール人によるインドカレー店が日本の飲食文化の一翼を担うまでに成長したのです。

しかし、この流れには暗い側面も存在します。不法移民や過酷な労働環境といった問題が浮かび上がっています。それでも、ネパール人たちは自分の夢を追い求めるために、日本でカレー屋を開くことを選択したのです。彼らが日本にやってきてインネパと呼ばれる店を増やしていったのは、その夢を叶えるための一環でした。 

インネパはネパール人の努力と情熱が詰まった場所であり、彼らの成功の象徴になり、ネパール人を惹きつけています。ネパール人たちが日本での生活を築き、地域社会に貢献する一方で、彼らの背景には多くの挑戦やハードシングスがあることも忘れてはなりません。


 

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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