クリティカル思考を身につけるための7つの重要な問い。ダン・ポンテクラフトのOPEN TO THINKの書評

a man holding a yellow marker

OPEN TO THINK~最新研究が証明した 自分の小さな枠から抜け出す思考法
ダン・ポンテクラフト
あさ出版

OPEN TO THINK(ダン・ポンテクラフト)の要約

ダン・ポンテフラクトによれば、クリティカル思考を成功させるためには5つの重要な要素があると言います。情報を読み解く力、他者との効果的な協力、必要な時間の確保、意思決定力、そして柔軟性を意識的に育むことで、クリティカル思考のスキルを向上させることができます。

クリティカル思考を成功させるための5つの重要な要素

クリティカル思考とは、道義的かつタイムリーな意思決定をするために、アイデアや事実を徹底的に分析すること。(ダン・ポンテクラフト)

クリティカル・シンキングの重要性は、教育界やビジネスの現場で日々高まっています。適切な意思決定を行うためには、クリティカル思考が不可欠です。この思考法を身につけることで、無駄な判断を避け、より効果的な決断を下すことができるのです。

クリティカル思考を成功させるには、以下の5つの重要な要素があるとダン・ポンテクラフトは述べています。
・読み解く力
・協力
・時間
・意思決定
・柔軟性

まず、「読み解く力」が挙げられます。これは、情報収集への飽くなき意欲や、データ収集、読書などを通じて培われます。自分の意思決定に対して反駁してみることも大切です。新しい情報や反対意見を探り、追加の検討時間を設けることで、認知バイアスに左右されない判断が可能になります。できる限り証拠を固めることで、より確かな決定を下せるのです。

次に重要なのは「協力」です。フラットな環境で他者と信頼関係を築きながら、協力し合ってクリティカル思考のプロセスを進めることが大切です。これは、現代におけるアゴラとエレンコス(問答法)の実践と言えるでしょう。

アゴラは古代ギリシャにおける公共の広場を指し、市民が集まり討論や意見交換を行う場所でした。この場は自由な議論が行われ、民主主義の基盤となりました。

一方、エレンコスはソクラテスが用いた問答法の一つで、質問を通じて相手の考えを深く探り、矛盾や不一致を明らかにする方法です。これにより、真理を追求し、理解を深めることが目指されました。

他者と協力し合えば、凝り固まった思考の枠が外れ、先入観にとらわれない判断ができるようになる。そして、他者との信頼関係の中で、もらった意見やアイデアを活かし、よりよいものを作っていく。こうした取り組みを積み重ねていけば、まちがいなくオープン思考ができるようになっていくだろう。

現代のビジネスや教育においても、アゴラとエレンコスの精神を取り入れることが重要です。オープンな議論と協力的な環境が、クリティカル思考を促進し、より良い成果を生み出す基盤となるからです。

「時間」も、クリティカル思考において重要な役割を果たします。決断に時間をかけすぎると、無関心思考や優柔不断思考に陥る危険があります。一方で、判断を急ぎすぎると硬直思考に陥ってしまいます。適切な時間管理が、望ましい結果を得る鍵となるのです。

時間を有効活用するためには、いくつかの方策があります。まず、予定表にバッファを設けることが挙げられます。会議時間を短縮し、残りの時間を熟考と行動に充てるなど、工夫次第で貴重な時間を生み出せます。

たとえば、会議を60分間設定する代わりに45分間にして、1つの会議ごとに残りの貴重な15分を、毎回熟考と行動に充てられます。1日の始めと終わりに30分ずつ、熟考と行動のための時間枠を設けておくのも良いでしょう。私は毎朝、やるべきタスクの優先度と重要度を決め、行動のシミュレーションを行っています。

また、状況のレベル分けを行うことで、熟考と行動の適切なバランスを取ることができます。日常生活のささいな用事をアウトソースすることも、より重要な活動に時間を割くための有効な手段です。日常生活の些細な用事をアウトソースすることで、より熟考や行動に費やす時間を確保できるようになります。

例えば、ファイザーでは、社員が利用できる社内プログラム「ファイザーワークス」があります。報告書の作成やパワーポイントの資料作り、統計分析、資料の公開作業など、主要業務でない作業を専門チームに委託することで、本業に専念できるのです。ファイザーによれば、このプログラムにより、1年に数ヶ月分の時間を節約できると言います。社員は些細な業務ではなく、より重要な活動に時間を割くことができます。

「意思決定」においては、完璧を求めすぎないことが大切です。「意思決定」において完璧を求めすぎないことの重要性は強調しすぎることはありません。多くの場合、完璧な決断を追求することで、却って時間を浪費し、機会を逃してしまうことがあります。

そこで、「十分に良い」決定を素早く下す能力が重要になってきます。 特に自分の専門外の領域で決定を下す必要がある場合、「天才集合」の概念を活用することが非常に有効です。天才集合とは、多様な背景や専門知識を持つ個人が集まり、集合知を形成する現象を指します。この手法を用いることで、単独では到達し得ない洞察や解決策を見出すことができます。

最後に、「柔軟性」が挙げられます。環境の変化や予想外の状況に適応する能力は、クリティカル思考を実践する上で欠かせません。過去の判断にしがみつくのではなく、常に改善の余地がないかを見直す姿勢が重要です。 これらの要素を意識しながらクリティカル思考を実践することで、より効果的な意思決定が可能になります。

日々の生活やビジネスの場面で、この思考法を活用することで、より良い結果を導き出すことができるでしょう。クリティカル思考は、単なるスキルではなく、継続的に磨いていくべき思考の姿勢です。常に自己を見つめ直し、他者との協力を通じて、より深い洞察力と判断力を養っていくことが大切です。

クリティカル思考を身につけるための7つの重要な問い

クリティカル思考は、情報を客観的に分析し、合理的な結論を導き出すために不可欠なスキルです。以下の7つの問いを常に念頭に置くことで、より深い洞察と正確な判断を得ることができます。

①この主張は本当だろうか?
アインシュタインは「大切なことは、何も疑問を持たない状態に陥らないこと」という名言を残しています。どんな情報でも、まずは疑ってかかることが大切です。例えば、SNSで広まる健康情報を鵜呑みにせず、その真偽を確認することから始めましょう。

②この点を裏づける情報ソースはほかにもまだあるだろうか?
一つの情報源だけでなく、複数の信頼できる情報源を確認することが重要です。例えば、ある政策の効果について判断する際、政府の発表だけでなく、独立した研究機関のレポートも参照するべきでしょう。

③この情報が真実だと証明する研究や引用文献はどこにあるだろうか?

これほど重要な問題だからこそ、レヴェルの高い証拠を要求すべきなのに、出された証拠は見事なくらい薄っぺらなものしかありません。証拠がこんなに少ししかないのに、どうして信じるという行為にコミットすることができるでしょうか。(カール・セーガン)

カール・セーガンの言葉に従えば、証拠の重要性は非常に大きいです。特に重大な問題に関しては、信頼できる研究や引用文献を参照することが不可欠です。証拠が不十分な場合、その信憑性に疑問を持つのは当然です。科学的な主張では、実証的証拠やその解釈が重要であり、信頼性の高い学術誌に発表されることが求められます。

このような方法で、真実に基づいた情報を得ることができ、信頼できる情報源からの情報収集の重要性が明らかになります。したがって、信頼性の高い情報源から得られた証拠を基に、正確な知識を得て、適切な判断を下すことが重要です。

④確かな意思決定をするためには、ほかにどんなデータやファクトが必要だろうか?
完全な情報を得ることは難しいですが、可能な限り多くの関連データを集めることが大切です。例えば、投資判断をする際には、企業の財務データだけでなく、経営者の信頼性、競合に対する優位性、その会社や業界の重来性や動向や経済指標なども考慮に入れるべきです。

⑤裏づけが簡単すぎるのではないか?何か情報を見落としていないか?
シャーロック・ホームズの「君は見ているが、観察していない」というワトソンへの言葉は、私たちにとっても重要な教訓を与えています。この言葉からは、単に物事を見るだけではなく、それを深く観察して理解することの重要性が伝わってきます。表面的な情報にだまされることなく、真実を見抜くためには努力が必要であり、それは日常生活においても重要なスキルです。

例えば、製品を購入する際には、その製品の宣伝文句だけに惑わされず、ユーザーレビューや専門家の意見も参考にすることが重要です。製品の宣伝文句は、商品を魅力的に見せるために工夫されたものであり、全てが真実とは限りません。店頭での体験やユーザーレビューや店員や専門家のアドバイスには、実際の製品の利点や欠点がより客観的に表現されており、それを参考にすることで自分にとって最適な選択ができるでしょう。

⑥最終決断をするのが早すぎはしなかっただろうか?
ダニエル・カーネマンファスト&スローの概念を軸に、重要な決断をおこないましょう。カーネマンの理論によれば、人間の思考プロセスには、以下の2つの異なるシステムがあります。(ダニエル・カーネマンの関連記事

「システム1」は直感的で素早い判断を行い、「システム2」はより意識的で論理的な思考を担当します。重要な決断においては、システム2を積極的に活用することが望ましいとされています。 この文脈で、「最終決断をするのが早すぎはしなかっただろうか?」という問いかけは非常に重要です。

往々にして人は、即座の判断や感情的な反応に基づいて決定を下してしまいがちです。しかし、特に人生を左右するような重大な決断においては、時間をかけて深く考察することの価値は計り知れません。

住宅などの大きな購買決定や転職の検討は、まさにこの原則が適用される典型的なケースです。これらの決定は、長期的な影響を及ぼす可能性が高いため、慎重に検討する価値があります。「一晩寝て考える」という方法は、初期の感情的反応や衝動を和らげ、より客観的な視点で状況を分析する機会を提供します。

しかし、全ての決定に同じアプローチを適用することは現実的ではありません。日常生活では、迅速な判断が求められる場面も多々あります。重要なのは、決定の重要性と潜在的な影響を認識し、それに応じて適切な思考プロセスを選択することです。

⑦ファクトの裏づけをするのに、誰と協力できそうだろうか?
松下幸之助は「一人の知恵より十人の知恵」という言葉を残していますが、誰の知恵を使うかによって、結果は異なります。例えば、医療に関する判断をする際には、信頼できる医療専門家の意見を求めることが重要です。 これらの問いを常に自分に投げかけることで、より批判的で深い思考が可能になります。

クリティカル・シンキングとは、物事の本質を見極め、適切に判断して、正しい方向へ導くための思考法です。 従来のやり方や固定観念にとらわれず、多角的な視点から物事を捉えることで、より良い解決策を見つけることができます。

現代社会は多様な価値観やニーズで満ちているため、クリティカル・シンキングは非常に重要なスキルとなります。 このスキルを習得すれば、問題を効果的に解決し、より良い結果を生み出すことができます。

クリティカル・シンキングを身につけることはそう簡単ではありませんが、これらの7つの質問を日常的に取り入れ、思考を鍛えることで、自らのスキルを向上させることが期待できます。

最強Appleフレームワーク


この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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