OPEN(オープン):「開く」ことができる人・組織・国家だけが生き残る
ヨハン・ノルベリ
ニューズピックス
本書の要約
人類はホモ・サピエンスの時代から、知識や労働を共有してきました。弱者だった人類は、さまざまな危機を乗り越え、繁栄できるようになったのです。このオープン性が現代世界を創り出し、それを前進させたのです。自分の予想外のところからくるアイデアやイノベーションにオープンであればあるほど、進化が加速します。
オープン性が人類を進化させた?
オープンな制度の下なら人々は、その人格的な傾向などがどうあれ、作り出すより多くの問題を解決し、ちがった性質の人々が出会う可能性を高め、そしてその思想や仕事がお互いを豊かにする可能性も高まるのだ。(ヨハン・ノルベリ)
私たち人類には、「オープン」と「クローズド」という、進化の過程で生まれた「2つの矛盾する本能」が備わっています。私たちは見知らぬ他人やアイデアに積極的に心を開く本能を持ち、これが交易と文明を駆動してきました。その一方、家族や身内を守るために、世界を「敵と味方」に分け、「敵」を徹底的に攻撃する本能もあります。今回のコロナ禍の中で私たちは閉じた世界を求め、国境は閉じられ、経済が停滞しました。
しかし、ウイルスの影響が軽微になり始めると再び、人はオープンな本能のもと、行動を再開しています。オープン性がなければ、成長は止まることを過去の歴史が教えてくれているのですから、コロナ後の今こそ私たちはよりオープンに外の世界と交流すべきなのです。
人は生まれながらの交易者だ。たえず他人とノウハウや頼みごとや財を交換し、自分一人の才能や経験に限定された場合よりずっと多くのことを実現できる。そしてそのために大した努力もいらない。人はたえず機会を探していて、まったくの他人とすら、新しい提携や協力関係を開始するのは実に簡単だ。
人類はホモ・サピエンスの時代から、知識や労働を共有してきました。弱者だった人類は、さまざまな危機を乗り越え、繁栄できるようになったのです。
このオープン性が現代世界を創り出し、それを前進させたのです。自分の予想外のところからくるアイデアやイノベーションにオープンであればあるほど、進化が加速します。人類史上最大の発明は「交易」で、これが21世紀にいたるまで、私たちにすさまじい進歩をもたらしたのです。
人類がオープン性を維持すべき理由
人間は交易者である一方で、部族人でもある。協力はするが、それは他人を倒すためだ。どちらの属性も人間性の本質的な一部だが、反対方向にヒトを向かわせようとする。片方は、新しい機会や新しい人間関係、相互に利益のある新しい取引を行うための、プラスサムのゲームを見つけさせてくれる。もう片方は、人々にゼロサムゲームに用心しろと伝える。ゼロサムゲームでは、他人が得をするのはこちらが犠牲になる場合だけだからだ。
人類は「オープンとクローズド」の戦いを繰り返してきました。人はおびやかされると、部族の安全性へと逃れたくなり、がっちりと守りを固めたくなるという特性があります。結果、人類は従属的になって強い指導者を求めるようになります。白人労働者が弱者になることで、彼らはトランプという強い指導者を求めましたし、ソ連の崩壊で大国の座を奪われたロシア国民はプーチンを支持したのです。
自分の文化、生き様や社会全体が、疫病や移民、経済危機、外国勢力などにおびやかされると国家は強いリーダーを求め、仮想敵を探し始めます。
あなたや私を協力的な交易者に変えた進化は、同時に私たちを地位を求める部族主義者にしてしまい、他のみんなの進歩を不安に思うようにさせている。だからこそ歴史上の様々なオープン社会は、いきなり、ときには何の兆候もなしに、集団抗争やナショナリズムと保護主義に後退してしまうのだ。戦争になることさえある。 歴史が繰り返すことはない。だが、人間の本性は繰り返されるのだ。
ロシアがウクライナを攻めるのもロシアを部族主義者に変えたプーチンの力があったのです。プーチンはメディアや他の西欧諸国の過激な勢力をコントロールすることで、独裁者としての地位を強化したのです。
逆にオープンを支持する勢力が口を閉ざすことで、閉じた世界の人々が乱暴を働きます。今回戦争が始まることで、世界は大きな影響を受け、本来使えるはずのアイデア、創造性、労働が制限されてしまったのです。
過去の歴史を見るとオープン性の終焉が、世界を悪化させました。今回の戦争をすぐに終わらせることは難しいかもしれませんが、私たちはオープン性の火を消してはいけません。独裁者を支持するのをやめ、民主主義を守り、今こそ閉じた世界の暴走を止めなければならないのです。オープンであることが人類の成功の鍵であると信じ、現在起こっている悲劇を止めるべきです。
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