ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密(土屋哲雄)の書評

man standing on top of mountain beside cairn stones

ワークマン式「しない経営」――4000億円の空白市場を切り拓いた秘密
土屋哲雄
ダイヤモンド社

ワークマン式「しない経営」(土屋哲雄)の要約

ワークマンは「しない経営」を採用し、従来のビジネスモデルに囚われずに新たな市場を開拓することで著しい成長を遂げました。彼らはしないことによって得られる価値を重視し、強みに特化したことで、新たなアウトドア市場を創出します。結果、多様な顧客層からの支持を受け、売上を伸ばしていったのです。

5フォース分析でワークマンの強みを明らかにする!

ワークマンは「しない会社」だ。(土屋哲雄)

多くの成功している企業の社長たちは、成長の秘訣として「何をしないか」を決めることの重要性を強調しています。彼らによると、不必要な活動や効果の低い業務を避けることで、社員がより生産的で価値の高い仕事に集中できるようになります。

この戦略を顕著に体現しているのが、ワークマンです。ワークマンはもともと作業着の製造からスタートしましたが、現在では4000億円規模の市場においてリーダーの地位を確立しています。この驚くべき成長は、効率化や積極的な市場戦略に加え、「しない経営」の哲学が大きく寄与しています。

ワークマンでは、無駄を徹底的に排除し、シンプルで効率的な経営を徹底することにより、迅速な成長を遂げることができました。このアプローチにより、企業は重要な資源を最も効果的な用途に集中させることが可能となります。

土屋氏は、マイケル・ポーターの「戦略とは捨てること」を実践します。ポーターの5フォース分析で当時のワークマンを客観視します。

ワークマンの市場における強みを分析しました。その結果、次の5つの主要な点が明らかになったのです。
・新規参入の脅威
作業服市場への新規参入者はほとんどおらず、ワークマンが競争に有利です。

・買い手の交渉力
作業服を購入するのは主に個人であり、法人顧客に比べて交渉力は低めです。

・代替品の脅威
作業服の適切な代替品が少ないため、この点での脅威はほとんどありません。

・供給者の交渉力

作業服の供給者はワークマンに対してそれほど強い交渉力を持っていないため、ワークマンはより良い条件で取引が可能です。

・業界内競争
作業服市場における個人向け製品の競争は限られており、ワークマンにとって有利な状況が続いています。

この分析から、ワークマンがファイブフォースを全て満たす稀な存在であったことがわかります。作業服市場で強固な地位を築いていることが明らかになったのです。

「製品が優れていればお客様は自然と来る」という考え方のもと、ワークマンは法人向けという大きな市場を敢えて捨てて、小さな市場で高いシェアを狙う戦略を取りました。マーケットの6割を占める法人の作業服市場を放棄し、個人向けの店舗販売に特化することで、競争を避けると同時に、確実に勝てるポジションを確立したのです。

この戦略により、ワークマンは早くから個人向け作業服のリーダーとしての地位を築き、お客様に「作業服といえばワークマン」と認識されるようになりました。 その結果、後から同じ市場に参入しようとする企業は、ワークマンが築いた強固なブランドポジションを獲得するためには、莫大な投資が必要となります。

これが新規参入が非常に難しい理由です。ワークマンは、顧客が求める品質と利便性を重視し、確実なニッチ市場でのリードを保ち続けています。この戦略は、企業が持続可能な成長を遂げるための重要な教訓を提供しています。

しない経営で成長するワークマンの強みはブルーオーシャン戦略にあり!

作業服はお客様がいったんある製品を選ぶとリピート率が高い。そのため毎年一定量の売上を見込みやすい。型紙も製造工程も、基本的には10年は継続するため、生産面で無駄が少なく、大量ロットでつくれる。 調達先は毎年入札だが、結果として国内供給先は40年間ほとんど変わっていない。調達先を変えないことでスイッチングコストが削減できる。

作業服は一度選んだ製品に顧客が満足すると、リピート購入率が高くなるため、年間を通して安定した売上を見込みやすい業界です。製品の型紙や製造工程も基本的に10年間は継続使用されるため、生産面での無駄が少なく、大量ロットでの生産が可能になります。

また、調達先に関しては、毎年入札を行っているものの、結果的には国内の供給先が40年間ほとんど変わっておらず、スイッチングコストの削減に成功しています。この長期にわたるサプライチェーンとの信頼関係(善意型サプライチェーン)がコスト削減に寄与しています。

自社での製造においても、同じ製品を繰り返し生産することで、生産コストは時間とともに低下し、特に生産工程の歩留まりが重要な場合にはこの効果が顕著です。これにより、競合他社と比べてコスト競争力に優位を保つことができ、競争優位が維持されます。 個人向け作業服市場では新規参入者が少なく、仮に新規参入があったとしても、巨大な資本を持たない限り、ワークマンと同等の品質、価格、供給保証を提供することは困難です。

たとえ新規参入者がワークマン並みの品質と価格を実現したとしても、ワークマンは引き続き製品の機能向上とコスト削減に努めており、常に業界の先端を走り続けるための取り組みを行っています。

値引しなくても売れる製品をつくることが基本だ。値引は手間がかかり、一部の顧客だけが得をして不公平だ。

ワークマンでは値引き販売もお客様への裏切り行為として捉え、しない戦略をとっています。海外進出も競争優位の観点で、あえてしないことで、その労力を強みに磨きをかけることに費やしています。

ワークマンの土屋氏は、従来の企業管理手法とは一線を画し、社員にノルマを課すことなく自発的な努力を促す組織作りに力を注いでいます。社員に対して強制的な努力を求めるのではなく、自ら進んで業務に取り組む動機を提供するシステムを構築しているのです。

さらに、経営者自身も思いつきでの指示を控え、無駄な新規事業や会議を行わないことを徹底しています。また、現場の作業に影響を与えないように、経営者は会社に足を運ばないスタンスをとっています。

ブルーオーシャン戦略は、競争が少ない新しい市場を創出し、消費者に高付加価値を低コストで提供することによって、利益の最大化を目指す戦略です。この戦略では、まだ手つかずで無限の可能性を秘めた市場を「ブルーオーシャン市場」と呼び、競争が激しい市場を「レッドオーシャン市場」と対比しています。

例えば、ワークマンは比較的小規模ながらも競争が少ないブルーオーシャン市場で効率的に事業を展開し、安定した成長を遂げています。このような市場での成功は、ワークマンにとって最適な戦略と言えるでしょう。

ワークマンはこのアプローチにより、持続可能なビジネスモデルを築き、業界内で独自の地位を確立しています。競争が激しい市場でなく、競合が少ない未開拓市場を見つけ、新しい価値を生み出すことで、企業は成長と利益の最大化を実現できるのです。

このような「しない経営」により、社員のモチベーションが自然と高まり、それが直接的に業績向上につながっています。土屋氏のアプローチは、余計な介入を避けることで、社員一人ひとりが自己の責任と創造性を発揮できる環境を提供しており、これがワークマンの持続的な成長と業界内での確固たる地位を築く基盤となっています。

この経営手法は多くの経営者やビジネスパーソンにとって、新たなビジネスモデルの可能性を示唆するものであり、注目されています。

ワークマンプラスの成功は、「6+1」の戦略的アプローチと緻密な市場分析をベースに構築されています。このプロセスは、以下の具体的なステップで実行されました。

①自社の強みの特定
まずは、自社が持つユニークな強みを理解し明確にします。

②強みの育成
既存の強みが十分でない場合、それを発展させます。

③市場の選定
ターゲットとなる市場を慎重に選択します。

④市場の細分化
市場をさらに分析し、大手が見落としている低価格帯の「隠れた市場」を特定しました。

⑤社員のモチベーション向上
社員がプロジェクトに積極的に関与し、その成功にコミットするよう動機づけます。

⑥小規模テスト
市場に投入する前に小規模で概念をテストし、効果を検証します。

+1本格展開
テスト結果が成功を示した場合、市場に本格的に参入します。

加えて、ワークマンプラスでは「しない経営」の原則に基づいて無駄を省くことで、効率的な事業運営を実現しています。具体的には、「目標は少なく、人をかけず、お金をかけず、期限を設けない」という指針で事業を進めることで、必要最小限のリソースで最大の成果を目指しています。

この革新的なアプローチにより、ワークマンプラスはショッピングセンターへの出店や、顧客をブランドアンバサダーとして活用するなど、新たな顧客層を引き寄せ、女性客を含む幅広い層への拡大を実現しました。SNSやメディアを活用した拡散戦略も、ブランド認知の向上と市場拡大に寄与しています。

この事例は、市場の隙間を見つけ、既存のビジネスモデルにとらわれない新しい戦略を打ち出す重要性を示しており、中小企業にも応用可能な成功のモデルを提供しています。

従来のビジネスモデルに捉われず、革新的なアイデアを積極的に取り入れることで新たな市場を開拓しました。彼の経営哲学は、放棄することで得られる価値を認識し、それを実践することの大切さを教えています。

ワークマンの成功物語は、合理性と柔軟性を基軸とし、常に挑戦する姿勢を持つことの重要性を示しています。この結果、ワークマンは幅広い層からの支持を獲得し、注目の成長企業としてその地位を確立しています。

土屋氏の「しない経営」は、新しいビジネスモデルの追求だけでなく、経営全般における重要な示唆を与え、ビジネスパーソンや経営者にとって、これからの企業運営のヒントを提供しています。

 

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