最近のウェブ、広告で読みにくくないですか? (鈴木聖也)の書評

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最近のウェブ、広告で読みにくくないですか?
鈴木聖也
星海社

最近のウェブ、広告で読みにくくないですか? (鈴木聖也)の要約

現代のウェブメディアにおいて、広告が原因で読者は多くの不満を感じています。メディアは、単なる情報の提供だけでなく、新しい価値を創造することで、読者との良好な関係を築けるようになります。今後は、読者のニーズをしっかりと捉え、真に有益な情報を提供し続けることが、持続可能なメディア運営の鍵となるはずです。

ウェブメディアが持続的成長のために必要なこと

読みやすさを二の次にして広告を入れまくり、少しでも利益を増やそうとするウェブメディアも後を絶たない。「広告動画を見ないと記事が読めない」という作りの記事にストレスを覚える方も少なくないはずだ。(鈴木聖也)

ウェブサイトや広告による読みづらさは、現代のインターネット利用者が日々直面している課題となっています。記事本文を読もうとクリックしても、まず広告の壁が立ちはだかり、それを閉じてようやく目的の内容にたどり着けるという体験は、多くの人にとって身近なものとなっています。 このような状況に警鐘を鳴らすのが、ウェブメディア「MINKABU」編集長の鈴木聖也氏です。

鈴木氏は、本書でウェブメディアの現状と課題を詳細に分析しています。共同通信の記者としての経験を持つ鈴木氏は、ジャーナリズムとビジネスの両面から、日本のメディア業界が抱える構造的な問題に切り込んでいます。

近年、ウェブメディアは広告収入への依存度を高めています。これは一見、合理的な選択のように思えます。インターネット上で無料のコンテンツを提供し、その代わりに広告収入を得るというモデルは、情報が瞬時に拡散するウェブの特性と相性が良いためです。

しかし、この戦略には深刻な副作用があります。広告を優先するあまり、本来の目的であるコンテンツの価値が損なわれていると言うのです。

記事を読み進めるたびに次々と表示される広告、動画広告の視聴を強制される仕様、そして時には不適切な内容の広告を見せられるなど広告でのペインを読者は抱えています。こうした要素が、読者の集中力を削ぎ、情報収集の効率を著しく低下させています。

しかし、新しい潮流も生まれています。有料サブスクリプションモデルの台頭です。かつて「無料の情報源」として認識されていたウェブメディアですが、質の高いコンテンツに対価を支払う文化が徐々に根付きつつあります。これは、動画配信サービスの普及と類似した現象といえます。

問題なのはお金になるか、ならないか、である。利益を出し続けられるということは、すなわちメディアの持続可能性を高め、良質な言論空間を作ることである。メディアはPVやUUに囚われているあまり、一番大切な「お金になるかどうか」に直結していない場合が見られる。

有料化の道を選んだ一部のウェブメディアには、大きな可能性が開けています。広告収入に依存せずにコンテンツの質を追求できる環境は、ジャーナリズムの本質に立ち返る機会を提供しています。しかし同時に、重い責任も伴います。読者が継続的に支払いを続けたいと思える価値を提供し続けなければならないのです。

そのためには、記者や編集者の専門性向上、独自の視点による深い取材、データジャーナリズムの活用、そして読者のニーズを的確に捉えた企画力が不可欠となります。

さらに、テクノロジーの進化は新たな可能性も生み出しています。AIを活用した記事推薦システムの導入や、読者の興味関心に基づいたパーソナライズされたコンテンツ提供など、デジタルならではの付加価値を創出する試みも進んでいます。

現代のメディア環境において、単一の解決策を見出すことは困難です。読者の情報消費習慣は多様化しており、短時間で要点を把握したい層から、深い分析や考察を求める層まで、様々なニーズが存在しています。この状況に対応するためには、広告モデルと有料モデルを柔軟に組み合わせ、それぞれの読者層に適した形で情報を提供していく戦略が求められます。

読者との信頼が重要な理由

ウェブメディアの未来は、読者との信頼関係をいかに構築できるかにかかっています。広告を適切にコントロールしながら読みやすさを確保する工夫、有料コンテンツならではの価値提供、そして何より、読者の時間と注目に対する深い敬意。これらのバランスを保ちながら、新しい形の情報提供の在り方を模索していく必要があります。

テクノロジーが進化し、情報消費のスタイルが変化を続ける中で、メディアと読者の関係性も進化していかなければなりません。それは単なる情報の送り手と受け手という一方向の関係ではなく、両者が望ましい形でコンテンツを共有し、その価値を認め合える関係への発展を意味しています。そして、このような関係性を築くことこそが、これからのウェブメディアに求められる本質的な課題なのです。

そして、この課題の解決に向けた取り組みは、まさに始まったばかりです。広告と有料化のバランス、テクノロジーの活用、そして何より読者との信頼関係の構築。これらの要素を適切に組み合わせながら、持続可能な形でクオリティの高い情報を提供し続けることができるメディアこそが、デジタル時代における真の価値を創造していくことができるでしょう。

お金を払ってでも解決したい悩み、お金儲けのヒントや答えがありそうな記事に読者は課金しやすいのかもしれない、と考えられるのだ。

近年のデジタルコンテンツ市場において、読者の課金行動に興味深い傾向が見られています。特に、個人の切実な悩みの解決や収益向上に関連する情報への支払い意欲が高まっているのです。 この現象の背景には、情報の価値に対する読者の意識変化があります。

無料で得られる表層的な情報があふれる中、本当に必要な解決策や実践的なアドバイスには、適切な対価を支払う意識が育ってきています。 例えば、健康や美容に関する悩み解決のための記事、投資やビジネスのノウハウを提供するコンテンツには、比較的高額な課金でも受け入れられる傾向にあります。

専門家による深い知見や、実践者の経験に基づいた具体的なアドバイスは、読者にとって貴重な投資対象となっているのです。 特にビジネス関連のコンテンツでは、成功事例の詳細な分析や、実践的なテクニックの解説に高い需要があります。わずかな課金で得られる情報が、将来的な収益増加につながる可能性があるのであれば、それは十分な投資価値があると判断されています。

このような傾向は、メディア運営者に重要な示唆を与えています。ただし、安易な収益化を目指すべきではありません。読者の期待に応える質の高い情報提供があってこそ、継続的な課金を期待することができます。専門性の高い執筆陣の確保や、徹底した取材に基づく信頼性の高い情報発信が、有料コンテンツとしての価値を支える基盤となるでしょう。

メディアの持続的な発展には、社会的使命と経済的基盤の確立が欠かせません。読者に対して単に情報を届けるだけでなく、その先にある問題解決への道筋を示すことで、真の価値を生み出すことができます。このように実践的な価値を提供することが、読者からの支持と収益確保につながります。

特に現代のメディアに求められているのは、報道の自由と独立性を守りながら、組織としての経営健全性を実現することです。編集部門の独立性と事業としての継続性—この二つの要素の最適なバランスを見出すことが、今日のジャーナリズムが直面する本質的な経営課題といえるでしょう。

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この記事を書いた人
徳本

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数
iU 情報経営イノベーション専門職大学 特任教授 

■著書
「最強Appleフレームワーク」(時事通信)
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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