1分間メンタリング 進化を引き起こす6つの鍵 (ケン・ブランチャード, クレア・ディアス=オーティス)の書評

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1分間メンタリング 進化を引き起こす6つの鍵
ケン・ブランチャード, クレア・ディアス=オーティス
ハーパーコリンズ・ジャパン

1分間メンタリング(ケン・ブランチャード)の要約

多くの著名な経営者は、メンターとの出会いによって大きな成長を遂げています。ケン・ブランチャードの『1分間メンタリング』は、メンタリングの本質を「ミッション」「絆」「人脈」「信頼」「チャンス」「振り返り」の6つの鍵で解き明かし、仕事だけでなく人生そのものにも役立つ知恵が詰まった一冊です。

メンタリングとコーチングの違い

誰かの心に灯火を灯せば、自分自身の足元も照らされる。(ケン・ブランチャード, クレア・ディアス=オーティス)

著名な経営者の多くは、適切なメンターとの出会いを通じて飛躍的な成長を遂げています。 その成功の背景には、メンターの存在が大きな役割を果たしていることに気づかされます。さらに、自らがメンターとなることで、より偉大なリーダーへと成長した人も少なくありません。 このように、メンターの存在はキャリア形成において極めて重要な要素であると言えます。

ケン・ブランチャードの『1分間シリーズ』は、毎回示唆に富んでおり、今回の1分間メンタリングも例外ではありません。非常に学びの多い内容であり、繰り返し読む価値のある一冊です。 ケン・ブランチャードは、リーダーシップとマネジメントの分野で世界的に著名な経営コンサルタント・作家であり、『1分間マネジャー』をはじめとするベストセラーシリーズで知られています。(ケン・ブランチャードの関連記事

彼の著作は、シンプルで実践的なアプローチに定評があり、多くのビジネスパーソンやリーダーたちに影響を与えてきました。

人生には、たったひと言が進むべき道を変えるような瞬間があります。本書は、そうした「心に火を灯す」言葉が詰まった一冊です。私自身、この本を読み終えた直後に、ある人物の顔が浮かびました。──エグゼクティブ・コーチとして有名な新堀進さんです。 新堀さんは、私が断酒に苦しんでいた時期に、コーチ・メンターとして支えてくださいました。私が著者となり、現在社外取締役としても活動できているのは、まさに新堀さんのアドバイスとサポートのおかげです。

ケン・ブランチャードは、本書の中でこう述べています。「メンタリングとコーチングは異なる。コーチングは短期的でタスクごとの課題を扱う。一方で、メンタリングはより大局的で、長期的な目標を扱う」。この言葉を借りるなら、私は新堀さんから、まさに“メンタリング”を受けていたのだと実感しています。

本書は、仕事に行き詰まりを感じている若手営業マン・ジョシュと、かつての情熱を失いかけていたベテラン営業部長・ダイアンの出会いから始まります。年齢も立場も異なる2人が関わり合うことで、互いに気づきを得ていく姿が描かれており、読み進めるうちに、まるで自分自身の物語のように感じられる読者も少なくないでしょう。

なお、メンターは必ずしも自分が目指す分野の専門家である必要はないと著者らは述べています。むしろ、異なる視点を持つ人のほうが、より深い学びをもたらしてくれる場合もあります。

メンターを探す際は、かつての上司、大学の同窓生、恩師、教授、隣人、友人、家族、会社の制度、さらには業界団体、ボランティア団体、オンラインのメンターマッチングサービスなど、あらゆる可能性に目を向けてみましょう。

メンター/メンティー候補との初回ミーティングでは、方法論や形式にとらわれるよりも、人間的な相性を大切にすることが重要です。

ふたりの価値観が一致しているか、性格的にしっくりくるか、会話が自然に続くかといった感覚が、判断の鍵となります。 また、直感も大切にしましょう。少しでも違和感を覚えるのであれば、その関係は最適とは言えないかもしれません。

メンタリングの6つの鍵

ミッションとは、私たちメンターとメンティーの目的を指し示すもの。ミッション・ステートメントは複雑でなくてもいいけれど、丁寧につくるべきね。ふたりのあいだで一致させておかなければいけない、最も大切なものだから。

ダイアンがジョシュに伝えるメンタリングの「6つの鍵」。このフレームは、メンタリングだけでなく、人生そのものにも大きな影響を与えるものです。

第1の鍵 ミッション・ステートメントを作成する
目的のない関係には、深まりが生まれません。だからこそ、メンターとメンティーが「なぜ出会ったのか」「どのような変化を望んでいるのか」を明確にし、言語化することが重要です。 これこそが、ミッション・ステートメントの作成です。難しく考える必要はありませんが、お互いの認識を一致させるためにも、丁寧に向き合ってつくるべきものです。 

ジョシュは、自分のミッション・ステートメントを 「一生の仕事を明確にし、情熱を取り戻す手助けをしてもらうこと」 と定めます。 また、ダイアンはこうも伝えます。 「メンタリングは、与える側にも恩恵があるの」 この言葉には、メンタリングが単なる“教える・教わる”関係ではなく、互いに学び合い、成長し合う関係であるという深い意味が込められています。

第2の鍵 絆を深める
内省の時間を確保することは、メンティーにとってもメンターにとっても非常に重要です。日々の生活から少し距離を置いて、人生の全体像を振り返ったことはあるでしょうか? 定期的に時間を取り、自分の現在地を見つめ直し、これからの方向性を考えることが求められます。内省の中で浮かんできた気づきは、書き留めることで一層明確になります。

形式よりも本質が大切です。お互いの過去や悩みを率直に共有し、人としての信頼を築いていく。そのプロセスのなかで、自らの弱さをさらけ出すことが、かえって絆を強くするのです。

第3の鍵 人脈を広げる
メンターがメンティーに与える最大の贈り物――それは「人脈」です。 メンティーにとってプラスになる人物がいないかを考え、積極的に橋渡しをしましょう。 人とのつながりは、視野を広げ、成長を加速させてくれます。メンターが大切にしている人を紹介し、その紹介を受けた側も誠実に応える。人脈は、信頼を軸に築かれていく“ご縁”なのです。

私自身、新堀さんから多くの素晴らしい方々をご紹介いただきました。そのおかげで、私の人生はより豊かなものになっています。

第4の鍵 信頼を築く
信頼とは、「真実を語り、約束を守る」ことの積み重ねです。関係が揺らいだときこそ、率直に語り合うことで、より深い絆が育まれます。 また、互いの人脈の中から特に大切にしたい関係を選び取り、育て、深めていくことも大切です。

メンタリングは、新たな視点やアイデアとの出会いの場でもあります。メンターもメンティーも、常にアンテナを張り巡らせ、そこに生まれるチャンスを逃さないようにしましょう。

第5の鍵 チャンスを分かち合う
与えることで、与えられる。これはメンタリングの本質でもあります。 メンターがメンティーに機会を与えるだけでなく、メンティーもまた、メンターに新たな視点や若いエネルギーをもたらすことができます。 「灯火をともせば、自分の足元も照らされる」 この言葉こそが、本書の核心を表していると言えるでしょう。

第6の鍵 振り返り、新たにする
成長にはリズムが必要です。定期的に振り返り、関係性や目標を見直すことで、メンタリングは形骸化せず、常に「今」の意味を持ち続ける関係となります。 この本が教えてくれたこと 私が特に心を動かされたのは、メンタリングが一方通行ではなく、相互交流だという点でした。

メンティーは学びを得て、やがては誰かのメンターになる。そして、ダイアンとジョシュの関係のように、そのバトンは自然と受け継がれていくのです。

最強Appleフレームワーク


 

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