ファンを集められる会社だけが知っている 「ブランド人格」 (鬼木美和)の書評

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ファンを集められる会社だけが知っている 「ブランド人格」
鬼木美和
時事通信出版局

ファンを集められる会社だけが知っている 「ブランド人格」の要約

「ブランド人格」の構築により、企業や個人は独自の価値観や特徴を強調し、競合との差別化ができるようになります。これは共感を得やすくし、理解されやすい関係性を築き、長期的な信頼と協力を生み出します。また、これにより新しい提案やアイデアが受け入れられやすくなります。

ブランド人格が企業にとって重要な理由

企業は単に経済価値を生み出す装置ではないということです。 どの企業も、経済価値を生むと同時に、それを社会にとっての価値に繋ぎ、 さらには関わる人の成長にも役立とうと願っています。 理念の中には、必ずその想いが、独自の言葉で語られていました。 その志や歩みは、まさに人の生き様に似ています。(鬼木美和)

鬼木美和氏は、広告会社大広の取締役で、ブランディングのスペシャリストとして活躍しています。彼女は、企業が持つべき「ブランド人格」という考え方を私たちに明確に提示しています。企業が一人の”人格”を持った人のように振る舞うことで、ファンを引き寄せ、支持を得ることができると説いています。

今回、大広の戦略アドバイザーとして、私も微力ながら本書のお手伝いをさせていただきましたが、著者や時事通信出版局の編集担当の坂本建一郎氏、天野里美氏、大広の増田浩一氏のおかげで素晴らしい一冊に仕上がりました。

近年、企業経営とブランディングにおいて「パーパス(企業の存在意義)」への注目が高まっています。この動向は、企業が提供する製品やサービスを超えた深い価値の探求を意味します。企業のパーパスに重点を置く戦略は、単なるビジネスの活動以上のものを目指し、企業の核となる価値観や使命を明確化します。

このアプローチにより、企業は唯一無二な「ブランド人格」を築き上げ、社会から継続的に期待される存在に生まれ変われます。企業がその存在理由や深い価値を明確にすることで、顧客や従業員からの共感と支持を集められるようになるのです。

その結果、企業は消費者や社会全体とより深いレベルで関わり合い、信頼されるブランドイメージを築くことができます。これにより、長期的な成功と持続可能な成長を目指す経営戦略となります。

企業は、人間のように個性やらしさを持つ存在であり、その個性やらしさによって顧客や社会との関係性が形成されていきます。この企業が持つ個性やらしさは、その組織の文化や理念、価値観などが反映されたものです。これらが顧客や社会に対してどのような印象を与えるかは重要な要素となります。

顧客は企業の個性に共感し、信頼できると感じることで、その企業との関係性を築いていくことを忘れないようにすべきです。逆に、企業の個性やらしさに共感できない場合、顧客はその企業との関係性を持つことは難しくなるはずです。

鬼木氏は企業がただ単に商品やサービスを提供するだけではなく、その背後にある人間性や価値観を明確に表現することが重要であると述べています。また、企業が自らのブランドに対して誠実であることが、ファンを集め、忠誠心を育むための重要なポイントであるとも指摘しています。

成長や変革を続ける企業には、固有の「ブランド人格」がある。

魅力的な「ブランド人格」は、企業に参加する全てのひとびと(社員も、取引先も)の意識を単なる「帰属」から、「参画」へと変化させ、充足感をもたらします。社員であれば、自分の会社の「ブランド人格」に共感し、賛同できれば、受け身ではなく、誇りをもって能動的に行動してくれます。

もちろん、今いる社員だけではなく、就活生も含めた未来の社員の意識にも影響します。企業を「ブランド人格」として明示して、それを理解し、共感して入社いただければその絆は強固なものになります。取引先や顧客においても、然りです。何をやるか?という事業内容だけでなく、何のために?という企業の志や価値観から語ることで、深く理解され、信頼し合える価値共創の仲間を得られます。

ブランド人格を築くことは、企業にとって長期的な競争力を構築する重要な戦略です。企業が持つ価値観やパーパスを明確にし、それを顧客に伝えることで、共通の理解と信頼が生まれるのです。このようなブランド人格を持つ企業は、市場での差別化が図れるだけでなく、優秀な人材やパートナーを引き寄せることができるでしょう。したがって、企業はブランド人格の構築に積極的に取り組むことが重要です。

「ブランド人格」は、個人や企業が持つ独自の価値観や特徴を示すことで、競合他社と区別されやすく、共感を得やすくなります。これにより、関係性を築く際にも理解されやすく、より深い結びつきが生まれるのです。

また、このような信頼と期待に基づく関係は、一過性ではなく、長期的なものとなり、持続的な協力や支援が可能となります。 さらに、「ブランド人格」を通じて構築された顧客や従業員との関係は、次の提案やアイデアが受け入れられやすくなる効果もあります。

信頼と共感を持つ関係性があるため、新たな提案や変革に対しても積極的な姿勢で受け入れられ、経済活動の好循環を生み出すことができるのです。

ブランディングの目的は、企業の成長を支えるために、顧客の期待を形作ることです。ただ期待を抱かせるだけでなく、その期待に見合った価値を提供することが求められます。これは、人間関係で信頼を築くのと似ていて、期待に応えないと失望されてしまうためです。

期待を裏切ることは、築き上げた関係を無駄にするだけでなく、事態を悪化させる恐れもあります。そのため、ブランディングだけに留まらず、マーケティングやプロモーションといった活動との連携が重要です。これにより、顧客の期待に応えることができ、長期的な信頼関係を築くことが可能になります。

企業がブランディングから得られるチャンスとは?

「ブランド」とは、ひと言で言えば「期待値」。

「ブランド」とは、ひと言で言うなら企業の意思に対する期待の質と量=「期待値」です。そして、期待の質と量の大きさが「ブランド力」ということになります。「ブランディング」とは、企業活動をスムーズに行うための期待値づくりです。ブランディングの重要性は、顧客や社会との関係構築において大きな影響を与えます。

例えば、ある企業が一貫した価値観やイメージを持ち、それを顧客に明確に伝えることで信頼を築くことができます。逆に、ブランド力が弱い企業は、競争力が低下し、市場で目立たなくなる可能性があります。 さらに、ブランディングにおいては、自社の顧客や市場のニーズを把握し、その期待に応える戦略が欠かせません。

ブランディングの過程で、企業は顧客や社会からの期待に応えることに焦点を当てることを意識すべきです。企業が持続的な成長を遂げるためには、常に顧客とのコミュニケーションを大切にし、フィードバックを受け入れる姿勢が求められます。顧客の声に耳を傾け、コミュニケーションを行い、共感してもらうことで、ブランド価値を高めることができます。

鬼木氏はブランドに関するワードをわかりやすく整理しています。
・「ブランド」=お客さまやステークホルダー、社会からの期待値
・「ブランド力」=その期待値の質と量
・「ブランディング」=期待値づくりの活動

また、ブランディングには3つの原則があると言います。
原則①「企業の価値」は、「社会にとっての価値」に変換されてはじめて、その意味を持ちます。
原則②「社会にとっての価値」は、「社会からの期待値」として位置づいた時、より一層その意味が増幅されます。 
原則③ 企業は築いた「期待値」と等量の、社会に対する提案権を持つことができるのです。

顧客の期待に応えるために蓄積された信頼があれば、その信頼を元に新しい商品やサービスを市場に提供することができます。つまり、顧客の期待に応えるだけの提案ができるということです。現在の企業活動が顧客から支持されていれば、その事業を継続し、未来も確実に成長できるのです。共感されるブランド資産を持つことで、企業の成長は加速します。

また、企業はブランディングによって、以下のチャンスを得られます。
・経営力の強化
社会資本の獲得、優秀な人材の確保、強固な財務体質の構築、社員の参画意欲の喚起。

・BtoB取引の維持・拡大
取引先との関係を維持・拡大し、全く新しい取引を生み出す機会。

・事業課題の解決
異なる業界への転進や事業分野の新規拡大などの機会。

・マーケティング課題
新商品やサービスの提案、既存商品の長期的成功、価格決定の主導権の獲得、新しい販売方法やプロモーションの開発、ディマーケティング(現在の商品の撤退と新商品への切り替え)の機会。

・社会課題
地域社会との支援関係の構築や、社会的ルール作りへの参画の機会。

ブランディングは広告やマーケターだけの仕事ではありません。企業、ビジネス、または製品の全ての活動、を通じて築かれます。そのため、全ての従業員がブランド作りに関与していることを経営者は忘れないようにすべきです。

実際にブランド人格をつくるために、以下のフレームワークを活用すると良いでしょう。
▪️ミッション
・私は誰なのか 〈ブランド規定〉
・どのような心で  〈性格・価値観〉

▪️コアバリュー 
・誰のために 〈理想の顧客〉 
・どのように 役立つのか 〈提供価値〉
・特徴・特技は何か〈能力・エッセンス〉

▪️ビジョン
・今どこにいて これから何を 目指しているか 〈変革課題・ビジョン〉

私がアドバイザーや社外取締役をしているベンチャーでもこのフレームワークで、ブランド人格論をつくることで
ブランドを明確に定義できるようになりました。ブランドが人格を持つことで、共感が生まれてきます。

本書は企業が持つべき「ブランド人格」を理解し、実践するための手法や考え方を提供しています。企業が成功するためには、単なる商品やサービスの提供に留まらず、自らの人格やブランドを明確に打ち出し、ファンを集めることが不可欠であることを改めて認識できました。

鬼木氏の実体験と洞察に基づいた本書は、企業経営者やマーケティング担当者だけでなく、ブランディングに興味を持つすべての方に価値ある一冊であると言えるでしょう。

この記事を書いた人
徳本昌大

■複数の広告会社で、コミュニケーションデザインに従事後、企業支援のコンサルタントとして独立。
特にベンチャーのマーケティング戦略に強みがあり、多くの実績を残している。現在、IPO支援やM&Aのアドバイザー、ベンチャー企業の取締役や顧問として活動中。

■多様な講師をゲストに迎えるサードプレイス・ラボのアドバイザーとして、勉強会を実施。ビジネス書籍の書評をブログにて毎日更新。

■マイナビニュース、マックファンでベンチャー・スタートアップの記事を連載。

■インバウンド、海外進出のEwilジャパン取締役COO
IoT、システム開発のビズライトテクノロジー 取締役
みらいチャレンジ ファウンダー
他ベンチャー・スタートアップの顧問先多数 

■著書
「ソーシャルおじさんのiPhoneアプリ習慣術」(ラトルズ)
「図解 ソーシャルメディア早わかり」(中経出版)
「ソーシャルメディアを使っていきなり成功した人の4つの習慣」(扶桑社)
「ソーシャルメディアを武器にするための10ヵ条」(マイナビ)
など多数。
 
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