「友人を大切に」と言われれば、古臭い道徳訓のように響くかもしれません。しかし、ここ数年のデータは、いずれも良好な人間関係がもたらすメリットをはっきりと示しています。(鈴木祐)
孤独は1日15本のタバコより有害?
鈴木祐氏の最高の体調 ~進化医学のアプローチで、過去最高のコンディションを実現する方法~ の書評を続けます。 最近の研究で、孤独が寿命に影響することが明らかになっています。イギリスでは孤独担当大臣のポストが新設され、孤独で困っている人のための対応をスタートしています。イギリスの孤独による損失は年間4.9兆円と推計されるなど、イギリス社会では孤独を社会的な問題と捉えているのです。
孤独を議論する「ジョー・コックス委員会」の調査結果によっると、孤独は肥満や一日に15本のタバコを喫煙するよりも有害であることがわかっています。イギリスでは孤独は心の問題だけでなく、医療、経済に大きく影響する課題だと考え、政策が練られているのです。日本もイギリスと同じように高齢者が増加し、孤独が社会的な問題になっています。このイギリスの取り組みをヒントにし、日本も孤独への対策を考えたほうがよさそうです。その理由をいくつかの調査から明らかにしていきます。
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友人との時間を大切にしよう!
ハーバード大学が行った1939年からスタートした「成人発達研究」の結果を知れば、孤独を避けたくなるはずです。これは約80年間にわたって724人の人生を記録し、彼らの人生を追跡したものです。全員が10代の学生だったころから調査を始め、定期的に体調や幸福度を尋ねるのはもちろん、かかりつけの医者からカルテを手に入れたり、家族との会話をビデオで収めたりと、膨大な労力が注ぎ込まれました。彼らの人生は多岐にわたり、そこから孤独の危険性が見えてきました。弁護士、医者、サラリーマンや工場労働者、ホームレスになった人たちの多様な人生をすべてパッケージ化したうえで、「人間の幸福にとって最も大事なものとは?」の答えを数字で明らかにしました。
彼らの人生から得られた、何万ページにもなる情報から明らかになった事は何でしょう?それは富でも名声でもがむしやらに働く事でもありません。私たちの体を健康にし、心を幸福にしてくれるのは『良い人間関係』です。これが結論です(ロバート・ウィルディンガー)
研究のリーダーであるロバート・ウィルディンガー教授は、良い人間関係が幸せに影響していると指摘します。身近な人たちとの関係が悪ければ「満足」の機能は活性化されず、富や名誉などを得ても幸せにはなれません。
「成人発達研究」のデータでは、人間関係が悪い人にくらべて、良い友人が多い人は3倍も仕事で成功しやすく、年収も高い傾向が見られました。ウィルディンガー教授はこうも言います。
良い人間関係は私たちの脳も守ってくれます。周囲との良い関係を80代までキープできた人や、何か困ったときに助けを求められる相手がいる人は、はっきりした記憶を長く持ち続けられます。しかし、困ったときに頼る相手がいないと、早い段階で記憶力が低下し始めるのです。
孤独から来る炎症で体調が崩れ、さらには脳の機能まで衰えてしまうことがわかっています。脳と体の健康を維持したければ、良い人間関係を築くべきなのです。
幸福、富、名声、健康は、すべて人間関係の土台があって、はじめて意味をなします。年をとった時に孤独にならないように、地域のコミュニティに参加したり、勉強会に出席することに時間を費やしましょう。幸せな老後を送るためには、友人への投資を怠らないことが重要なのです。
まとめ
最近の研究結果によると、孤独がリスクであることが明らかになりました。孤独は体の炎症を引き起こし、肥満や病気の原因になっているのです。孤独を放っておくと脳にも悪影響を及ぼします。人生を豊かにしたければ、お金や名誉を追い求めるだけでなく、良好な人間関係を維持すべきです。友達の時間を増やすことで、私たちは病気を防げるだけでなく、幸せも手に入れられるのです。
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